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  • H.pylori菌(ピロリ菌)
  • GIST (消化管間葉腫瘍)
  • 逆流性食道炎
  • 炎症性腸疾患
  • 消化管機能性疾患
  • 内視鏡診断・治療

ピロリ菌  H.pylori(左)は1983年に写真(右下)のマーシャル先生によって発見された胃に棲息する細菌です。この細菌は胃潰瘍、十二指腸潰瘍発症の80-90%に関係する原因菌であり、今日、保険診療で治療(除菌治療)ができます。除菌治療は一見、簡単そうに見えますが、抗生剤耐性H.pyloriの急増、不十分な知識に基づく治療失敗例が急増しており、適切な上手な除菌治療が求められております。この細菌は胃マルトリンパ腫の原因菌でもあり、この疾患も除菌後の治療効果の追跡などに専門的知識と手段(遺伝子検索)が必要です。さらに本菌感染者は胃癌の高危険群であり、感染者の8%から将来、胃癌を発症しますが、どのような特徴のある感染者が胃癌を発症するのか(高危険群の絞り込み)、 感染後のいつまでに除菌すると胃癌発症を予防できるかが不明確であり、これらの重大な課題が残されたままです。胃癌発症機序も明らかではありませんが、H.pylori病原因子および宿主因子の分子生物学的研究により解明が進んでおります。

マーシャル博士  消化器疾患以外にも本菌は関係し、特発性血小板減少性紫斑病の約50%は除菌により血小板が恒常的に増加し、これまで脾摘やステロイド長期投与を余儀なくされた患者さんには大きな福音ですが、その機序も全く明らかにされておりません。その他、胆管癌、神経疾患、慢性蕁麻疹などとの関連も指摘されており、これらの関連も今後の課題です。まだまだ謎が沢山あるのです。

c-kit   これまで消化管粘膜下腫瘍として扱われてきた腫瘍の多くはGISTという新しい疾患概念で考えられるようになりました。それは多彩であった消化管粘膜下腫瘍の多くは消化管カハール介在細胞起源であり、c-kit遺伝子変異が腫瘍化機序であり(写真左)、さらにC-KIT蛋白を標的とした分子標的治療薬が画期的臨床効果をもたらしたことに起因します。

広田先生  GISTのc-kit遺伝子(受容体型チロシンキナーゼ)変異は写真右の廣田先生(兵庫医大病理学教授)により見いだされた知見ですが、GISTでは自律的に増殖シグナルが入っております。慢性骨髄性白血病のBCR-ABLに対する分子標的治療薬が同じくチロシンキナーゼであるC-KIT蛋白にも抑制効果があります。転移を伴うGISTの50%生存期間は9ヶ月ですが、この分子標的治療により90%の患者さんが2年以上、生存しております。しかし2年を過ぎますと徐々に効果がなくなる例が散見され、耐性細胞が出現してくることが明らかとなりつつあり、その耐性克服のため、あらたな治療戦略がたてられ、また重要な研究課題でもあります。GISTの分子標的治療は「ベッドサイドの疑問をベンチで解決し、その成果を患者さんに還元する問題指向性の高い消化器病学」のよいモデルです。

GERD  胃食道逆流症(以下GERD)は、胃内容物が食道に逆流し、胸やけや呑酸(どんさん)の症状を認める疾患です。典型的な内視鏡所見は、食道と胃の境界部分に潰瘍やびらんを認めます(左図)。GERDの原因の多くは胃酸の逆流であり、H2受容体拮抗薬やプロトンポンプ阻害薬で強力に胃酸分泌を抑制することで症状は改善します。
しかし、胸やけなどの症状が存在するにもかかわらず、内視鏡検査で異常を認めない場合もあります。これを、非びらん性胃食道逆流症(以下NERD)といいます。NERDでは、胃酸を強力に抑えても症状が改善しない場合が多いといわれています。当院では、以下の機器や検査方法を用いて、患者さん一人ひとりの病態に応じた治療に取り組んでいます。


1.24時間pHモニターリング

 この検査は、胃・食道のpHを測定することで、実際に胃酸が逆流しているのか、また治療薬は本当に効いているのかなど、多くの情報を得ることが可能です(保険適応)。
pHモニター


