第38回日本小児神経外科学会
The 38th Annual Meeting of the Japanese Society for Pediatric Neurosurgery

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第1日目、6月4日(金)A 会場(3階 メインホール)13:45〜14:30

特別講演 1: 戸苅 創 先生

座長: 遠藤俊郎

SL1

地球温暖化と周産期の脳室周囲白質軟化症

戸苅 創

名古屋市立大学大学院医学研究科 新生児小児医学分野

この数年間、世界中に地球温暖化の主たる原因は人類が人工的に排出する炭酸ガスであるとのまことしやかな情報が駆け巡っている。しかし、二酸化炭素を 1ppm 削減することで防ぐことの出来る気温上昇は僅か 0.004℃ に過ぎず、二酸化炭素を地球温暖化の主犯とするのは誤りのようである。一方で、炭酸ガスの排出を削減すること自体は、生物多様性の保持、空気、水などの環境汚染の防止、地球規模の環境破壊、エコロジーの推進、等々、極めて重要で喫緊の必須課題であることは明らかである。その意味では、地球規模での二酸化炭素濃度の測定(モニタリング)が極めて重要であることに異論はない。

ところで、周産期の母体静脈血炭酸ガス分圧は臍帯血炭酸ガス分圧に正の相関を示し、母体が過呼吸等で低炭酸ガス血症となれば胎児も同様に低炭酸ガス血症を呈する。胎児が Hypoxia や Acidosis に陥った場合に母体が低炭酸ガス血症を発症すると Hypoxia や Acidosis をさらに助長することが解っている。そのメカニズムの一つに、低炭酸ガス血症時の脳血流低下が関与している可能性がある。ヒト脳血流が、体血圧の変動に対して一定の範囲内では恒常的に(S字曲線)保たれているのに対し(血圧の多少の変動があっても脳血流を一定に保ち脳を護っている)、炭酸ガス分圧とは直線的に正の相関を示す。これは炭酸ガスがセンサーとなり、低酸素状態と同時に招来する高炭酸ガス状態を逸早く検知して脳血流を増やすことで脳を護るように設計されているからと言われる。このことは、逆に、過呼吸や過剰な人工換気療法の結果必然的に生じた低炭酸ガス血症が容易に脳虚血をもたらすことを示している。そこに人工換気の陽圧による心拍出量の低下、ひいては低血圧や循環障害が重層されればさらに脳虚血が助長される。

PVL(Periventricular leukomalacia: 脳室周囲白質軟化症)は、低出生体重児の 5% 〜 8% に発症し後に脳性麻痺(CP)を呈する疾患であるが、その主体は脳血流低下に伴う脳虚血とされており、そこには循環障害や低炭酸ガス血症が関与している。地球規模での炭酸ガスのモニタリングとともに、個体規模での炭酸ガスのモニタリングの重要性が再び注目され始めている。

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