みんなのひろば

こどもの健康コラム


子ども・若者に
増えている「斜視」

三原 美晴 先生富山大学附属病院アイセンター(眼科)・小児眼科
診療准教授

 最近、子どもや若者に後天性(生まれつきではない)の内斜視(目が内側に寄るタイプの斜視)が増えています。スマホの普及率が上がり始めた時期と、内斜視が増え始めた時期が一致しています。そのため、このふたつは関連があると考えられ、現在、日本弱視斜視学会で多施設共同研究が行われています。

 スマホなどのデジタル端末は近い距離にある小さな画面を両目で見続けるため、どうしても両目を内側に強く寄せた状態になります。この状態を長い時間続けていると、遠くを見るときに両目の視線を平行に戻せなくなってしまうことがあるのです。

【斜視がない場合】両目の視線が同じ方向を向いているので、左右それぞれの目で見たものが脳でひとつの像にまとめられます。ひとつにまとまることで、見ているものとの正確な距離感や、ものの立体感が生まれます。

【斜視がある場合】両目の視線が違う方向を向いていると、脳は両目の像をうまくひとつにまとめられません。すると、ものがずれたままふたつに見えてしまう「複視」という症状があらわれます。

斜視を防ぐポイント

  1. 距離をとる
    スマホ・タブレット …30cm以上
    パソコン …50cm以上
    テレビ …画面の高さの1.5倍以上
    ◎照明や窓からの光が映りこまないように、画面の角度を調整することも大切です!
  2. 時間を区切る
    30分~1時間ごとに5~10分の休憩をとる
    ◎部屋を出て歩くのもオススメ!画面に集中していた視線を、いろんな方向に動かし、いろんな距離にピントを合わせることができます。
  3. 見る画面を大きいものに変える
    ◎テレビに接続して大きな画面で見られるようにすると、画面からの距離をとれるほか、視線の集中を防ぐことができますよ!


 ものがふたつにずれて見える複視ですが、子ども自身が異常だと感じていないこともあるため、

  • お子さんの目の位置に異常がないか、折に触れて観察する
  • ものがふたつにずれて見えてないか、お子さんに聞いてみる

 など、働きかけてあげることも大切です。
 少しでも気になる症状があったら、早めに眼科を受診してくださいね!

 この内容は、エコチルとやま新聞vol26(2022年9月発行)の特集「こどもの目は大丈夫?」を再構成したものです。


ほめ上手の3つのコツ

黒田 昌美エコチル調査富山ユニットセンター
公認心理師・臨床心理士

 ほめることは、とても大事です。
 もちろん保護者の皆さんは日頃から意識されていると思いますが、より効果的にほめるコツを3つお伝えします。

  1. 「25%ルール」
    「25%ルール」というのは、すべて終わってから初めてほめるのではなく、しようとし始めた時、している最中、し終わった時など、こまめにほめることです。
    宿題や翌日の準備など「まだ25%くらいしかできていない」と思っても、「筆箱を鞄から取り出したね」「1ページかけたね」などと声を掛けます。
  2. 具体的な行動をほめる
    例えば、
    • 靴を揃えて脱いだお子さんに 「えらいね」 → 「靴を揃えて脱いだね」
    • ごはんを完食したお子さんに 「すごいね」 → 「ごはんを全部食べたね」

    何をほめられたのかが、お子さんにはっきり伝わります。また、言葉で行動を伝え返すことで、お子さんの言葉が豊かになる面もあります。

  3. 否定語を使わずに、肯定語を使って伝える
    例えば、
    • 「お店の中で走らない」 → 「歩いてお買い物をしようね」
    • 「部屋を散らかさない」 → 「使ったものを、元の場所に戻してね」

