第16回日本神経内視鏡学会 抄録
The 16th Annual Meeting of the Japanese Society for Neuroendoscopy

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第1日目、12月4日(金)A 会場(3階 メインホール) 11:10〜12:00

特別講演 1

座長: 遠藤俊郎

1A-SL1

渡邊 剛 先生の顔写真

これからの標準術式としてのロボット心臓手術

渡邊 剛 (WATANABE Go) 先生

金沢大学大学院医学系研究科 心肺病態制御学 教授

食生活の欧米化と人口の高齢化に伴って、本邦においての心臓手術対象患者は増加している。また循環器内科のインターベンションと各種デバイスの発達は目覚 ましく、従来外科疾患だったものが循環器内科で治療可能となってきている。外科領域でのこの10年間の最も大きなトピックスはロボット手術の出現である。

da Vinci surgical system

 1994年より開発が進められていた外科手術用ロボット“da Vinci surgical system(以下ダ・ヴィンチ)は1998年にベールを脱いだ。 現在“ダ・ヴィンチ”を用いて行われた手術は、全世界で28万件以上が報告されてい る。そのうち泌尿器科が最も多く20万例以上(約70%)、そして産婦人科、並びに外科手術では消化器外科などでも同様に行われており、心臓手術でも2万 例以上が行われている。もともと冠動脈吻合のような奥深い術野での巧緻な作業を得意とすることを旗印として開発された機械であるので、かなり細かい作業が できる点が優れている。機構としては7自由度のサージカルアームを持ち、3次元の内視鏡と組み合わせることによりかなり巧緻な作業を可能とする。

 心臓疾患への“ダ・ヴィンチ”は1998年にドイツのライプツィヒ大学のDr. Mohr並びにパリ大学のCarpentierらによって2000年に発表された。我々は1999年、世界に先駆けて完全内視鏡下に冠動脈吻合を行い、 LANCET誌に報告した。この頃より完全内視鏡を用いた冠動脈バイパス術の報告が相次ぎ、現在では多枝病変に対してもバイパス手術をする施設が出てきて いる。完全内視鏡の利点としては、開胸や胸骨切開を必要とせず、また術後のADLは2カ月の胸骨の完治を待たずして術前と同様なADLが期待できるので、 完全Quality Of Lifeは極めて良い。我々の試算によると、胸骨正中切開の手術後の術前の仕事への復帰はほぼ2〜3か月かかるが、“ダ・ヴィンチ”を用いた完全内視鏡手 術であれば術後3日で退院し、1週間でほぼ完全に肉体労働を含めた社会復帰が可能となっている。この大きなQOLは内視鏡手術の特徴的なもので、何事にも 代えがたい。多くの外科医も誤解しているが、単に入院期間や切開線の長さの比較では決まらないQOLについてはより良く認識すべきと思っている。また美容 上の利点も欠かせない。特に女性であれば胸骨縦切開、並びに開胸などの切開をしなくても済むために、正面から見る限りほとんど傷がわからない点である。結 果的には医療費の削減につながる。

また弁膜疾患においてもロボットは大きな威力を発揮する。僧帽弁手術は従来、正中切開でおこなわれていた。僧帽弁形成術は“ダ・ヴィンチ”の得意とする心 臓手術の1つである。深く狭い術野で弁形成を行い、弁下部病変の観察にも威力を発揮する。アメリカなどでは将来的には僧帽弁の形成術はほとんどが“ダ・ ヴィンチ”によってほぼ行えるであろう。その他、左房粘液腫や心房中隔欠損などより平易な手術に使われることも多く、その有用性が次第に報告されてきてい る。我々も僧帽弁閉鎖不全並びにバイパス手術、そして左房粘液腫など70例余に用いてその有用性を報告して来たが今後その発展が望まれる。

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