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経鼻的下垂体腫瘍手術

1. 下垂体腫瘍

成人に好発し、原発性脳腫瘍の約16%をしめる腫瘍(原発性脳腫瘍の第3位)です。良性腫瘍であることが多く、予後は非常に良好で治癒も可能な疾患です。症状はホルモン過剰分泌によるホルモン異常症候群(機能性下垂体腫瘍)と腫瘍発育による局所圧迫症状があります。

下垂体腫瘍の MRI下垂体腫瘍のMRI

I. 機能性下垂体腫瘍

乳汁分泌無月経症候群や不妊症の原因として産婦人科で発見される症例(高プロラクチン血症)や糖尿病・高血圧の原因の精査中に内科で発見される症例(先端肥大症、クッシング病)が多く存在します。

II. 非機能性下垂体腫瘍

腫瘍が大きくなって視神経交叉を圧迫するために視野視力障害をきたし、眼科で発見される症例が多く存在します。また、腫瘍内出血をきたすことも多く、比較的急激な視機能障害で発症する症例も存在します。

2. 下垂体腫瘍に対する治療

I. 手術的治療

下垂体腫瘍に対する手術は、従来、口腔内の粘膜を切開し、鼻腔に入る口唇下到達法 (sublabial approach) が主流でした。現在われわれ富山大学脳神経外科では、患者さんの鼻の穴から直接進入して腫瘍の摘出を行う経鼻的手術を採用しています。この方法では、術後の口腔の違和感も無く、鼻内タンポンの挿入期間も短くすることができるため、治療に伴う身体的負担を軽減することができます。

右鼻腔より頭蓋底へアプローチ中の術中写真右鼻腔より頭蓋底へアプローチ
頭蓋底部の腫瘍の術中写真頭蓋底部の腫瘍
腫瘍摘出後の正常下垂体の術中写真腫瘍摘出後の正常下垂体

II. その他の治療法

腫瘍は視神経および視床下部のすぐ下方に存在し、また、下垂体の左右近傍には眼球運動や顔面の感覚を支配する神経や大脳を栄養する内頸動脈が存在する海綿静脈洞が存在します。腫瘍は良性であることが多いので、手術的に摘出することで完全に治すことが可能です。しかし、その発生部位の特異性から、摘出手術の際に視機能に関わる脳神経や視床下部、内頸動脈や穿通動脈に影響がおよび、術後にさまざまな程度の合併症(軽度の視機能障害から麻痺、失語、認知症などの重篤な神経学的後遺症まで)をきたすことがあります。そこでわれわれは、下垂体腫瘍に対しては、術後の後遺症の発生等による患者様の生活の質の低下を防ぐために、経鼻的に腫瘍の被膜内摘出を行い、上方伸展部位や海綿静脈洞へ伸展した部位は意図的に残すように手術治療を行なっております。その後、取り残した部位の大きさに応じて、定位的放射線治療(サイバーナイフ治療)を追加する、化学療法(薬による治療)を行なうなどの方法から、患者様に最適と考えられる治療法を選択させて頂きます。

3. 日本間脳下垂体腫瘍学会「経蝶形骨下垂体手術見学実習可能施設」

富山大学脳神経外科では2001年以降、上述のような治療方針で下垂体腫瘍に対する治療を行い、これまでに約200例の手術を行ってきました。現在では年間25例の手術症例数を目安として日本間脳下垂体腫瘍学会より認定される「経蝶形骨下垂体手術見学実習可能施設」として学会ウェブページにも掲載されています。

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