教授あいさつ


杉山教授

富山大学大学院医学薬学研究部消化器造血器腫瘍制御内科学



教授 杉山 敏郎




「明日の医学を担う若き医師達へ望むもの」



 富山大学内科学第三講座は昭和54年に開講され、初代佐々木博教授、第二代渡辺明治教授、そして平成16年から私が引き継いで今日に至っております。いわゆる新設医科大学であり、当科出身の第1期生が昨年、本学で初めて県内公的病院長に就任する時代となりました。この間、医療、医学教育環境は激変し、とりわけ卒前・卒後教育、卒後臨床研修制度、大学制度の改革が地方大学医学部には大きな影響を与え、従来型思考では大学の存亡にも関わる時代となりました。

大学医学部の社会的使命は教育、診療、研究にありますが、近年の大改革は教育偏重に見えます。確かに優れた臨床医の養成、教育は当面の我々の大きなタスクです。 しかし、多数の症例を単に経験することが優れた臨床医の養成に結びつくか、と問われれば答えは「No」です。優れた臨床医としてのセンス(感性)は「一症例、一症例を丁寧に診察、考察、洞察する思考力」の蓄積がなければ磨かれず、症例の単なる経験からは医師能力は向上しません。 これには常に「患者さんの背後にある病態の隅々まで洞察する」トレーニングを自ら示す指導医が必要です。我々の講座の基本姿勢は「病態の隅々まで洞察する」、「わからないことは徹底して調べ、考え抜く」教育です。 このような思考法から早晩、いかに今日の医学には未解決の課題が山積しているかを知るでしょう。かかる教育こそが、その解決に向けての高いモチベーションを与え、明日の医学研究、患者さんに還元できる新しい医療の大きな展開につながる原動力となるのです。

具体的に当科の研修内容を紹介しましょう。我々の講座は消化器病学、血液病学、腫瘍内科学を専門領域としております。現在の2年間の初期研修では6ヶ月、最長でも14ヶ月の内科教育ですから、この期間内では一般内科研修すら十分とは言えません。 したがって後期研修は3年間を目途に、1-2年を消化器病学、血液病学、腫瘍内科学を中心とした一般内科研修、後半の1-2年は各自の希望に応じて消化器病学、血液病学、腫瘍内科学の専門医研修ができるように経験豊富な指導医のいる関連病院での研修と一連の研修計画を立て、これに沿って研修を積んでいただきます。 その結果、速やかに内科専門医を取得できる技量、知識が修得されます。医師流動化時代、専門医取得は必須です。我が国の専門医制度は「2階建て」となっており、消化器病専門医、血液病専門医は内科専門医取得後でなければ取得できまん。 我々の内科では、その後の大学研修により卒後8-10年で消化器病専門医、血液病専門医を取っています。大学病院は研修医研修病院でもあり、専門医研修病院でもあり、高度の先進医療を提供する医療機関、研究機関でもあります。 大学では専門診療グループ(消化管、肝胆膵、血液、腫瘍内科)に属して高度の専門医研修、先進医療研修をしていただきます。 個々の内容は診療体制、診療トピックスで紹介されますが、高い診療技術の修得は必要ですが、先進医療に取り組むためにはそれだけでは不十分です。 複雑な疾患、治療法の確立していない疾患の背後にある病態についての深い洞察力、問題解決能力を養う必要があります。私は消化管を専門とし、消化管疾患の大きなパラダイムシフト、疾患概念の転換期を、その真ただ中で経験し、診療および研究に従事してきました。 新展開をすばやくとらえ、今後、この領域を志望する情熱ある研修医に、是非、その魅力ある先進的医療を伝えたいと思っております。 例えば分子生物学的手法による腫瘍化機序の研究に基づいた消化管間質腫瘍(GIST)の新しい分子標的治療、耐性克服、NSAIDs小腸潰瘍、潰瘍性大腸炎やクローン病の病態関連細菌研究に基づく新治療などです。 私の期待する医師は「ベッドサイドの疑問をベンチで解決し、ベンチの成果を患者さんに還元する問題指向性の高い医師」、「広い視野で情報を世界に発信できる医師」です。 そして我々は医療を実践するプロ集団です。「患者さん、ご家族の気持ちのわかる医師」であることは当然です。
 
 モチベーションの高い、情熱ある消化器病、血液病、腫瘍内科を志す研修医が来られることを心から期待しております。

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