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脳神経外科疾患メモ

このページは 富山大学脳神経外科 facebook ページ を再構成したものです。

Vol. 18 神経内視鏡はすごい!の巻 2014年3月29日

脳室内・脳室近傍腫瘍を有する患者さんを診療するにあたって、神経内視鏡手術は、腫瘍生検術のほか、合併する水頭症に対する神経内視鏡的第3脳室開窓術 、透明中隔開窓術など多岐にわたる非侵襲的医療を提供する上できわめて有用なデバイスです。当科でも、長年にわたって全国屈指の神経内視鏡の使用経験が蓄積されています。

今回、当科における神経内視鏡の成績をまとめて「脳神経外科」に発表させていただきました。ぜひ、ご一読下さい。

黒崎邦和、林 央周、浜田秀雄、永井正一、遠藤俊郎、黒田 敏:神経内視鏡を用いた脳室内および近傍腫瘍の生検術—現状と課題。脳外42:205-211, 2014

脳室内・脳室近傍腫瘍の診療に際して、神経内視鏡の役割は今後も大きくなると考えますが、当科では診断および治療成績のさらなる向上を目指して、ハード、ソフト両面での技術革新を進めています。

CT 画像と神経内視鏡で見える脳室の写真

Vol. 17 「越中八策」の巻 2013年9月2日

近年、頚動脈狭窄症の患者さんが急速に増加しています。頚動脈狭窄症は、さまざまなメカニズムを介して、一過性脳虚血発作(TIA)や脳梗塞を招く動脈硬化性疾患の一つです。この疾患は、冠動脈狭窄症、腎機能不全、閉塞製動脈硬化症(ASO)など、全身の動脈硬化性疾患を合併することも多いのが特徴で、頚動脈内膜剥離術(CEA)や頚動脈ステント留置術(CAS)を安全に実施するには、その前後の管理には細心の注意を要します。

当科では、患者さんの病状に合わせてCEA/CASを安全かつ確実に実施していますが、当科の方針を社会に広く認知していただき、学生・研修医の教育にも反映するため、このたび富山大学脳神経外科 頚動脈狭窄症治療心得「越中八策」を策定しました。もちろん、1867年に坂本龍馬が策定した「船中八策」のオマージュです。

We have established "Toyama Carotid Eight Rules" to safely and completely treat the patients with carotid artery stenosis in the whole world.

越中八策 富山大学脳神経外科 頚動脈狭窄症治療心得 一、症候性は CEA、無症候性は CAS を行う事 一、ハイリスク症例は CEA/CAS のクロスオーバー、無理はしない事 一、CEA/CAS の選択に年齢は考慮しない事 一、抗血小板剤は当日まで服用、血小板凝集能チェックをする事 一、CEA は必ずシャント、NIRS/SEP モニタリング下で行う事 一、CAS は原則として体外ペースメーカーで、症例に即した protection 法と sstent を選択する事 一、術前 CBF 検査は必須、治療当日も CBF を評価する事 一、脳神経外科医による長期間のフォローアップを行う事 黒田 敏、桑山直也、秋岡直樹、柏崎大奈 2013年9月1日

Vol. 16 オペレーション iPad 2013年5月29日

患者さんの CT・MRI・脳血管撮影などの画像データは、術前のみならず、手術中も大変有用な情報を提供してくれます。

これまでは手術中に画像データを再チェックする際、患者さんから一旦離れて、手術室の壁に設置された大型モニターまで移動して見る必要があり、どうしても手術の中断が余儀なくされていました。

しかし、患者さんの画像データを DICOM ファイルのまま取り込んでおいた「iPad」を滅菌パックに入れて使用すると、顕微鏡手術をしながら、その場で画像を確認して次のステップに進むことができるので、これまで以上にスタッフ間のディスカッションやコミュニケーションを迅速かつスムーズに行なうことが可能になりました。いい時代になったものです。写真は脳動脈瘤頚部クリッピング術の際の一コマです。

The iPad is a quite useful tool to check neuroradiological information during surgery without time loss. Radiological data can be transferred into the iPad as the DICOM files very quickly. The iPad can be wrapped with a sterilized bag. Neurosurgeons can discuss a lot during surgery without any stress.

