富山大学 > 医学部 > 脳神経外科学 > 先進医療

脳血管内治療

脳血管内治療中の写真。術者がモニターを見ながらカテーテル操作をしている。

脳神経外科の治療というと、おそらくメスで頭の皮を切ってドリルで頭蓋骨を開ける手術を思い浮かべられる方も少なくないと思うのですが、脳血管内治療というのは、脳神経外科の治療の中で頭を切らずに治療をする一分野のことです。

「血管内」というように、血管の内側、つまり血管の中に細い管 (カテーテル)を入れてゆき、その管を通して治療を行う方法です。従って、血管の中に管をいれる時に刺す針の痛みだけで、その後はあまり痛みは感じることはなく、手術に比べて侵襲の少ない治療法です。

脳血管内治療は、この20年あまりの間に目覚ましい発展をとげた比較的新しい治療法で、現在でもより優れた方法や器材が開発されつつあります。

治療の対象となるのは、脳神経外科で扱う脳動脈瘤、脳梗塞、脳動静脈奇形、硬膜動静脈瘻、脳腫瘍などの病気です。ただし、これらの病気全てに脳血管内治療を行えるわけではありません。例えば、脳動脈瘤でも、脳血管内治療に適した脳動脈瘤もあれば、開頭手術に適した脳動脈瘤もあります。

さて、それでは脳血管内治療の中身を簡単に説明いたします。

【脳動脈瘤 (のうどうみゃくりゅう)】

くも膜下出血という病気の恐ろしさはテレビや新聞・雑誌などで最近よく取り上げられますので、皆さんもご存知かと思います。脳の動脈にコブ(瘤)ができ、これが破れて頭の中に出血をおこす病気で、動脈瘤は破れるまでは何の症状もない場合がほとんどです。最近では脳ドックが少しずつ広まりつつあり、動脈瘤が破裂する前に運良く発見される場合もでてきました。

動脈瘤の治療は、原則的には開頭手術で脳血管にできた膨らんだ動脈瘤の首根っこをクリップで挟む方法です。しかし、他の病気などで体が弱って開頭手術に耐えられない状態の患者さんや、動脈瘤そのものの大きさや部位から手術が難しいと思われる場合には、血管内治療を行います。足の付け根から管を入れて、そこから直径1ミリ以下の細い管を脳動脈瘤の中まで進めます。この管の中からプラチナ製の軟らかいコイルを動脈瘤の中に詰めて、動脈瘤が破裂しないように固めてしまう方法です。アメリカ合衆国では、この方法が脳動脈瘤の治療の4割程度を占めるようになってきています。

【 脳梗塞 (のうこうそく) 】

脳の血管がつまると、脳細胞に酸素や栄養が行かなくなり、数時間で脳細胞は機能を停止してしまいます。これが脳梗塞という病気で、その結果として半身麻痺や言語障害を後遺症として残すことになります。

この病気に対しても血管内治療が威力を発揮する場合があります。やはり足の付け根から管を入れ、そこから細い管をつまった血管に通して、血栓を溶かす治療です。しかし、これは時間との厳しい勝負を要し、症状が出てから通常は3時間以内に血液の流れを元に戻してやらねばなりません。それ以後に詰まった血管が再開通すると、脳梗塞になってしまった所に出血を起こしたりして(出血性梗塞)、生命にかかわる場合も少なくありません。また治療を早く始めても血栓が固くて溶けない場合もあり、難しい治療です。しかし、うまくいった場合には、麻痺していた手足が再び動き出し、出なかった言葉が再び出るようになり、劇的な効果を上げることができます。

また、脳動脈やその根元にある頚動脈が細くなって脳へ流れる血液が少なくなっている場合には、先端にバルーン(風船)のついた管をやはり足の付け根から入れて、バルーンを膨らませて細くなった部分を広げます。さらに、頚動脈などには治療後に再び狭くなってこないように、ステントという金属製の網でできた枠組みを血管の内側からはめ込むこともあります。血管の壁に付いた血栓が剥がれてその先の血管をふさいでしまわないように、非常に慎重な操作が必要になります。

【 脳動静脈奇形 (のうどうじょうみゃくきけい) 】

母親のお腹の中にいる胎児の時期に、脳の血管ができてくる過程で動脈と静脈が絡んでつながってカタマリになってしまう脳血管の奇形を脳動静脈奇形といいます。その異常な血管の壁が破れて脳出血をおこしたり、けいれん発作をおこしたりします。

この病気は血管のかたまりですから、いきなり切ると大量の出血を覚悟しなければなりません。そこで手術の前にこの血管のかたまりに接着剤や糸のようなコイルを流し込んで固めてしまうのが脳血管内治療の役割です。やはり足の付け根から管を入れ、脳にある異常血管のかたまりの中まで細い管を進めて固めます。

手術の前にこの脳血管内治療を行っておくと、手術中の出血量が少なくて済み、安全に手術を行うことができます。最近は手術ばかりでなく、ガンマナイフという特別な放射線療法も行われることがありますが、この場合も血管のかたまりをできるだけ小さくするためにまず血管内治療を行うと効果的です。

【 硬膜動静脈瘻 (こうまくどうじょうみゃくろう)】

脳動静脈奇形に似た病気で硬膜動静脈瘻という病気があります。これが目の奥にできると目が飛び出して赤く腫れ上がったり、ひどい場合は失明したり脳出血をおこしたりすることもあります。また、後頭部にできると脈拍に合わせた耳鳴りがしたり、ひどくなるとやはり脳出血や脳梗塞をおこしたりします。少し難しい病気ですが、下水道に上水道がつながってしまい、排水孔から水が溢れだしたような状態だと思ってください。治療は太い静脈洞そのものにカテーテルを通し、そこを金属のコイルでふさいでしまいます。多くの場合は切ることもなく血管内手術だけで殆ど完全に治すことができます。

【 脳腫瘍 (のうしゅよう) 】

脳腫瘍に対しても脳血管内治療が活躍する場面があります。脳腫瘍には多数の血管が入り込んでいるものがあり、このような腫瘍を手術する場合には、やはり前もってその血管につめものをすることによって、手術中の出血を減らし、安全で容易に手術を行うことができます。

また、腫瘍に入り込む動脈だけに直接カテーテルを入れて、そこから非常に濃い濃度の抗腫瘍剤を注入する方法もあります。抗腫瘍剤を静脈に点滴するよりも、少ない量で非常に高い効果が得られます。

この治療を受けられる方は担当医と十分相談された上、その利点・欠点などよく理解して頂くことが必要です。


脳神経外科学 > 先進医療 | 附属病院診療科 | スタッフ紹介 | 研修施設 | その他

nsurgery@med.u-toyama.ac.jp