2.ビリテック(胆汁モニターリング)

 胸やけは、時に胃液の逆流だけでなく、十二指腸から胃を通り食道まで胆汁などの消化液が逆流することで症状が引き起こされることがあります。この検査では、24時間pHモニターリングと組み合わせることで、より詳しく逆流の内容物を調べることが可能です。
ビリテック


3.グルコースクリアランステスト

 胸やけを訴える人のなかには、唾液分泌量が少ない人がいると言われています。この検査はもともと歯科の検査で、虫歯のなりにくさを判定する検査方法です。虫歯も唾液が少ない人ほどなり易いといわれています。
ビリテック


炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)は原因不明の慢性疾患であり、戦後我が国でも急速な増加がみられている。しかし現時点では根本的な治療が無いため、治療に難渋し、入退院を繰り返す場合や手術を受けなければならない場合も決して少なくない。また、若年で発症し、慢性の経過をとるため、患者さんの生活の質 Quality of life (QOL) の面からも多くの問題点を抱えています。われわれは、この炎症性腸疾患に最新の治療方法を取り入れ、QOLの改善に全力を挙げて取り組むとともに、新たな治療法の開発、病態の解明にむけて日々基礎的、臨床的研究を行っています。


1)潰瘍性大腸炎に対する3剤除菌療法の大規模多施設臨床試験

潰瘍性大腸炎はステロイド、サラゾピリンやペンタサなどの薬剤により症状が改善し寛解状態に至るが、きちんと服薬しているにもかかわらず再発することがしばしば認められる。最近、腸内細菌の一つであるFusobacterium variumという細菌が、潰瘍性大腸炎の大腸粘膜に付着し症状を増悪させる原因となっているということが報告されました。Helicobacter pylori(ピロリ菌)が胃潰瘍、十二指腸潰瘍の原因菌とされ、除菌治療を行うことで潰瘍が治癒して再発しなくなるのと同様に、潰瘍性大腸炎の場合にも、このFusobacterium variumという細菌を除菌することで再発を防ぐことができるのではないかと考えています。そこで当科ではこの細菌に対し、アモキシシリン、テトラサイクリン、メトロニダゾールを使用した3剤除菌療法の大規模多施設臨床試験を積極的に進めており、症状の改善、再発の防止、QOLの改善といった臨床効果を得ると共に、その効果に付き詳細に評価しています。


2)炎症性腸疾患の病態に迫る基礎的、臨床的研究

T-RFLP法ヒトの腸内、特に大腸には多様な細菌が常在し、複雑な腸内細菌叢を形成している。1980年代より腸内細菌のDNA解析が可能となりヒトの糞便から細菌のDNAを抽出した結果、その20%は培養可能な既知の菌種だが、残る80%は培養困難な未知の菌種であると考えられています。

そこで我々は、Terminal Restriction Fragment Length Polymorphism (T-RFLP)という分子生物学的解析法を用いて、炎症性腸疾患の病因と考えられる新たな原因腸内細菌につき現在検討を進めています。この検討により、炎症性腸疾患に対する新たな治療戦略の構築を目指します。

胃もたれや胃の痛み、胸やけなどの上腹部に現れる症状を認めるにもかかわらず、内視鏡やその他の検査で異常がない場合を総称して機能性胃腸症(機能性ディスペプシア、FD)といいます。これらの症状の原因として、胃の運動機能の低下や、胃酸分泌過多、神経の過敏症など、様々なことが単独、またはいくつも組み合わさって起こっていると考えられます。
「検査を受けたが異常が無いといわれ、薬を飲んでみるものの症状が改善しない」
当科ではそのような患者さんに対して、もう一度症状をよく聞き直し、必要に応じて内視鏡検査や腹部超音波検査、胃バリウム造影検査などを行い、最適な治療方法を提供します。

現在、この分野の治療薬として、アセチルコリン分解酵素阻害薬や漢方治療が注目されており、当院の特徴でもある「西洋と東洋医学の融合」の点からも、幅広い治療を提供します。
まずは内視鏡検査などを受けて、本当に食道・胃・十二指腸に病気がないかどうかを確かめる必要がありますので、必ず検査を受けるように勧めています。


