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脊髄・脊椎疾患、その診断と治療

富山大学附属病院脳神経外科では、広く脊髄脊椎疾患の診断と治療にあたっています。年間数十例の手術を行っておりますが、この数は外来で診察している患者さんのごく一部です。すなわち、脊髄・脊椎疾患は診断されてもそのほとんどの方は、まず保存的な治療(薬物、理学療法)や経過観察を行っております。本当に手術が必要な人は少ないと考えています。また、私達は頚椎手術ではすでにクリティカルパスを導入しており、術後の歩行開始は術翌日か術翌々日で、平均入院期間は3週間以内です。

私達が扱っている脊髄・脊椎疾患には、頭蓋頚椎移行部病変、キアリ奇形環椎軸椎亜脱臼、頚椎椎間板ヘルニア、変形性頚椎症、後縦靱帯骨化症、脊柱管狭窄症、黄色靱帯骨化症、脊髄損傷、腰椎疾患、脊髄腫瘍、脊髄血管障害などが含まれます。特に頚椎椎間板ヘルニア、変形性頚椎症、後縦靱帯骨化症は非常に頻度の高い疾患なのでその病態、症状および診断と治療について解説します。

頚椎椎間板ヘルニア、変形性頚椎症

病態

椎体のクッションにあたる椎間板の中にある髄核(ずいかく)が脱出したものです。若い人では、単独で脱出し(ソフトディスク)、中高年の人は骨棘を伴って脱出(ハードディスク)することが多いようです。このため脊髄や神経根が圧迫されて症状が出ます。原因として、椎間板の変性、運動・職業による動的な負荷、外傷などがありますが、生まれながら脊柱管(脊髄の入っている所)が狭い脊柱管狭窄症の人は症状が出やすく、多くはこれらの原因が単一あるいは複合してみられます。原因が不明のこともあります。

後縦靱帯骨化症

病態

国の難病指定になっている原因不明の病気です。椎体の後ろにある後縦靱帯が徐々に骨化肥厚する進行性の病気です。頚部のレントゲン写真では一般人口の0.5% から 5%に見られるとの報告があります。日本人に多く、男性は女性の2倍多いと言われます。脊柱管内で後縦靱帯が骨化肥厚するため脊髄は扁平に圧迫されて脊髄症状が出ます。軽微な外傷や頭部打撲などで急激に脊髄麻痺になることがあります。

症状

頚椎椎間板ヘルニア、変形性頚椎症、後縦靱帯骨化症はそれぞれ類似疾患と言えるもので特有の症状ありません。手足の筋力低下(麻痺)、しびれ、痛み、手足の筋のこわばり(腱反射亢進)、歩行障害、腕や手の筋肉のやせ(萎縮)、めまい、頭痛、頚部痛、背部痛、尿閉といったさまさざまな症状があります。ゆっくりと慢性に症状が出る場合や急に症状が出ることがあります。軽い怪我の後に突然発病することや症状が悪化することが珍しくありません。後縦靱帯骨化症では、手足の麻痺やしびれの症状が比較的左右対称であることが多いようです。また長い経過で観察しますと症状が急に悪くなったり、進行が停止したりすることもありますが、ほとんどの場合は徐々に進行します。

診断

症状に加え脊髄・神経根の障害を示す理学所見があれば、私達は頚椎椎間板ヘルニア、変形性頚椎症あるいは後縦靱帯骨化症を疑います。中高年の人では脳梗塞や他の脊髄疾患を除外する必要がありますが、頚椎のレントゲン写真や MRI を行うことで診断はほぼ確定されます。

治療

先程述べたように、症状が軽い場合や画像所見だけで無症状の方には手術は行っておりません。たとえ症状があっても1ヶ月程度の頚椎カラーの装着や牽引などの保存的治療で良くなることが多いからです。ただし、保存的治療で一旦改善しても再び症状が悪化した場合、また職業、年齢等の社会的な背景も考慮に入れて慎重に手術適応を検討し、手術の利点・欠点・危険性も全て説明いたします。最終的に手術を受けるかどうか決めるのは患者さんです。

手術法としては、前方から脊髄・神経の圧迫因子を取り去り椎体の固定を行う方法(前方除圧固定術)と後方から椎弓を切り除圧する脊柱管拡大術(椎弓形成術)があります。どちらも脊髄脊椎外科を専門とする熟練した医師が行っており、過去5年間の私達の手術合併症発生率は5%以下です。ただし2年から5年以上長期観察を行った結果、症状のわずかながらの再発や病状の悪化が見られる場合がありますので、慎重な術後経過観察が必要と考えています。


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