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神経内視鏡と水頭症治療

1. はじめに

頭の中には、大脳小脳と言った脳組織がありますね。その他に血管や神経もあります。これは皆さんご存知でしょう。ところで頭の中に水が存在することは知っておられましたか。脳は、脳脊髄液という水の中に浮いており、さらに脳の中には脳室という脳脊髄液の貯留する部屋も存在します。

水頭症とは、頭の中に水(脳脊髄液)が過剰に貯留した状態のことを言います。実際には脳脊髄液の産生・循環・吸収などの異常により、「脳室が普通より大きくなった状態」を指します。脳脊髄液が正常以上に産生されその吸収が追いつかないとき、あるいは何らかの原因で(生まれつき、あるいは生後二次的に)脳脊髄液の循環路が狭くなったり、つまったりすることによって、脳内に過剰に脳脊髄液が貯留して、水頭症になります。

2. 水頭症の原因

先に述べましたように、水頭症は何らかの原因で脳室内に過剰の脳脊髄液が貯留した状態を言います。更にその病態から非交通性水頭症と交通性水頭症とに分けられます。正常の脳脊髄液の循環に通過障害をきたしたものが非交通性水頭症で、脳脊髄液の吸収が障害されているものが交通性水頭症です。

水頭症の原因を年齢別に見てみましょう。主な代表的疾患を示します。

私達は、患者さんの臨床症状、CTMRIなどの画像所見から水頭症と診断します。水頭症の症状は様々です。頭蓋骨縫合が閉鎖していない乳幼児期に水頭症を呈すると、頭囲の拡大つまり頭そのものがが大きくなってきます。またその他に一般的な症状としては頭蓋内圧亢進症状(頭痛嘔吐鬱血乳頭)さらには意識障害などが出現します。

3. 水頭症の治療

それでは水頭症はどのように治療するのでしょうか。

水頭症に対しては外科的治療が主流です。いくつかの手術法がありますが、最もポピュラーな方法はシャント(shunt)です。シャントとは短絡という意味で、脳室内に過剰に貯留した脳脊髄液を身体の別の場所に管(チューブ)で短絡させて吸収させようとするものです。短絡先として最もよく使われるのはお腹です。脳室とお腹を結ぶシャントを正式には脳室腹腔短絡術(シャント術)と言います。これとは別に、脳室と心臓をつなぐシャント術もあります。

シャントは確かに、簡便で有用な治療法であります。しかしその反面、感染、シャント機能不全(チューブがつまり脳脊髄液が流れなくなる)、子供であれば成長に伴い再手術が必要となるなどのいくつかの問題があります。ですから、シャントなしで水頭症を治療することはできないかということが長い間の課題でありました。そんな夢を実現させてくれたのが、神経内視鏡的第三脳室底開窓術という新しい手術法です。

神経内視鏡、聞きなれない言葉だと思います。胃カメラはお解りですね。その脳版の脳カメラです。胃カメラを更に縮小した様な形をしており、直径4ミリの細い管を通じて、 脳内部の観察はもちろん、脳の腫瘍をとったりなどの手術も可能となりました。 現在のところでは、適応出来る疾患は限られていますが、従来の大きな皮膚切開で開頭(大きく骨を切る)で行っていた手術が、たった数センチの皮膚切開による穿頭で可能となった、非侵襲的な最先端医療技術です。

ファイバースコープの写真
ファイバースコープ
硬性鏡の写真
硬性鏡

神経内視鏡的第三脳室底開窓術は、内視鏡で覗きながら第三脳室の底に穴をあけて脳室内に貯まっていた脳脊髄液を脳表に流れるようします。いわばバイパスをつくるわけです。バイパスを通過した脳脊髄液は正常の循環路に入り吸収されていきます。日本でも、この手術は、この数年ほどのあいだに急速に広まってきています。熟練した脳神経外科医の手によって手術されれば、まず合併症もなく、安全で、十分な効果が得られます。

神経内視鏡の術中写真1側脳室からモンロー孔ごしに見える第三脳室底
神経内視鏡の術中写真2第三脳室底
神経内視鏡の術中写真3第三脳室底をバルーンにて穿孔
神経内視鏡の術中写真4第三脳室底を穿孔したバルーンを膨張させて穴を拡げる
神経内視鏡の術中写真5第三脳室底に開けた窓からくも膜下腔が見える

しかし、残念ながらこの方法は全ての水頭症に行える手術ではありません。この手術が有効であるのは、正常の脳脊髄液の循環路が障害された非交通性水頭症の症例に限られます。脳脊髄液の吸収が障害されている交通性水頭症ではやはりシャントが必要です。また年齢の条件もあり、われわれの経験では2歳以下の症例ではまずシャントの方が確実です(あけた穴が閉塞し再手術が必要になる)。

ただ、今まで何回もシャント再建術を受けている患者さんの中にも、この神経内視鏡的第三脳室底開窓術によりシャント、ひいては水頭症そのものから永久に解放される方が少なからず存在するはずです。ぜひお近くの脳神経外科専門医に一度ご相談ください。

4. その他

ここまで、水頭症を中心にお話してきましたが、神経内視鏡は水頭症だけでなく、脳腫瘍(特に脳室内腫瘍)、くも膜嚢胞、また脳出血などの疾患の治療にも威力を発揮します。less invasive(非侵襲的)、確実をテーマに日々努力しております。

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