    肯定語の方が、取るべき行動がお子さんに伝わりやすく、お互いにより前向きな気持ちで過ごせるのではないでしょうか。
    また、困った行動をしているときに否定的な注目(叱る、注意する、説教するなど)をすると、「困った行動をすれば注目してもらえる」と間違った学習をしてしまうことがあります。良い行動をした時こそ、肯定的な注目(ほめる、認める、笑顔を返すなど)をするようにしましょう。

 この内容は、エコチルとやま新聞vol23(2021年3月発行)の特集「スクールカウンセラーってどんな人?」の一部を加筆・再構成したものです。

手洗いと手指消毒

吉井 美穂 先生富山大学医学部看護科基礎看護学講座 准教授

手洗いしっかりポイント

  1. しっかり濡らそう
    • 石けんの泡立ちがよくなります。
    • 水となじみやすい汚れなら、この段階で落とせます。
  2. しっかり泡立てよう
    • 泡が多いほど、すみずみまで洗えます。
    • 肌への刺激が和らぎます。
    • 洗い流しやすくなり、時間が短く済み肌荒れも防げます。
  3. すすいだら、しっかり拭き取ろう
    • 乾かすことで、手荒れを防ぎます。
      手が荒れると、痛くて洗うのがおっくうになったり、傷口から菌が入りやすくなってしまいます。
    • 水分が残っていると、細菌やウイルスが繁殖しがちです。

消毒しっかりポイント

  1. 2~3ml、しっかり手に取ろう
    • 15秒くらいすり込んだら乾く量が目安です。
    • 容器によって1プッシュあたりの量が違うので、普段から15秒で乾く量を自分の手のひらで把握しておくと便利です。
  2. 15秒以上、しっかりすり込もう
    • 正しい量を十分すり込んで乾かすことで、消毒効果を発揮!
    • 乾く途中の「水分が蒸発する段階」で、消毒の効果がぐっと高まります。

洗った後も気をつけて!
ザンネン手洗い

  1. 水道の蛇口やレバーを触って、水を止めてしまう
    • その蛇口やレバー、洗う前の汚れた手で触ってますよ!
    • 水を止める時は、ペーパータオルや自分のひじを使いましょう。
  2. 顔や髪を触ってしまう
    • 顔や髪は外気にさらされているので、雑菌や飛沫がついています。
    • うっかり触ってしまったら、もう一度洗うか、消毒しましょう。
  3. 着ている服や不衛生なタオルで手を拭いてしまう
    • 服は体温で温まっているので、雑菌がいっぱい!お尻の部分には、座った椅子の汚れもあるかも…。
    • タオルやハンカチは何枚か持ち歩くか、表と裏を使い分けましょう。

 このコーナーは、吉井先生が講演された「富山大学特別公開オンラインセミナー 手洗いのすゝめ〜正しい手洗い出来ていますか?〜」(7月11日開催)を基に構成しています。

新型コロナウイルス感染症
Q&A

田中 朋美 先生エコチル調査富山ユニットセンター特命講師
富山大学附属病院小児科医師

 わが子が新型コロナウイルスに感染したらどうしよう…みなさん毎日不安の中で生活されていることと思います。
 症状・受診のポイントを小児科田中先生にうかがいました!

ここがポイント!

  • 日頃から家族全員の体調を確認しておく。
  • 発熱や咳などの症状があれば、いつからどのような症状がみられていたか、メモをとっておく。
  • 行動歴が分かるように、メモをとっておく。
  • 周辺地域・県内の流行状況をチェックする。
  • 流行期に体調不良でかかりつけ医を受診する場合は、先に電話連絡を。

  • 子どもは大人に比べると発症しても症状は軽く、死亡例もほとんどありません。

    家族内感染がほとんどで、無症状のお子さんが多いといわれています。
    症状があるとしても、発熱(約半数が37.5度以下の微熱程度)、乾いた咳が特徴で、鼻水や鼻づまりなどは比較的少ないとされています。