手術中に iPad で画像確認をする写真

Vol. 15 髄膜腫 2013年5月26日

髄膜腫は代表的な脳腫瘍の一つです。脳腫瘍全体の約20%が髄膜腫で、近年の統計ではわが国の脳腫瘍の中で最多のものとなっています。脳腫瘍は脳を覆っている膜から発生する腫瘍で、多くの髄膜腫は良性腫瘍ですが、まれに悪性腫瘍の性格を示すものもあります。 治療の基本は、手術による全摘出です。髄膜腫の発生部位、サイズなどによって、治療の難易度は大きく異なります。当科では、手術困難な髄膜腫の場合には、ナビゲーション、頭蓋底手術のテクニックなど、あらゆる手段を講じて安全な根治手術を目指しています。 手術前に実施する脳血管内手術による腫瘍塞栓術は、手術時間の短縮、出血量の減少の点できわめて有用です。

詳細は以下のURLをご参照下さい。
http://square.umin.ac.jp/neuroinf/medical/208.html

Meningioma is one of major intracranial tumors. Total removal through craniotomy is the best radical treatment. Meningioma is basically benign, but large and/or deep-seated meningiomas requires skull base technique, intraoperative navigation, and neurophysiological monitoring. Preoperative embolization is quite useful to shorten operation time and reduce blood loss during surgery.

髄膜腫の術前術後 MRI の写真

Vol. 14 痙性斜頚とハンガー反射 2013年4月21日

痙性斜頚(頸部ジストニア)は、自分の意思と反して頭が勝手に動いてしまう原因不明の疾患です。一方、頭に針金のハンガーをかぶせると頭部が勝手に回ってしまう「ハンガー反射」という大変興味深い現象があります。われわれは、この現象を痙性斜頚の治療へ応用する研究を行っております。2012年度に多施設共同臨床研究を開始し、現在も継続中です。

ハンガー反射の研究については、下記をご参照ください。
http://kaji-lab.jp/ja/index.php?rsearch%2Fhanger
多施設共同研究に関しては、下記に登録されています。
https://upload.umin.ac.jp/cgi-open-bin/ctr/ctr.cgi?function=confirm&action=brows&recptno=R000007021&key=1002mEpG32kDoBCt1e5Y7bMU

痙性斜頸でお悩みの方は、当科外来の旭雄士医師までご相談下さい(毎週火・金曜日)

Cervical dystonia is a disorder of unknown cause. On the other hand, when a wire clothes hanger is placed on the head, the head rotates unexpectedly. The curious phenomenon is called the “hanger reflex”. We used this reflex to treat cervical dystonia patients. A multicenter clinical study is ongoing for evaluating the clinical efficacy for the cervical dystonia from 2012.

The study of the hanger reflex is described below.
http://kaji-lab.jp/ja/index.php?rsearch%2Fhanger
Multicenter study is registered on the web site.
https://upload.umin.ac.jp/cgi-open-bin/ctr/ctr.cgi?function=confirm&action=brows&recptno=R000007021&key=1002mEpG32kDoBCt1e5Y7bMU

Please consult our clinic on Tuesday or Friday a.m. if you have problem with the cervical dystonia.