 当科では内視鏡的治療で根治しうる早期胃癌・早期食道癌・早期大腸癌に対して積極的に内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を行っています。特に富山大学に紹介される症例は市中病院では治療困難な症例が多く、経験豊富な医療機関の1つです。


Ⅰ、進化する内視鏡システム

日進月歩で進化する内視鏡システムを使いこなし、早期癌の発見や正しい病変の評価、そして治療へと結びつけるには、高度な内視鏡技術のみならず、最新情報を積極的にキャッチし、最新の検査・治療を提供しています。

NBI

↑高精細内視鏡+特殊光観察


Ⅱ、早期食道癌の安全な内視鏡治療

食道癌の内視鏡治療(ESD)は、胃に比べると難易度の高い治療法です。 その理由として、

 ①食道は内腔が狭く視野が十分でない
 ②そのため内視鏡操作するスペースが小さい
 ③周囲には心臓や大動脈、肺などの重要臓器があり、穿孔を起こすと危険である。

 従来、当院では思わぬ体動により穿孔や縦隔気腫をきたした経験をもとに、より安全な方法でESDを行うために、2010年から全例でハサミ型ナイフ(SBナイフ)を用い、手術室での全身麻酔下の治療で良好な治療成績を得ています (2015年8月現在)。


ハサミ型ナイフ(SBナイフ)による安全な食道ESD法

 当院では早期食道癌の治療において、「SBナイフ」による内視鏡治療を積極的に行っています。この方法のメリットは安全でかつ手術時間も短縮され、体への負担を最小限にとどめています。
ルゴールプレカット
ルゴールで食道癌の場所を特定し、周囲にマーキングを行います。粘膜切開は、ハサミで把持して電気で切開していきます。誤った場所を挟んでいる場合は掴み直しができるため非常に正確に切ることができます。
粘膜下層剥離きれいな剥離
粘膜下層の剥離も、狙ったところ挟んでから電気を通電し剥離するため、誤って筋層を切ることがなくなります。狙ったところを確実に剥離できるため、手術時間も短縮されました。

この成果は2011年米国消化器内視鏡学会で発表しました。




Ⅲ、早期胃癌の範囲診断の工夫

最新のシステムでも診断が困難な症例に対して、当科では「酢酸NBI法」を用いて、早期胃癌の範囲診断をより確実なものにしています。
インジゴ画像
↑通常のインジゴカルミンでは範囲の同定が非常に困難である
酢酸NBI画像
↑酢酸NBI法では境界が鮮明に浮き上がる

この研究内容は、第6回 日本消化管学会総会学術集会 ワークショップにて発表しました。



Ⅳ、高度な治療技術を要する早期胃癌の紹介例

①巨大な病変

巨大な病変 病変にマーキング
この症例は大きさも大きいですが、範囲診断も困難な症例でした。
範囲診断は酢酸NBI法で行い、図のようにマーキングしています。


剥離面1 剥離面2
ESD後胃体下部前壁~小彎~後壁にかかる大きな病変でした。
一括に切除でき、治癒切除の症例でした。



②瘢痕病変

噴門部小彎の病変は治療困難部位といわれていますが、さらに潰瘍瘢痕を伴った早期胃癌に対しても治療を行います。
中心部瘢痕 強い線維化
写真は潰瘍治癒後の状態で写真中央に固い瘢痕で少し凹んでいる病変を認めます。
瘢痕部分では粘膜と筋層が瘢痕組織で固く癒着しているため、剥離時に穿孔を起こす危険性が非常に高まります。特に噴門部では筋層が薄く穿孔の危険性が高い部分です。ESD後 偶発症なく一括・治癒切除でした。



③治療困難な部位の病変

弓窿部は、内視鏡を反転させても病変部分に直接アプロ―チすることができず、内視鏡治療をする中で最も治療困難な部位です。
治療困難部位 ハサミ型ナイフも有用
この症例は噴門部から弓窿部にかけての大きな病変で、図のようなマーキングを行いました。電気メスで切開が困難な部位ではハサミ型のナイフを用いた工夫をしています。
筋層露出 剥離面
この部分も筋層は薄く剥離時に容易に露出します。また非常に出血も多い部分であり、相当な経験と技術が必要な病変です。


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