  • 新型コロナウイルス感染症を心配して、あわてて医療機関を受診することはお勧めしません。軽症であれば、経過観察や対症療法で十分であるとされています。

    ※小児であっても、濃厚接触者や健康観察対象者である場合は、まず地域の帰国者・接触者センターにご相談ください。

  • ほとんどの場合は軽症で、医学的には入院する必要はありません。

    ※入院の適応については、県内の感染流行状況や医療機関体制、家庭状況等によって変わる場合があります。

軽症の目安

  • 本人に活気がある、水分等がとれている、呼吸が苦しくないこと等。
    ただし、医療者の判断が必要。

軽症の場合の対応

  • 自宅あるいは宿泊施設等での療養になる可能性が高い。
    ただし、保健所との相談が必要であり、また自宅療養後の電話等による健康状態の確認が必要となる。

入院が考えられる場合

  • 呼吸数が多い、肩で息をする、呼吸が苦しい、唇や顔の色が悪いなど、肺炎を疑う症状がある場合。
    その他、元気がない、水分がしっかりとれない場合など。

 新型コロナウイルスを心配するあまり、感染予防のため過度な行動制限で我慢の日々が続くと、子どもたちが心身のバランスを崩してしまう危険性があります。不安だからという理由で、余計な我慢を子どもたちにさせ続けないよう、社会全体として柔軟な対応を考えていくべきだと思われます。まずは、私たち大人が気持ちに余裕を持つことも大事ですね。
 日本小児科学会のホームページにも詳しく紹介されていますので、ご覧ください。

風しんと妊婦さんへの影響

田中 朋美 先生エコチル調査富山ユニットセンター特命講師
富山大学附属病院小児科医師

風しんって、どんな病気?

  • 「風しんウイルス」による急性の発しん性感染症の一つ。
  • 飛沫感染により人から人へ感染。感染すると2~3週間後に、発熱・発しん・リンパ節の腫れなどの症状が出現。発しんの出る前後約1週間は、人に感染させる可能性がある。
  • 子どもがかかると比較的症状は軽く(まれに脳炎、紫斑病などの合併症がみられる)、大人がかかると発熱や発しんの期間が子どもに比べて長く、関節痛がひどいことが多い。

 国立感染症研究所ホームページ

防ごう! 妊婦さんの風しん感染

 ここでみなさんにお伝えしておきたいことは、「妊娠中の風しん感染」についてです。妊婦さんが風しんにかかると、赤ちゃんにその影響がみられる場合があります。「先天性風しん症候群」といわれ、おおよそ妊娠20週頃までに女性が風しんウイルスに感染した場合、生まれた赤ちゃんに難聴や白内障、心臓の病気がみられることがあります。妊娠中に風しん感染した全ての赤ちゃんに影響が出るのではなく、感染症状があった妊婦さんの3分の1で母子感染があり、その中の3分の1の赤ちゃんに何らかの症状がみられたという報告があります。なお、エコチル調査の参加者さんでは、妊娠中に風しんにかかった方が1%程度みられました。これは、決して少ない数字ではありません。

風しんの抗体があるか
検査しよう!

 妊娠中に風しんにかからなければ良いとなれば、「妊娠したらワクチンを打ったらいい」とお思いになる方もいるかもしれませんね。しかし、風しんワクチンは、生きた弱毒風しんウイルスを接種することで感染して免疫をつける「生ワクチン」といわれるものです。そのため、妊娠の可能性がある場合には、ワクチン接種を行うことはできません。自分が風しんにかかったことがあるか分からない、抗体を持っているかどうか分からない場合、特に妊娠を希望される女性は、妊娠する前に血液検査で風しんの抗体価を測定して、抗体価が低ければワクチン接種を行うのが望ましいでしょう。

