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頭痛

頭痛は日常診療の場で最も多い訴えの一つであるが、心因性の頭痛からくも膜下出血脳腫瘍による生命を脅かす頭痛まで、その原因疾患は多岐にわたる。脳神経外科の救急診療においては、くも膜下出血や脳出血など緊急性を要する疾患による頭痛に遭遇する機会が多い。頭痛で最も重要なことは、頭痛の中には緊急性を要する頭痛があることである。このため、頭痛で注目すべき最大のポイントは、頭痛の発症様式である。頭痛の起こり方によって急性頭痛、亜急性頭痛、慢性頭痛の三つに大別することが可能であり、以下、発症様式ごとに具体的に述べる。

A. 急性頭痛

1. くも膜下出血

脳動脈瘤破裂が主因である。『何時何分に突然起こった頭痛。』『今まで経験したことのない様な頭痛。』『後頭部を何かで殴られたような頭痛。』などと表現され、嘔吐を伴うことが多い。重症例では、意識障害や運動麻痺などの神経症状を認める。軽症例では風邪による頭痛と安易に診断されることもある。何時何分とわかるほどの突発性の頭痛は、くも膜下出血をまず疑い検査をすすめる。

この突然発症する頭痛の中に、稀に、解離性動脈瘤による頭痛がある。この解離性動脈瘤の場合、突発性後頭部痛が特徴的である。解離性動脈瘤は、警告的頭痛の後、短期間にくも膜下出血を発症する場合もある。くも膜下出血した場合、予後不良である。

2. 高血圧性脳内出血

やはり突然の頭痛嘔吐で発症するが、運動麻痺意識障害などの神経症状を伴いやすく、CT で診断は容易である。発症から6時間以内は血腫が増大する危険性が高い。

3. 髄膜脳炎

上気道炎症状や発熱に伴った急性頭痛である。細菌性髄膜炎真菌性髄膜炎ではウイルス性髄膜炎に比べて一般に頭痛嘔吐項部硬直が強く、意識障害を伴うことも少なくない。早急に腰椎穿刺によるに髄液検査を行う。

4. 急性緑内障

急激な頭痛嘔吐で発症するため、くも膜下出血と鑑別を要することがある。しかし霧視や眼球の圧痛、結膜充血などなんらかの眼症状を伴う場合が多い。この場合、失明をさけるため眼科医に早急にコンサルトする必要がある。

B. 亜急性頭痛

頭痛の発症の日時があまり明確でなく、数日から数週にわたって頭痛が進行性に増強する場合である。このような場合、脳腫瘍慢性硬膜下血腫脳膿瘍など頭蓋内占拠性病変を疑う必要がある。

1. 脳腫瘍

悪性の脳腫瘍では、数週から数日の経過で頭痛嘔吐が急速に進行する。良性腫瘍でも数日の経過で出現し、急激に進行することがあるので注意が必要である。なんらかの局所脳症状やてんかん発作を伴うこともあるが、頭痛、嘔吐だけを認めることも少なくない。頭痛は、起床時だけに現れることがある。頭痛を訴える脳腫瘍患者の多くで眼底うっ血乳頭を認める。

2. 慢性硬膜下血腫

亜急性頭痛嘔吐不全片麻痺認知症などの神経学所見を呈することが多い。1〜2ヵ月以内に軽度の頭部外傷の既往がある場合や大酒家では本疾患を強く疑う。

3. 脳膿瘍

頭痛、発熱、けいれん発作、運動麻痺などを伴う。抗生物質の普及で半数以上は全身の炎症症状を伴わない。

C. 慢性頭痛

数ヵ月から、多くは数年以上にわたり頭痛に悩まされている場合である。発作の起こり方は発作性反復性のものと持続性のものがある。前者の代表的なものは、片頭痛などの血管性頭痛であり、後者の代表は筋収縮性頭痛である。これらは機能性頭痛に分類され、神経学所見に乏しく、CT他の検査でも異常所見を見い出し難い。しかし、それぞれの頭痛発症の機序や治療薬が異なり、適切な治療のために正確な診断が必要である。

a. 血管性頭痛片頭痛

1. 典型的片頭痛

幻視暗点などの視覚前駆症状が頭痛の数分から数10分前に現れ、頭痛が起こるとこれらの症状は消失する。頭痛は拍動性で徐々に増悪する。食欲不振、悪心嘔吐を伴うが一過性である。家族歴があることが少なくない。まれに視覚前駆症状のかわりに一側感覚障害運動麻痺をきたすことがあり、片麻痺片頭痛と呼ばれる。脳梗塞脳内出血との鑑別が必要である。

2. 普通型片頭痛

神経学的症状を伴わない頭痛で、しばしば光・音・匂いに対する過敏や悪心嘔吐を伴う。結膜充血流涙鼻閉塞鼻漏などの随伴症状がみられることも少なくない。

3. 群発頭痛

頭痛は前頭部で通常片側性で、男性に多い。痛みは夜間に起こり、眼とその周辺に強い。結膜充血流涙鼻閉塞鼻漏縮瞳などを伴う。頭痛は“群発”すなわち数週から2〜3カ月にわたり続くことがある。

b. 筋収縮性頭痛(緊張性頭痛)

一般的に慢性持続性の鈍痛が後頭・頭頂部あるいは前頭側頭部におこる。圧迫性あるいは筋肉が張ったような頭痛と表現される。反復発作性のこともあり片頭痛と明確に分けられないこともしばしばある。神経学的・身体的所見に乏しいが、筋肉の収縮や過緊張を伴う場合には、後頭部・後頚部や肩の筋群に圧痛や硬結を触れることがある。

まとめ

A. 急性頭痛

  1. くも膜下出血: 経験したことの無い激しい頭痛が突発
  2. 高血圧性脳内出血: 頭痛、嘔気神経症状を伴う
  3. 髄膜脳炎: 発熱や髄膜刺激症状を伴う
  4. 急性緑内障: 突発する頭痛になんらかの眼症状を伴う

B. 亜急性頭痛

  1. 脳腫瘍: 脳圧亢進症状や神経症状を伴う
  2. 慢性硬膜下血腫: 脳圧亢進症状や神経症状を伴う、外傷の既往
  3. 脳膿瘍: 脳圧亢進症状や神経症状、炎症症状を伴う

C. 慢性頭痛

  1. 典型的片頭痛: 視覚前駆症状にひき続いて頭痛が起こる
  2. 普通型片頭痛: 悪心結膜充血流涙鼻閉塞などの随伴症状
  3. 群発頭痛: 夜間繰り返しおこる
  4. 筋収縮性頭痛(緊張性頭痛): 慢性・持続性で圧迫性の鈍痛

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