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教授挨拶

精神医学のめざすところ−脳と心の解明とその病いの克服

富山大学大学院医学薬学研究部神経精神医学

教授 鈴木道雄

 

精神医学は臨床医学の一分野ですが、その一番の特徴は何でしょうか。それはいうまでもなく、精神の問題を扱うということです。そして精神には「脳の働き」と「心」という二つの側面があります。「脳」を扱う精神医学は、歴史的な脳病理学の時代を経て、近年の脳科学の発展により、非常に活気づいている領域です。「心」を扱う精神医学は、精神病理学と呼ばれ、これも多くの先達が長い時間をかけ、深い思慮をめぐらしてきた領域です。精神医学における、これら二つの側面は、これまでお互いに独立して発展してきたということができ、それらを統合する試みは、あまりなされて来ませんでした。身体器官としての「脳」と、物質には還元できない「心」の違いはいわば哲学的な問題であり、完全な統合は不可能であるという考えもあるかもしれません。しかし、「脳」と「心」の関連についての理解が深まれば、それだけ精神疾患についての理解が進み、診断や治療も進展することが期待されます。

一方では、「脳」や「心」の成り立ちや仕組みにはわかっていないことが多いので、精神医学を研究することは、精神の病的状態を通じて、健康な「脳」や「心」についても解明していくことにつながるだろうと考えられます。精神分析で有名なFreud, S.は「正常な状態は、病的なものに比べて研究対象としては不向きである」といっていますが、精神の病的な状態を明らかにしていくことの重要性を示していると思われます。

富山大学大学院医学薬学研究部神経精神医学講座では、精神医学を志し、臨床・教育・研究において切磋琢磨できる仲間を求めています。ともに奥深い精神医学を探求し、重要課題に積極的に取り組み、精神疾患に苦しむ患者さんのために行動しましょう。興味を感じた方は、是非一度、相談してみて下さい。

以下に当講座の特徴を簡単に記しておきます。

1.臨床―精神科疾患の早期診断・早期治療の推進

私たちは、神経精神科の基本方針として「精神科疾患の早期診断・早期治療の推進」を掲げています。精神科疾患には慢性的経過をたどるものが多いのですが、当科では前駆期を含む初発患者の診断・治療をとくに重視し、その充実によって長期転帰を改善させることを目標としています。また、当然ながら地域精神科医療への貢献を重視して活動しています。当科が対象とする疾患は、統合失調症、気分障害、こどもの発達障害、ストレス関連障害、摂食障害、認知症、睡眠障害など多岐にわたり、いずれも重要なものばかりです。これからは、精神科疾患の早期診断・早期治療センターとして、医療機関はもちろん、関係諸機関とも連携し、地域の中で十分に機能を発揮できることが重要と考えています。

2.教育―地域で活躍する専門医の養成

 富山県内の多くの病院で、当講座出身の医師が活躍しています。今後も地域医療に貢献できる優秀な精神科医を育てていくことが、当講座の大きな役割であることはいうまでもありません。初期研修を終えた若い医師たちには、大学ならではの環境で、教室の多くの先輩や同僚と交流しながら、精神医学と精神科医療の多様さを体験してもらいたいと思います。研究を行うことは、臨床医としての将来にも有益なので、大いに奨励しており、国内外への留学も積極的にしてもらっています。

3.研究―重要疾患の解明と客観的診断法と早期治療法の開発

当講座では、主として生物学的精神医学の立場から、精神科領域における重要疾患の病態解明や診断・治療の進歩につながる、実証的な臨床的および基礎的研究を推進しています。第一のターゲットは統合失調症であり、脳画像、神経薬理、神経生理、認知機能、遺伝子、動物モデルなどを用いて、多角的にアプローチしているのが特徴といえます。いずれも進歩の早い領域ですが、学会発表や論文の執筆も活発であり、国内および国際共同研究も積極的に行っています。若い人たちの積極的な参加により、研究が深まるとともに、研究領域の幅も広がることを期待しています。