ハンガー反射の説明写真と痙性斜頚の諸症状の写真

Vol. 13 頚動脈内膜剥離術と高次脳機能 2013年2月10日

近年、わが国でも増加している動脈硬化による頚動脈狭窄症は、一過性脳虚血発作(TIA)、一過性黒内障、脳梗塞などを招く疾患として注目されています。しかし、頚動脈狭窄症は脳梗塞などをきたす以前から認知機能を低下させることが最近の研究で明らかにされつつあります。

今回、われわれは、無症候性の頚動脈狭窄症(70%以上)を有する15例で頚動脈内膜剥離術の前後に高次脳機能検査(RBANS)を実施したところ、術前、総スコアおよび即時記憶、言語、注意の3つの指標が低下していること、術後にこれらの指標が有意に改善することを明らかにしました。

Takaiwa A et al. Acta Neurochir (Wien) 2013 Jan 30 (Epub ahead of print)
詳細は以下のURLをご参照下さい。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23361637

This study was conducted to determine if patients with asymptomatic carotid artery stenosis show cognitive function decline, and if they experience any changes in cognitive function after carotid endarterectomy (CEA). Cognitive function was examined in 15 patients (12 males and three females, 70.0±6.5 years) with asymptomatic carotid artery stenosis before and 3 months after CEA. Cognitive function was assessed with the Repeatable Battery for the Assessment of Neuropsychological Status (RBANS), two subtests of the Wechsler Adult Intelligence Scale-Revised (WAIS-R 2 subtests), and the Japanese version of National Adult Reading Test (JART). The patients' average scores were compared with the normal average by one-sample t-tests, and the before and after scores were compared with paired t-tests. Changes in each patient were calculated from difference before and after CEA using 95 % confidence intervals. Before surgery, patients showed significant cognitive decline in RBANS total scale and immediate memory, language, and attention. At 3 months after CEA, the total scale and the immediate memory were not significantly different from the normal average. The average total scale score, the immediate memory and attention, and the WAIS-R 2 subtests scores were increased after treatment. Changes in each patient were calculated from the scores before and after CEA. At 3 months after CEA, the rate of increase in RBANS scores were 60.0 % of the patients for immediate memory, 26.7 % for visuospatial/constructional, 33.3 % for language and attention, 26.7 % for delayed memory, 47.7 % for total scale and 26.7 % for WAIS-R 2 subtests. Thus, so-called asymptomatic patients exhibit mild cognitive impairment before surgery, but after CEA, patients recover normal memory abilities.Our findings of mild cognitive dysfunction in asymptomatic patients suggest that they might be symptomatic after all.

内頚動脈狭窄の3D-CTA と 頚動脈内膜剥離術の術中写真

Vol. 12 もやもや病の無症候性微小出血 2013年2月10日

もやもや病は、両側内頚動脈に進行性の狭窄が生じて脳梗塞や脳出血を招く疾患です。小児、成人両者に発生することが特徴で、特に成人で発生することが多い脳出血は患者さんの予後を悪化させることが多く、今後、診断や治療方法をさらに改善することが重要です。

最近、T2*強調MRIが「無症候性微小出血」の検出に有用であることが判明していますが、その臨床的意義については不明な点が多かったのも事実です。 今回、われわれは、この「無症候性微小出血」が成人もやもや病の約30%に認められること、平均3年半の経過観察中に約7%で新たな「無症候性微小出血」が生じること、「無症候性微小出血」の存在が将来の脳出血の予測因子であることを明らかにしました (Kuroda S et al. Stroke 44:516-518, 2013)

詳細は以下のURLをご参照下さい。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23223508

Clinical significance of silent microbleeds is unknown in moyamoya disease. This study was aimed to clarify the incidence, locations, and longitudinal course. This prospective cohort study included 78 nontreated patients with moyamoya disease. The incidence and locations of silent microbleeds were evaluated on T2*-weighted MRI. MR examinations were repeated every 6 or 12 months during a mean follow-up period of 43.1 months. T2*-weighted MRI identified silent microbleeds in 17 (29.3%) of 58 adult patients with moyamoya disease, but in none of 20 pediatric patients. During follow-up periods, de novo silent microbleeds developed in 4 (6.9%) of 58 adult patients. Hemorrhagic stroke occurred in 4 patients (6.9%), all of who had silent microbleeds on initial examination. The presence of silent microbleeds was a significant predictor for subsequent hemorrhagic stroke in adult moyamoya disease (P<0.001). Careful and long-term follow-up of silent microbleeds would be essential to improve their outcome in adult patients with moyamoya disease.

