心不全・閉塞性動脈硬化症に対する和温療法

心不全・閉塞性動脈硬化症に対する和温療法


和温療法とは?


鹿児島大学元教授(現和温療法研究所所長)である鄭忠和先生が考案された、主に慢性心不全や閉塞性動脈硬化症に対する低温サウナを用いた治療法です。これまで心不全を中心に延べ5万人を超える様々な疾患の患者さんに対してその安全性や有効性が確かめられ、いくつかの大学病院や基幹病院などで導入が進められています。

我々の施設では2007年10月から北陸初の和温療法を開始し、これまで(2016年8月まで)約300例の患者さんに治療を行っております。




和温療法の特徴
通常のサウナ(90℃~100℃)とは異なり、60℃の低温乾式遠赤外線サウナでゆっくりと深部から体を温めます。このため熱刺激による血圧や心拍数の変化がほとんどなく、軽症から極めて重症の患者様まで安全に心地良く治療していただけます。


なぜ効くのか
メカニズムの詳細は解明されておりませんが、以下のことが考えられています。

1.血管拡張による心臓の負担軽減
2.血管拡張や血管新生などによる末梢循環の改善
3.精神的なリラックス効果


治療方法
南5階病棟 和温療法室



以下の①~⑤の流れで治療を行います。

1.血圧、脈拍、体重の測定

2.60℃に設定した低温乾式遠赤外線サウナ室に15分間入浴



3.出浴後リクライニングシートで30分間の安静保温



4.保温終了後に再度、血圧、脈拍、体重の測定



5.発汗で失われた水分の補給し終了

導入時は入院で週5回、以後外来継続可能な患者さんは週2~3回で継続します。



当科の治療成績【和温療法が著効した例】


62歳男性で虚血性心筋症(重度の狭心症による心不全)の患者さん。入院7ヶ月前から労作時の息切れを自覚するようになり、2ヶ月前には下腿浮腫と呼吸困難が出現し、うっ血性心不全の診断で前医入院となった。しかし心不全のコントロールに難渋したため当院へ転院となった。心エコーでは、左室はびまん性に壁運動低下を認めEF(左室駆出分画;正常値50%以上)は12%と高度に低下し、重度の僧帽弁逆流も合併していた。

冠動脈造影では、右冠動脈は#2で閉塞、左前下行枝は#6 で90%狭窄、対角枝は99%狭窄、回旋枝は#13で99%狭窄と重症3枝病変であった。
棒グラフ(青)は尿量、折線グラフ(赤)は体重の推移を示しています。入院後フロセミド(利尿薬)を静注で使用しましたが、その後は使用しませんでした。第5病日にエナラプリル(血管拡張薬)を導入しましたが効果がなかったので、第11病日より和温療法を開始しました。和温療法後は明らかに尿量が増え、横ばいであった体重も徐々に減り、レントゲン、BNP値(心不全のマーカー)、CRE値(腎機能のマーカー)、息切れ症状も著明に改善しました。



【慢性心不全患者さん(64例)で和温療法の効果を検証】


この患者様は、和温療法導入以前の心不全コントロールが不良であった時期に不整脈(心室頻拍)を認めていたため、後にICD(植え込み型除細動器)を入れましたが、和温療法導入後は不整脈の出現はありません。もちろん和温療法以外の薬物治療はこの間変更しておりませんので、和温療法の効果と考えられました。

上記のプロトコールで、虚血性の心不全(多くは虚血性心疾患による心筋症)と非虚血性の心不全(多くは拡張型心筋症)に分けてその効果を検証しました。


虚血性、非虚血性のどちらの郡も心不全症状、心機能ともに改善しました。

BNP(心不全のマーカー)、6分間歩行距離ともに改善しました。

身体的なQOL(生活の質)のみならず精神的なQOLも改善しました。



注意点
●和温療法は現在保険適応外の治療であるため、費用は当科で負担し、患者さまから和温療法に要する費用は頂いておりません。もちろん、通院や和温療法以外の治療・検査にかかる費用はこれまでどおり患者さんにご負担いただきます。

●患者さんによって治療効果の程度は異なります。早い人では1~2週目で効果が出る場合がありますが、効果が得られない方もいらっしゃいます。

●本治療は通常のサウナとは異なりますので、通常のサウナを用いて自己判断で上記のような治療をすることは危険です。



       

最後に


当科におけるこれまでの治療成績や他施設からの報告からも、和温療法は軽症から重症まで、そして増加し続ける高齢の患者さんに対しても安全性と有効性が確認されています。

また心不全に限らず、虚血性心疾患や閉塞性動脈硬化症、膠原病、慢性疲労症候群など様々な疾患に対する効果が期待されております。(和温療法研究所ホームページ:http://www.waon-therapy.com/

これからも多くの患者さんに本治療の効果を実感して頂き、この治療をさらに発展させて行きたいと考えています。

このホームページをご覧頂いた患者様や医療従事者の方々で、和温療法に興味を持たれた方は是非当科へ御連絡・御紹介頂きたいと存じます。

現在当科では以下の様な患者さんを積極的に治療しております。

1.「薬物療法で治療効果不十分な重症慢性心不全」
2.「血行再建困難、又は再建後も虚血が残存する虚血性心疾患」
3.「①②の合併した例」
4.「血行再建困難、又は再建後も症状が残存する閉塞性動脈硬化症」
5.「薬物治療抵抗性冠攣縮性狭心症」
患者様を御紹介頂ける際には、「富山大学 第二内科 和温療法目的 傍島光男 宛」に御紹介頂けますようよろしくお願い申しあげます。   

 

 
     

当科に関連した研究報告


1.Tei C, Imamura T, Kinugawa K, Inoue T, Masuyama T, Inoue H, Noike H, Muramatsu T, Takeishi Y, Saku K, Harada K, Daida H, Kobayashi Y, Hagiwara N, Nagayama M, Momomura S, Yonezawa K, Ito H, Gojo S, Akashi M, Miyata M, Ohishi M, and WAON-CHF Study. Investigators Waon Therapy for Managing Chronic Heart Failure -Results From a Multicenter Prospective Randomized WAON-CHF Study. Circ J 2016,80: 827-834

2.Sobajima M, Nozawa T, Fukui Y, Ihori H, Ohori T, Fujii N, Inoue H. Waon Therapy Improves Quality of Life as Well as Cardiac Function and Exercise Capacity in Patients With Chronic Heart Failure. Int Heart J 2015,56: 203-208

3.Sobajima M, Nozawa T, Ihori H, Shida T, Ohori T, Suzuki T, Matsuki A, Yasumura S, Inoue H. Repeated sauna therapy improves myocardial perfusion in patients with chronically occluded coronary artery-related ischemia. Int J Cardiol 167. 2013;167:237–243

4.Ohori T, Nozawa T, Ihori H, Shida T, Sobajima M, Matsuki A, Yasumura S, Inoue H. Effect of Repeated Sauna Treatment on Exercise Tolerance and Endothelial Function in Patients With Chronic Heart Failure. Am J Cardiol 2012; 109:100-104

5.Sobajima M, Nozawa T, Shida T, Ohori T, Suzuki T, Matsuki A, Inoue H. Repeated sauna therapy attenuates ventricular remodeling after myocardial infarction in rats by increasing coronary vascularity of noninfarcted myocardium. Am J Physiol Heart Circ Physiol 2011;301: H548–H554   

 

 
   


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