エコチル調査でわかったこと

「つわりでご飯が食べられない!」は、赤ちゃんの発育に影響しません

 赤ちゃんがお腹の中にいた期間(在胎週数)に比べて小さいこと*1は、生まれてすぐの状態に影響するだけでなく、おとなになったときの肥満や糖尿病発症などとも関連があることが知られています。この研究では、妊娠初期の、食事がとれないほど深刻な吐き気・嘔吐のつわり症状があった場合や、妊娠前に比べ5%以上の体重減少を伴う妊娠悪阻(治療が必要になるほど重症化したつわり)になった場合と、赤ちゃんの出生時の体重との関連を調べました。研究には、全国のエコチル調査参加者のうち、2011年に単胎、正期産(37~42週)で生まれたお子さん8,631名と、そのお母さんのデータを用いました。

 その結果、妊娠初期に、深刻な吐き気や嘔吐があった場合も、妊娠悪阻があった場合も、それらがなかった場合と比べ、小さい*1赤ちゃんの割合に、統計的に明らかな差はみられませんでした。一方で、お母さんが妊娠前にやせているほど、また、妊娠中の体重増加が少ないほど、小さい*1赤ちゃんの割合が高い結果となりました。

妊娠前にやせているほど小さい赤ちゃんが生まれやすいグラフ
妊娠前に体重増加が少ないほど小さい赤ちゃんが生まれやすいグラフ

 この研究からは、妊娠初期に、吐き気や嘔吐がひどく食事がとれず、体重が減ったとしても、その後、体重が適切に増えれば、そのことによって赤ちゃんが小さい心配はしなくてもよいといえるようです。一方で、妊娠前にやせているほど、妊娠中の体重増加が少ないほど、赤ちゃんが育ちにくくなりやすいようです。他方で、妊娠前の肥満や、妊娠中に体重が増えすぎることは、赤ちゃんが大きくなりすぎたり、妊娠高血圧症候群になったりしやすいといわれています。

 妊娠中は、体重増加量については個人差があるため、表をめやすに通院先の医師等の助言を得ながら、バランスのとれた栄養摂取をこころがけましょう。

厚生労働省「妊娠中と産後の食事について」
概要リーフレット)より

出典:Morokuma et al. BMC Pregnancy and Childbirth (2016) 16:247より

  1. 赤ちゃんが生まれたときの体重が、在胎週数別の標準値の小さい方から10%未満であることを指します。
  2. 小さい赤ちゃんが生まれる割合は、妊娠前のBMIが18.5以上25未満のお母さんから生まれる割合を基準としたとき、BMI18.5未満のお母さんから生まれる割合は1.58倍、BMI25以上のお母さんでは0.60倍でした。
  3. BMI:Body Mass Index=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)。
  4. 小さい赤ちゃんが生まれる割合は、妊娠中の体重増加が7kg以上12kg未満のお母さんから生まれる割合を基準としたとき、体重増加が7kg未満だったお母さんからは1.28倍、12kg以上増加したお母さんでは0.52倍でした。

この記事はエコチル調査富山ユニットセンターの見解で執筆しました。
エコチル調査富山ユニットセンター
 2018年2月