感染防止には周囲の理解と
協力が必要です

 そして、これは決して女性だけの問題ではありません。妊娠を希望する女性のご家族はもちろん、地域や職場などの周囲の人々の理解や協力が不可欠です。周囲の人も、風しんにかからないためにワクチン接種を行いましょう。特に、風しんウイルスに対する免疫力が低いといわれている成人男性(20~50代)は、積極的にワクチン接種を行ってほしいものです。なお、大人の風しん抗体検査は、富山県では無料(条件あり)で受けられます。大人の風しんワクチン接種の費用は基本的に自己負担です。ちなみに、お子さんに関しては、「麻しん風しん(MR)ワクチン」は定期接種となっています。定められた期間に接種すれば自己負担はありません。第1期は1歳になったらすぐに、第2期は5歳以上7歳未満(小学校入学前の1年間)です。こちらも忘れずに接種しておきましょう。お母さんのためにも、そして赤ちゃんのためにも、「風しんの流行」は社会全体で取り組んでいくべき課題です。風しんワクチンで未来の赤ちゃんを守りましょう!

風しんの予防対策の徹底に
ご協力をお願いします
富山県ホームページ

  • 風しん抗体検査
    富山県では無料(条件あり)で行っています。
  • 大人の風しん予防接種(有料)
    富山県内の一部自治体では公費助成(条件あり)を受けられます。

妊娠中・授乳中の
コーヒーについて

伊藤 実香 先生富山大学附属病院産科婦人科 助教

妊娠中・授乳中に
コーヒーを飲んではダメですか?

 妊娠中から授乳期にかけて、1日2杯以下であれば心配ないという意見が大半です。妊娠中に大量のカフェインを摂取すると、流産、低出生体重児などの原因となる可能性があるという報告がありますが、まだ結論は出ていません。授乳中は、飲んだカフェインの0.1〜1%が母乳に出てきます。下に示した様に、コーヒー以外にも、カフェインの含まれる身近な飲み物は意外と多いものです。妊娠中・授乳中は水分摂取が大切ですが、赤ちゃんのぐずりや寝つきの悪さが気になる方は、飲みすぎていないか確認してみましょう。コーヒー・紅茶が毎日の習慣になっている方は、ノンカフェインのコーヒーやタンポポコーヒー(タンポポの根で作られています)を試してみてはどうでしょう。妊婦さんや授乳中のママ向けにブレンドされたハーブティーも売られています。お母さんがストレスをためることなく、上手にカフェインと付き合いたいですね。

飲料や食品に含まれる
カフェイン量

解熱剤の正しい使い方

田中 朋美 先生エコチル調査富山ユニットセンター特命講師
富山大学附属病院小児科医師

解熱剤(熱冷まし)の正しい
使い方を教えてください

 解熱剤を使ってもなかなか熱が下がらなかったり、いったん下がっても数時間たってまた上がってしまったりすると、「こんなに熱を出していて大丈夫なのか?」と不安になることがありますよね。

 そもそも、風邪をひいたりした際になぜ熱が出るかというと、発熱は体の防御反応の一つだからです。人間の体は、体内に入ってきたウイルスや細菌をやっつけるために、体温を上げることによって免疫力を高めているのです。熱を出すことは、こうした病原体と戦うために必要な反応です。また、解熱剤は病原体をやっつけるための薬ではなく、いわば一時しのぎとして用いる薬です。

 では、どういったときに解熱剤を使えば良いのでしょうか。一言で言うと、高熱でも元気であれば使用する必要はありません。もちろん、39度を超える高熱で元気がなくなってしまうことがあります。そういった場合に一時的に熱を下げてあげると、少し元気になった間に水分を摂ることで脱水を防ぐことができます。使用するタイミングとしては、顔色が赤くなって手足があたたかくなり、暑がるようになったとき(熱が上がりきったとき)が望ましいです。めやすは38.5度以上でつらそうなときですが、38.5度より低くてもつらそうであればこの限りではありません。使用の際、最低6時間はあけて、1日3回までとしましょう。

