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エコチル調査に取り組んでいます

富山大学医学部公衆衛生学講座教授
エコチルとやまユニットセンター長
稲寺秀邦

 ここ数十年の間に子どもたちのアレルギー疾患が急増しました。経済成長が著しい他国においても同様の傾向がみられています。経済活動の発展にともなう環境の変化、生活様式や食習慣の変化など、現代文明に特有の何らかの刺激がアレルギー疾患の増加に関与している可能性が高いと考えられています。ひとつの可能性として化学物質との関連が疑われています。
 私たちは生活を便利にするため多くの化学物質を製造し、使用してきました。医薬、農薬、食品添加物以外で、1トン以上製造または輸入される化学物質に限っても、年間新たにおよそ300種類以上が登場しています。身の回りで使用する前には、決められた試験法で事前審査を受けていますが、それには限界があります。そもそも動物(ネズミ)とヒトでは種差があるため、化学物質に対する反応性が異なる場合があります。このため、動物実験の結果をそのままヒトの健康リスクアセスメントに外挿することには限界があるのです。
子どもは、化学物質をはじめとする種々の環境要因に対する感受性が高いことが知られています。特に胎児や乳幼児の臓器は脆弱であり、環境からの曝露により様々な健康影響を受けやすいのです。子どもの健全な発育を守るためには、化学物質の曝露をはじめとする環境要因が、子どもの健康に及ぼす影響について明らかにし、その成果を環境政策に反映させることが必要です。
 2010年度より、全国15地域で10万人の妊婦さんを3年間で登録し、生まれた子どもが13歳に達するまで追跡する「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」がスタートしました。エコチル調査の目的は、化学物質の曝露や生活環境等が、子どもの健康にどのような影響を与えるかについて明らかにし、化学物質等の適切なリスク管理体制の構築につなげ、安全・安心な子育て環境を実現することにあります。2013年8月29日現在、全国では80,277名の母親がエコチル調査に参加し、55,165名のエコチルベビーが誕生しています。富山県では4,453名の母親が参加し、3,120名のエコチルベビーが誕生しています。
 エコチル調査では、環境要因が子どもの健康に与える影響を調べるため、お子さんが生まれる前から13歳になるまで、長期間にわたり追跡させていただいています。この過程でいくつかの疾患の診断を受けたお子さんを対象として、かかりつけの医療機関から、病状についての医学的な情報を提供いただくための調査(疾患情報登録調査)も開始されています。
 疾患情報登録調査は、エコチル調査に参加いただく際に、同意書に記載されている説明内容確認項目に基づき実施するものです。半年ごとの質問票にも、「該当する病気の詳しい内容について問い合わせをさせていただくことがあります」と記載しており、お子さんがそこに書かれた対象疾患の診断を受け、そしてその医療機関名をご回答いただいた方がこの調査の対象となっています。このあたりの経過については、平成25年6月30日の富山県小児科医会でも説明させていただきました。
 エコチル調査については、医師会の先生方にご協力をいただくとともに、長いおつきあいとなるかと思います。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

医報とやま(富山県医師会発行)より許可を得て転載

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