富山大学医学部看護学科人間科学Ⅰ講座

人間科学Ⅰ講座

オンコサーミア

 本邦において悪性腫瘍(がん)による死亡率は最も多く、年々増加傾向にあります。その理由の一つに長寿社会への移行が挙げられており、現在では国民の2人に1人が「がん」に罹患し、国民の3人に1人が「がん」で亡くなると言われています。
 がんに対する治療は外科的治療、化学療法、放射線療法が中心ですが、個々のがんに対する標準的治療としてどれが優先されるかは組織型などによって異なります。通常は、初回治療として組織型にあった標準的治療が実施されますが、手術においては手術不能例、化学療法・放射線療法においてはそれぞれの無効例(一時的に有効であっても再発・再増大を認める場合も含む)が存在します。さらに高齢化社会となった今、がん治療に伴う合併症などリスクを考えると標準的治療が適応しにくいこともあります。
 様々な集学的治療に対しても難治性のがんは多く存在し、進行・転移により患者の生活の質(Quality of Life: QOL)を悪化させ、死に直面することも多いと言えます。従って、がんの治療においては手術療法、化学療法、放射線療法を補完する選択肢が強く望まれるようになってきました。

 このような状況の中、温熱治療(ハイパーサーミア)は新たながん治療として期待されてきました。その原理はがん細胞に対して熱を加えて死滅させるものです。がん細胞は人工的に熱を加えた場合、42.5℃を超えると正常組織に比較して急激に死滅するようになるので、その性質を利用して治療を行うのがハイパーサーミアの原理です。
 ハイパーサーミアは放射線や化学療法と違ってがんの種類にあまり関係なく効果が期待でき、副作用が少ないので注目を浴び、すでに集学的治療の一つとして実施されています。その後続として、ハンガリーのサース・アンドラーシュ先生は、より少ないエネルギーで深部に存在する腫瘍への効果が高くなるオンコサーミアの理論と技術を実用化させました。そしてオンコサーミア治療として実施されるようになったのです。

オンコサーミア

 既に海外ではドイツ、ハンガリー、韓国など30ヶ国の臨床現場において用いられておりますが、残念ながら日本では未承認機器でのままです。そのため、国内での臨床実績を積み、近い将来患者さまががん治療の選択肢として考えていただけるように、臨床効果の分析を行うことを目的として実施しております。

 人の命に関わるこの疾患を克服する、あるいは少しでもより良いQOLの持続のためにオンコサーミアが役立つことを願っております。「がん」とともに生きることの患者さまに対して、この機器とともに私たち医療者が寄り添っていけることができるように努めていきたいと考えています。
 なおオンコサーミアは富山大学において医師主導型試験を終え、現在は自由診療で治療を受けることができます。

詳しくは 富山大学附属病院オンコサーミア自由診療をご覧ください。