 また、発熱時は大量に汗をかくため体内の水分が普段以上に失われます。必要に応じて上手に解熱剤を使用しながら、こまめに水分をとらせるように心がけてください。

冬のこどもの健康管理

田中 朋美 先生エコチル調査富山ユニットセンター特命講師
富山大学附属病院小児科医師

 冬にはやる主な感染症として、インフルエンザや胃腸炎(ロタ、アデノ、ノロウイルス)、RSウイルス感染症が挙げられます。
 これらの感染症がなぜ冬に流行るのかというと、それには冬の寒さや乾燥が関係しています。ウイルスは低温・低湿度を好むため、夏よりも冬の方がウイルスが長く生存できるのです。

風邪をひかないための
予防策について

 やはり手洗い、うがい、マスクの着用が基本です。まず、大人はこれを徹底しましょう。小さいお子さんにうがいをさせるのはちょっと難しいですが、2歳頃になってくるとできるようになってきます。
 乾燥に対しては、加湿器を使用したり、洗濯物を部屋に干すなどして湿度を保つようにしましょう。こどもが過ごす部屋は、冬は室温18~20℃、湿度50~60%が適当といわれています。

風邪をひいたときの対処について

 まず水分補給です。高熱、嘔吐、下痢などの際は脱水に注意が必要です。こどもは、小さな体のわりに必要な水分量が多く、体重1kgあたり乳児では100ml(例えば8kgで1日800ml)、幼児 は80ml(10kgで800ml)程度です。お茶やイオン飲料でも良いのですが、経口補水液は「飲む点滴」とも言われ、体調不良時の水分補給として優れています。元気な時に飲むとしょっぱく感じますが、熱を出したときなどに飲むとおいしく感じます。夏の熱中症対策でも使われるものですが、大人が体調不良になったときにも使えますので冷蔵庫に常備しておくといいでしょう。

インフルエンザについて

 インフルエンザは高熱、筋肉痛、倦怠感、咳、痰、腹痛や下痢などの症状を引き起こします。かからないようにするための予防が大事で、ワクチン接種をお薦めします。まず、1歳未満のお子さんのいる家庭は家族全員接種しましょう。
 1歳未満のお子さんの場合、生後6か月以上であれば摂取は可能です。ただし、子どもは大人に比べると免疫がつきにくいといわれており効果不十分の可能性もあります。6か月以上のお子さんに関しては、保育園に行っている場合や、その他に子どもと接触するような場所に行っているお子さんに関しては接種をお勧めします。

RSウイルスについて

 小さいお子さん(特に乳児)においては、しばしば急性細気管支炎をひきおこすことがあります。ぜーぜーしたり、肩呼吸、陥没呼吸、鼻翼呼吸、哺乳不良などといった症状がみられます。
 顔色がさえない、ぐったりしていて泣き声が弱い、水分がとれない、尿量が少ないなどといった変化がみられる場合は、早めに小児科を受診してください。

風しんの予防接種

伊藤 実香 先生富山大学附属病院産科婦人科 助教

風疹の予防接種って、
受けないとだめですか?

 妊娠初期の検査で風疹抗体価が陰性(8倍以下)だった方、抗体があっても16倍以下だった方は、分娩後に風疹の予防接種をおすすめしています。妊娠初期の女性が風疹にかかると、胎児が風疹ウイルスに感染し、難聴、心疾患、白内障、そして精神や身体の発達の遅れ等を持つ先天性風疹症候群の赤ちゃんが生まれる可能性があるため、とても心配して妊娠期間を過ごされた方もいらっしゃると思います。

 予防接種は、妊娠中は受けられませんが、授乳中は受けられます。母乳中にわずかにワクチンの成分が検出されることがありますが、それによる赤ちゃんへの影響はありません。ワクチンを受けた人から周囲の人に感染したとの確かな報告も、これまでにありません。産後の入院中、産褥健診のときなどにぜひ受けましょう。それ以降の方でも、お子さんの予防接種に付き添って行かれた際などに、小児科医に相談してみてください。家族の方にも、これまでに風疹にかかったかどうかがはっきりせず、ワクチン接種がお済みでない方には抗体検査を勧めてください。抗体検査やワクチンの費用は自己負担になります。料金の設定はそれぞれの医療機関で異なりますので、お問い合わせください。