もやもや病の無症候性微小出血の MRI、無症候例、TIA 例、脳出血例を並べた写真

Vol. 11 内頚動脈狭窄症に対する血管内治療 2012年12月28日

内頚動脈狭窄症に対する血行再建術には、手術(内膜剥離術)のほかに血管内治療(ステント留置術)があります。2007年からステント治療にも健康保険が適用されるようになり、治療件数は急速に増えてきています。

鼠径部よりカテーテルを頚動脈に誘導し、バルーン、ステントを用いて狭窄部を拡張させます。血管拡張中に狭窄部から脳血管へ血栓や動脈硬化病変(アテローマプラーク)の破片が飛ばないように、フィルターやバルーンを用いて内頚動脈遠位部を保護します。この治療は局所麻酔ででき、身体の負担が軽い、治療時間が短い(1時間程度)、首に傷が残らないなどのメリットがあります。ただし治療に関わるリスクは手術も血管内治療もほぼ同等です。

内膜剥離術は病変を「摘出する」治療ですが、ステント留置術は「外に押し広げて内腔を確保する」治療です。油の塊のような柔らかいアテローマプラーク(不安定プラーク)に対しては、ステント治療は不向きです。(ステント留置を行ってもステントのメッシュの間からプラークが飛び出してくる可能性があります。)そのため、術前に必ずプラーク MRI や頚動脈エコーを行って、プラークの性状を評価しています。

患者さんごとに手術、血管内治療のどちらが適しているかを十分に検討して、治療法を選択しています。当院におけるステント留置術の周術期虚血性合併症リスクは 2% 以下であり、極めて良好な成績を維持しています。

Carotid artery stenting (CAS) is an effective alternative carotid stenosis treatment in which a stent is placed via a catheter inserted into the groin. Distal embolic protection device is deployed downstream from the lesion to capture debris during the procedure. The stent helps prop the artery open and decreases the chance of it narrowing again. CAS may be used when carotid endarterectomy isn't feasible or is too risky.

頚部動脈造影高度狭窄部の治療前とステント治療後、頚動脈用ステント、遠位塞栓防止用フィルターの写真

Vol. 10 内頚動脈狭窄症に対する手術 2012年12月25日

近年、頚部の内頚動脈狭窄症を有する患者さんが急速に増加しています。この疾患は突然、脳梗塞や一過性脳虚血発作を引き起こす可能性があり注意が必要です。写真の症例は、左大脳の脳梗塞で発症した患者さんです。頚部の左内頚動脈がとても細くなっていて、右内頚動脈と比べても差は歴然としています。そのため、左大脳の脳血流量が極端に低下しています。

この患者さんに対して頚動脈内膜剥離術を実施しました。頚動脈を露出したのち、頚動脈を切開すると「犯人」の動脈硬化病変(アテローマあるいは粥種)が認められます。顕微鏡のもとでアテローマを丁寧に摘出します。内頚動脈狭窄症に対しては、ステントを用いた血管内治療も選択肢の一つで、当科ではそれぞれの患者さんに安全かつ適切な治療法を選択して提供しています。次回は、ステントを用いた血管内治療について解説します。

Internal carotid artery stenosis may cause transient ischemic attack or ischemic stroke due to artery-to-artery embolism or hemodynamic insufficiency. In this case with left internal carotid artery stenosis, carotid endarterectomy was performed under internal shunting. Lipid-rich, necrotic atheroma was completely removed. Postoperative course was uneventful.

