エコチル調査でわかったこと

つわりは朗報?
つわりの程度と早産の関係

 妊娠中に起こる「つわり」は、吐き気があって食事をとりたくなくなったり、ひどい時には嘔吐したりと「なんでこんな目に合わなきゃいけないんだ!」と苦しんでいる妊婦さんも多いと思います。一方、「つわり症状が強いということはお母さんの体内でホルモンが沢山出ていて、おなかの子の成長にはよい環境になっているのではないか」ということも言われています。しかし、お産にどう影響するか十分なことはわかっていませんでした。

 そこで、高知大学のエコチル調査の研究グループは、エコチル調査に参加している妊娠中のお母さん約9万6千人のつわりの程度と在胎週数※の関連を調べました。

※在胎週数:赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいる期間

 多くの赤ちゃんは在胎週数37〜42週で産まれ、この期間を経て産まれることを「正期産」、37週未満で産まれてしまうことを「早産」と言います。早産自体が病気というわけではないのですが、在胎週数が短いと体が未熟な状態で産まれる場合もあり注意する必要があります。この研究では、在胎週数26~31週の早産、32〜36週の早産、37週以降の正期産にわけて検討しました。

 つわりの程度は、「妊娠してから妊娠12週ころまでの間につわりの症状はありました?」という質問で

  1. つわりなし
  2. 吐き気のみ
  3. 嘔吐はするが食事はとれた
  4. 嘔吐して食事もとれなかった

という4択で回答いただきました。

 その結果、「1、つわりがなかった」と答えた人の割合は、26~31週の早産であった人で最も高くなっていました。一方、「4、嘔吐して食事もとれなかった」と答えた人の割合は正期産であった人で最も高いことが明らかになりました。つまり、つわりがあったほうが正期産になりやすい? あるいは、つわりがないと早産になりやすい? という傾向が見えてきました。

妊娠してから妊娠12週頃までの間につわりの症状はありましたか?

 この結果から、つわりに苦しんでいるお母さんは少しだけ「きちんと正期産で産まれるかも」と気を楽にしてつわりを乗り越えてもらえたらと思います。ただ、この研究はあくまでも傾向を示しただけで「嘔吐して食事もとれなかった」方の全員が正期産となるわけではありません。

 一方、「つわりがないから心配!」と、気になってしまう方もいらっしゃると思います。これも、上と同じ理由、あくまでも傾向を示しただけですので、つわりがなかった場合でも正期産で産まれてくる人はもちろんおります。ですので、つわりがなくてもあまり心配せず、穏やかな気持ちで過ごしていただけたらと思います。

 今回の研究からは、「なぜ26~31週の早産になった人につわりがないという人の割合が高かったのか」、その理由はわかっていません。今後つわりとお産の関係については、様々な角度から明らかにする必要があると思います。この研究は、そのための一歩となる研究結果です。

Mitsuda N, Eitoku M, Yamasaki K, Sakaguchi M, Yasumitsu-Lovell K, Maeda N, et al. Nausea and vomiting during pregnancy associated with lower incidence of preterm births: the Japan Environment and Children's Study (JECS). BMC Pregnancy Childbirth. 2018;18(1):268.

エコチル調査富山ユニットセンター
 2019年8月