 予防接種後は2ヶ月間の避妊をすることが原則となっていますので、次の妊娠はまだ先と考えている方もぜひ接種しましょう。次の妊娠を考えていない方も、今の赤ちゃんが大きくなってお孫さんを妊娠した際にも風疹を予防できます。みんなで風疹の免疫を持って、日本から風疹をなくしてしまいましょう。

 詳しくは、国立感染症研究所 感染症情報センターホームページを参照してください。

産後の健康管理

伊藤 実香 先生富山大学附属病院産科婦人科 助教

乳腺炎でこられる患者さんを
お見かけします

 外出中に授乳が必要でなくなることも多くなります。予防策として、乳腺炎にならない程度に授乳・搾乳(母乳を母乳パッドに搾ってしまう)をしましょう。
 子どもが離乳食を食べた口で乳首に吸い付くことも多くなると思いますが、乳首を清潔に保つことも大切です。

生理が始まるまでは、
普段より女性ホルモンが
下がっている状態です

 関節痛(ひざ、腰など)、髪の毛が抜ける、排尿時痛、性交痛、気持ちが不安定になりちょっとしたことでイライラしやすいなどの更年期のような症状の出ることもあります。

そろそろ生理が始まる時期です

 授乳してない方は、2~3カ月、授乳している方でも6カ月ほどで生理が始まる方が多いです。授乳中は生理が来ない方もいらっしゃいます。1年以上たって生理が無かったら、がん検診も兼ねて産婦人科を受診してみてください。再開したばかりのころは生理不順になりやすいです。出産前に不順だった方は、やはり不順になりやすい傾向があります。

☆生理が不規則な時期にいい予測方法があります

 基礎体温を測ってみて、高温期だと排卵後とわかります。排卵後2週間以内に生理が始まりますので、外出の際は生理用ナプキンの準備を。毎日測ったり、グラフにしたりする必要はまったくありません。

避妊方法

 産後の避妊方法は2種類あります。
 子宮内に避妊具をいれる方法とピルを飲む方法です(女性ホルモンが体内に入ると母乳の分泌が減ってしまうため、授乳中の方には通常産後6カ月までは処方しないことが多いです。)
 育児中のイライラが生理前にひどくなることはありませんか?ピルで排卵を抑え、女性ホルモンの変動を少なくすることで、月経前の心の不安定さが解消されることがあります。子どもや夫に穏やかに接する手助けになりますので、お悩みの方は是非ご検討を。

次の子を妊娠したら授乳を
やめたほうがよいかどうかは、
いろいろな考え方があります

 医学的に確かなことは、乳首を吸わせると子宮が収縮するということ。
 急にはやめられませんので、個人的には、妊娠したら卒乳する方向にしていくことをお薦めしています。

アトピー性皮膚炎について

足立 雄一 先生富山大学医学部長

 もともと赤ちゃんの皮膚は薄くて弱く、簡単に水分が逃げてしまいます。冷暖房などで乾燥した室内での生活も影響しています。1歳くらいまでの子どもの半数近くがアトピー性皮膚炎と診断してもいいほどです。乳児湿疹とアトピー性皮膚炎との違いは、医師にも診断が難しいものです。湿疹だけの場合は乳児湿疹、湿疹とアレルギーがある場合はアトピー性皮膚炎と判断します。治療はどちらもスキンケアが基本です。治療は医師の指示に従って進めてください。

正しい体の洗い方

 石鹸はにおいの強くないものを選んでください。ごしごし洗うのはよくありません。特に肌が弱い子は、泡と手のひらでそっと洗ってください。汚れをきれいに落とし、肌を清潔に保つことが大切です。