MRI と脳血流画像、頚部 MRA、術前マクロ、術中マクロ、摘出標本マクロの写真

Vol. 9 脳動脈瘤に対する血管内治療: コイル塞栓術 2012年10月29日

10月24日掲載の脳神経外科疾患メモvol. 7において、開頭脳動脈瘤クリッピング術の術中写真を掲載しましたが、今回はもう1つの治療法、脳血管内治療(コイル塞栓術)に関して記載します。

クリッピング術は動脈瘤を「外から」つぶす治療ですが、コイル塞栓術は「中から」詰めものをして破れなくする治療です。患者さんには「風船玉をゴルフボールのように固めてしまう治療」と説明しています。

足の付け根の動脈を穿刺して頭部に向けカテーテルを誘導し、細くて柔らかいマイクロカテーテルを脳動脈瘤の中まで慎重に進めます。そして動脈瘤内に、非常に柔らかいプラチナコイルを詰めていきます。正常血管が温存され、かつ動脈瘤内に十分なコイルが留置され、動脈瘤の造影が消失したところで終了です。いずれ動脈瘤の中は血栓化して固まるので、破裂を防ぐことができます。

治療に際しては、瘤内をしっかりと塞栓するだけでなく、正常血管を温存して脳血流を保つことが重要です。そのために、塞栓時にバルーン(風船)カテーテルで正常血管を保護しつつ塞栓することもあります。2010年7月からは、これまで血管内治療に不向きであった頚部の広い動脈瘤に対して、ステント(金属製メッシュ状の筒)を併用することで、正常血管を温存しつつ、動脈瘤内に十分なコイル塞栓を行うことができるようになりました。

画像は、実際の治療前後の血管撮影所見とシェーマです。未破裂脳動脈瘤の多くは血管撮影室で局所麻酔にて行いますが、破裂動脈瘤や複雑な治療を要するものに関しては、手術室で全身麻酔下に行います。当院の手術室には、最新の血管撮影装置(Artis Zeego: SIEMENS社)が設置されています。

Coil embolization is a less invasive treatment for cerebral aneurysms. A tiny catheter is carefully guided through the femoral artery into the aneurysm. Soft platinum coils are deposited through the microcatheter into the aneurysm. The goal of this treatment is to prevent blood flow into the aneurysm sac by filling the aneurysm with coils and thrombus.

術前術後の脳動脈瘤の X 線画像と模式図、コイルとアシスト用ステントの写真

Vol. 8 神経内視鏡手術 2012年10月24日

脳の中心には透明で大変きれいな脳脊髄液に満たされた「脳室」というお部屋が存在しています。脳脊髄液の流れが不良になると発生する水頭症や、脳室の近くに存在する脳腫瘍などに対する治療の際に威力を発揮するのが「神経内視鏡」です。

頭蓋骨にごく小さな穴を開けて脳室の中に内視鏡を挿入することで、脳の中心部に存在する疾患に対して、非常に少ない侵襲で検査や治療を実施することが可能です。大きな開頭術が不要になるので、患者さんにとてもやさしい治療法です。

当科では、日本神経内視鏡学会に認定された二人の技術認定医が日夜、活躍しています。写真は水頭症に対する神経内視鏡手術の実際です。

Neuroendoscopy is a less invasive and useful tool to treat the patients with obstructive hydrocephalus, periventricular tumor, and so on. Photographs shows representative findings in third ventriculostomy for obstructive hydrocephalus.

神経内視鏡で見える画像の写真と挿入している写真

Vol. 7 脳動脈瘤 2012年10月24日

脳動脈瘤は日本人の約5%に発見されると言われています。脳動脈瘤が破裂するとクモ膜下出血をきたします。多くの場合、突然の後頭部痛、意識障害で発症します。

最近の日本におけるコホート研究では、未破裂脳動脈瘤が破裂する危険性は年間0.95%であることが明らかにされました。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1113260

大部分の脳動脈瘤の治療には、①開頭による脳動脈瘤クリッピング術、②血管内手術による脳動脈瘤コイル塞栓術によって将来の破裂を予防する方法が行なわれています。それぞれの治療法には一長一短があり、脳動脈瘤の場所、大きさ、患者さんの年齢、持病などに合わせて選択されます。

写真は、未破裂脳動脈瘤に対してクリップをかけた際の術中写真です。

Rupture of cerebral aneurysm causes subarachnoid hemorrhage, which is often fatal. According to very recent cohort study in Japan, the annual risk of aneurysm rupture is 0.95%. Cerebral aneurysms are usually treated by clipping surgery (photo) or endovascular coiling.

