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看護学科長 ごあいさつ

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健康と看護学のSDGs

看護学科長 金森昌彦

 

 近年、情報技術の急速な進歩を背景に、AI(Artificial Intelligence)やIoT(Internet of Things)が登場し、医療界もポストヒューマンの時代になるかも知れないと予想されています。つまり人間が考える前にすでにロボットがその答えをだしているかも知れないのです。一方で、どんなに社会が変化しても人々の健康と幸福を支援するという看護学の原点は変わりません。このような今こそ、多様で複雑な患者さんの「からだ」と「こころ」に対峙すべき医療人の本質を見直す必要に迫られているのではないでしょうか。原点は同じでも大学教育ではこれまでと同じことを繰り返すのではない、常に新たなことを創造していくことが求められます。そして、この創造は社会の変化に密に対応していなければならないということです。これらに触れて自ら考えていくことが大学での学びであり、新たな展開への持続ということだと思います。
 2015年に国連が取りまとめたSDGs(Sustainable Development Goals)という言葉は「持続可能な開発目標」と訳されますが、ここには2030年までに世界が持続できる社会の再構築を目指しています。SDGsでは飢餓や貧困など17の項目が挙げられていますが、看護学に強く求められているのは保健領域です。20世紀の看護学では個々の患者さまへの対応が中心でしたが、少子高齢化社会を迎えさまざまの面で格差が生じた現在、もっと社会支援に目を向けなければなりません。経済格差、学力格差、生活格差、健康格差、地域格差など述べればきりがない上、地球温暖化に加えて森林破壊や海洋汚染など自然の崩壊が進み、近未来が危ぶまれています。資源のないわが国の長きにわたる幸せには健康感と教育基盤が重要で、その両者の重なる部分が看護学科に託された使命ではないかと考えています。
 「看護」という文字が「手と目で看て護る」ことを表すと言われて久しいですが、私たちは視野に入っていることをどのくらい理解し、対処行動をしているでしょうか。それどころか、手と目だけではなく、その人を同胞として全身で受け入れることから始めなければならないのです。また現代は冒頭に述べた情報技術の進化にも対応し、膨大なデータを科学的に解釈すること、さらに多様性やマイノリテイへの理解も求められます。大学生として、社会の平和と公正、貧困や責任などにも視野を広げ、小さなことから未来へ持続できる習慣や展望を身につけてほしいと思います。さらに、私たち教員は「あなた方が自負できるアカデミックなナース」になることを望んでいます。そのために4年間の大学生活が与えられていると考えてください。自分に与えられた天賦の才をそれぞれに生かす時間と思ってほしいのです。
 この杉谷キャンパスは「東西医学の融合」を理念に歩んできました。看護学科が設立されて今年で27年目を迎えたわけですが、看護学科では和漢医薬学入門、東洋の知と看護などの科目を通して、東洋医学的な発想や知識も学べる大学を意識して力を入れてきました。それは治癒できない慢性的な疾病をもつ患者さま、あるいは生命の限界が迫りつつある患者さまに対しての全人的なケア向上に役立ってきたと言えます。現在、国民の半数が悪性腫瘍に罹患する一方、超高齢化社会に至り90歳を超える人が200万に達したこの日本において、個々の患者さまがより幸せな人生を歩めるサポートができる人材に卒業生は育っています。また全員が保健師受験資格を得るための学修を行うことで、行政への就職の選択肢も広がり、在宅看護や地域での保健師活動につながっています。すなわち各学生の目指すゴールはそれぞれの価値観を生かせるものになっています。
 そのためには卒業後の進路選択肢も豊富です。地域の病院への就職という道の他にも、高度な看護実践を目指す大学院前期博士課程、後期博士課程、専門看護師(がん看護CNS、母性看護CNS)、など極めるべき専門コースは多く、学部から連続してチャレンジしたい学生さんには大学院の入学金免除などの制度も用意しています。さらに海外での医療支援の役割を担う卒業生もいます。今の自分に不安を抱えるより、将来の夢をこのキャンパスで描けるように、新たな自分に挑戦しようではありませんか。自然に抱かれた富山大学看護学科に入学していただき、杉谷キャンパスでマルチな自分の希望を育てながら、生涯にわたり母校として思い続けられるような学生生活を送ってほしいと思うのです。
 最後になりますが、富山大学図書館本館にはヘルン文庫があり、小泉八雲(ラフカデイオ・ハーン)の思いを伝えています。それはオープン・マインドであることです。これは「自分の五感を解き放ち、他者に対して温かな眼差しを持つ。そして他者への共感と共鳴」ということです。まさに看護のケアに通じる心のあり方だと思いませんか。皆さんがこの言葉の意味を意識して、医療人としてご活躍されることを祈念しております。

2020年 11月吉日

富山大学医学部

富山大学医学部看護学科富山大学


富山大学附属病院