正しいスキンケア

 風呂上りにすぐ保湿を行いましょう。ローションなどの保湿剤を使用し、すり込まないで覆うように薄くつけてください。

食物アレルギーについて

足立 雄一 先生富山大学医学部長

じんま疹タイプ

 じんま疹タイプでは、原因食物(牛乳や卵、小麦など)は血液検査である程度わかります。アレルギーを心配するあまり、血液検査をしてから子どもに食べさせるというのは間違いです。少しずつ食べさせてみて観察し、症状がでたら診察を受けるようにしましょう。

アトピー性皮膚炎タイプ

 食物だけが原因でアトピー性皮膚炎になることは少ないので、まずスキンケアをしっかり行い、症状の経過を見ましょう。それでも皮膚炎が良くならないときには、医師と相談の上、食物制限を行うようにしましょう。子どもの成長にはバランスのとれた食事が欠かせないので、お母さんの判断だけで食物制限はしないでください。

妊娠しているときに
母親がすべきことは?

 妊婦が食物制限をすることによって子どもの食物アレルギーが防げるという証拠は今のところありません。しいて言えば、単一のものを過剰摂取しないようにする程度で、普通に過ごして大丈夫です。

揺さぶられっ子症候群について

田中 朋美 先生エコチル調査富山ユニットセンター特命講師
富山大学附属病院小児科医師

揺さぶられっ子症候群とは、
どういったものですか?
どんなときに起こるのですか?

 揺さぶられっ子症候群とは、乳児が激しく揺さぶられることなどにより脳が損傷を受け、頭蓋内で出血を起こすものです。特に、新生児〜生後6か月未満の赤ちゃんで起こりやすいといわれています。頭が相対的に大きく重いうえに、首の筋肉が未発達なために脳が衝撃を受けやすく、脳の損傷によって重大な障害を生じたり、場合によっては命を落とすことがあります。

 症状としては、ミルクを飲まない、嘔吐、笑わない、痙攣、長時間眠り続けることなどが挙げられます。

 常識の範囲内で赤ちゃんをあやすために抱っこをして軽くゆすったり、高い高いをしたりする程度では発症しませんが、しっかり首が座るまでは抱っこの際に頭や首を支えてあやしてあげましょう。赤ちゃんがなかなか泣きやまないために、イライラしてしまうことは誰にでも起こりうることですが、決して赤ちゃんを激しく揺さぶらないでください。

 また、長時間車に乗せていたことが原因と考えられる事例報告もあります。赤ちゃんを長時間車に乗せる際には、チャイルドシートを適正に使用し、1時間〜1時間半を目安にこまめに休憩を取り、その際はチャイルドシートから降ろすよう心がけましょう。

チャイルドシートについて

田中 朋美 先生エコチル調査富山ユニットセンター特命講師
富山大学附属病院小児科医師

チャイルドシートは、
生後何か月から必要ですか?

 チャイルドシート使用の対象となるのは、6歳未満の小児です。当然、生まれたばかりの赤ちゃんを車に乗せる際にも必要となります。特に、1歳半頃までの子どもの頭は衝撃に弱く、脳挫傷を起こしやすいといわれています。

 チャイルドシートにきちんと座らせることにより、死者は約7割減少し、重傷者は6割減少すると考えられています。しかし、残念ながらその着用率は6歳未満全体で57%と低く、しかもその半数が正しく装着されていないのが現状です。

チャイルドシートには、
どんな種類がありますか?

 チャイルドシートを選ぶときは、お子さんの体格に合ったものを選ぶ必要があります。

  • 乳児用
    (体重10㎏未満、新生児〜1歳頃まで)
  • 幼児用
    (体重9〜18㎏以下、1〜4歳頃まで)
  • 学童用
    (体重15〜36㎏以下、4〜10歳頃まで)

 があります。体格に合ったものを選ぶとともに、適切に設置することが重要です。
 私たち大人ひとりひとりの心がけで、子どもたちを危険から守っていきましょう。