クリップ前とクリップ後の脳動脈瘤の写真

Vol. 6 脳卒中後疼痛のお話 2012年9月30日

脳梗塞あるいは脳出血などの脳卒中ののち、しばらくしてから半身の顔面、躯幹、手足に出現する耐えがたい痛みは「脳卒中後疼痛」と呼ばれています。脳卒中の後遺症の中でも、数多くの患者さんを苦しめている症状の一つです。やけどをしたあとのようなじんじんとした痛みが常に存在し、ものに触れただけでも痛みが増強します。

通常の鎮痛剤は無効で、一部の患者さんでは特殊な薬剤が有効なこともあります。どの薬剤も無効な場合は、大脳の表面に電気刺激を送る「運動野刺激療法」が約半数の患者さんで有効です。

この治療を実施すると、同側の視床のブドウ糖代謝が改善することがPETを用いた研究で判明しています。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21792141

Post-stroke pain is one of severe neurological sequelae after stroke. Drug challenge test (DCT) may be useful to identify the specific drugs to improve it in each patient. Motor cortex stimulation (MCS) is very effective in about half of patients with post-stroke pain. Very recently, MCS has been proven to improve glucose metabolism in the ipsilateral thalamus in patients with post-stroke pain.

運動視野刺激療法-術中ナビケーションと術後 X 線写真

Vol. 5 パーキンソン病と脳深部刺激療法(DBS) 2012年9月11日

パーキンソン病は、手足のふるえやこわばり、歩行障害などをきたす難病で、進行すると著しく日常生活が制限されてしまいます。当院では薬物治療では十分な改善が得られないパーキンソン病を対象に、頭の特定の部位(主に視床下核)に電極を挿入し、電気刺激することにより症状を改善させる手術、脳深部刺激療法(Deep Brain Stimulation: DBS)を行っています。当院では1998年よりこの手術を行っており、2006年には新しい手術装置を導入し、手術件数は50例を超えました。改善の程度には個人差がありますが、満足に歩けなかった方が手術後にはスキップができるようになったり、歩いて旅行に行けるまで改善する例もあります。このことは、新聞やテレビでも報道されています。
http://www.youtube.com/watch?v=YJzgRfk0EyU
http://www.youtube.com/watch?v=xicJx3H49sM&feature=related

当院は、北陸で唯一、「日本定位・機能神経外科学会」から認定を受けている施設です。(技術認定施設は2012年現在、全国29施設)
http://jssfn.umin.ac.jp/information/090710.html

この手術治療は保険適応が認められているものの、北陸ではまだまだ認知度が低いのが現状です。私たちはパーキンソン病でお困りの方が、手術で改善することを知らずに寝たきりになってしまうことがないように、多くの方々にこの治療を知っていただければと思っています。詳細は、当科のホームページをご覧ください。
http://www.med.u-toyama.ac.jp/nsurgery/senshin/stereo.html

脳深部刺激電極を挿入している写真と術後の X 線写真

Vol. 4 もやもや病と過灌流現象 2012年8月21日

もやもや病に対する直接的バイパス術はきわめて有効な治療法ですが、まれならず一時的に血流が流れすぎてしまう過灌流現象に遭遇します。この現象を見落とすと重篤な合併症を招くこともあるので注意が必要です。最近、この現象に関するデータをStroke誌に発表しましたので、興味のある方はご一読下さい。

Direct bypass surgery can rapidly improve cerebral hemodynamics and is a quite useful technique for patients with moyamoya disease. But, it should be reminded that postoperative hyperperfusion can often be observed after surgery. Critical perioperative management would be essential to avoid serious complications. We have recently published our data on this issue in Stroke.

Uchino H, Kuroda S, Hirata K, Shiga T, Houkin K, Tamaki N: Predictors and Clinical Features of Postoperative Hyperperfusion after Surgical Revascularization for Moyamoya Disease - A Serial Single Photon Emission CT/Positron Emission Tomography Study. Stroke August 7, 2012 [Epub ahead of print]

術前後の SPECT 画像と術後の脳血管撮影の写真

成人もやもや病の一例

術前の SPECT では右大脳で脳血流量が高度に低下していたが、術直後から9日目にかけて右大脳に過灌流を認める。脳 MRI ではバイパス2本を介する良好な血流を確認できる。

Adult Case with Moyamoya Disease

Note a marked reduction of cerebral blood flow in the right hemisphere before surgery. Severe hyperperfusion can be observed in the right hemisphere immediately after surgery and at 9 days post-surgery. Postoparative MR angiography reveals a good patency through STA-MCA double anastomosis.

Vol. 3 硬膜動静脈瘻 (dural arteriovenous fistura: dAVF) 2012年8月16日

脳を包む硬膜において、動脈が毛細血管を介さずに直接静脈に流れ込むことにより、様々な臨床症状を呈する疾患です。圧の高い動脈血が、圧の低い静脈に直接流れ込むため、静脈内の圧が高くなり、脳の静脈が逆流することがあります。少し難しい病気ですが、下水道に上水道が直接つながってしまい、排水孔から水が溢れだしたような状態だと思ってください。症状としては頭痛や耳鳴があり、ひどい場合は脳出血を引き起こすこともあります。病変が目の奥の海綿静脈洞に存在する時は、複視(ものが2重に見える)・眼球突出・目の充血といった症状が出る事もあります。

はっきりとした原因はわかっていませんが、先天性のものではなく、外傷やホルモンバランスの異常、静脈洞血栓症、血液凝固能異常、静脈性高血圧などが考えられています。

治療は血管内治療が主流です。罹患静脈洞そのものにカテーテルを通し、動静脈瘻が存在する部分をプラチナコイルで閉塞させます。多くの場合は切ることもなく血管内手術だけでほとんど完全に治すことができます。 全国調査において、発生率は人口10万人当たりに年間0.29人という、まれな疾患ですが、当院では毎年5〜10例、現在までに200例ほどの治療実績があります。

硬膜動静脈瘤の術前後の脳血管撮影の写真

Vol. 2 無症候性もやもや病と AMORE 研究 2012年8月16日

近年、脳MRIの普及によって偶然、発症前のもやもや病が発見される機会が増加しています。しかしながら、無症候性もやもや病に対する治療指針は未だに確立していないのが現状です。

そこで、厚生労働省「ウィリス動脈輪閉塞症の診断・治療に関する研究班」が中心となって、本年1月から8年間の予定で「無症候性もやもや病の予後と治療法の確立をめざした多施設共同研究」がスタートしました。通称、AMORE (アモーレ)研究です。富山大学脳神経外科に事務局が設置されています。

【研究参加施設】

AMORE 研究の参加施設を地図上にプロットした写真

Vol. 1 もやもや病 (moyamoya disease)  2012年8月12日

小児・成人を問わず日本人に多く発生する原因不明の疾患です。

両側内頚動脈の終末部が徐々に閉塞するため、一過性脳虚血発作・脳梗塞や脳出血をきたします。頭痛やけいれんなどで発症することもあります。小児の場合は、泣く、熱いラーメンを食べるなど、過呼吸をきっかけにして手足の力が抜けるなどの発作をきたすことが知られています。

脳血行再建術は、もやもや病による一過性脳虚血発作・脳梗塞を予防する上できわめて有効です。直径1ミリ以下の動脈を顕微鏡下で吻合したり(写真参照)、脳表を筋肉や骨膜で覆うことで、脳循環を改善させることができます。脳血行再建術の脳出血に対する有効性は、現在、国内で臨床試験によって検証中です(JAM Trial)。

顕微鏡下での吻合前、吻合中、吻合後の写真

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