97年6月号 第5号

 そろそろ梅雨時。ジメジメしてカビの季節でもあります。このカビもアレルギーの原因(アレルゲン)になることがあるってご存じでしたか?さて今月は食物アレルギー児におこったちょっとした事件がテーマです。

最近の話題「食物アレルギー児は薬にご注意?!」

 ある日の午後、外来の看護婦さんから医局に電話がありました。「もしもし、下痢でグッタリしているお子さんが受診を希望しておられます」とのこと。「下痢がひどくて脱水にでもなったのかな?どうぞ来てもらってください」と返事をしました。しばらくして患者さんが来られたというので外来に行くと、アトピー性皮膚炎で外来通院中の女の赤ちゃん(生後7カ月)が元気なくベッドに横たわっていました。それを見て「ただの脱水ではないな」と思いながら話を聞くと、2ー3日前から下痢や嘔吐があってその日の午前中に近くの病院で点滴を受け、もらった下痢止めの薬をお昼に飲んだ10分後にゼーゼーが始まり、その後ぐったりして動かなくなったということでした。さっそくその先生に電話で治療内容を伺いました。「点滴の中身は大丈夫そうだし...、下痢止めのタンナルビンはよく使う薬だし...。あっ、牛乳アレルギー児のなかにはタンナルビンでアレルギー反応をおこす者がいるぞ。」と思い当たり、治療によってその日の夕方までには症状は改善しました。
 これは牛乳アレルギー児タンナルビンという下痢止めの薬にアレルギー反応をおこしてショックに陥った例です。これは単なるペニシリンショックなどの薬アレルギーとは違い、薬の主成分であるタンニン酸ではなく、安定剤として用いられるカゼインという牛乳から抽出された成分にアレルギー反応をおこしているので、「薬アレルギー」ではなくて言わば「食物アレルギー」なのです。同じようなことは卵アレルギー児に対するリゾチーム(商品名ノイチーム、レフトーゼなど)、ゼラチンアレルギー児に対する予防注射という形で起こり得ます。しかし、食物アレルギー児が全てこのようになるわけではなく、それぞれの食べ物をとった直後から30分以内に蕁麻疹、ゼーゼー、嘔吐、ショックなどの全身症状を呈する人に限られています。これらの症状をおこしたことがある人、厳格な食事制限をしている人、それぞれの食べ物に対するRASTスコアが4以上の人は外来担当医にご相談下さい。

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 このコーナーでは医師や看護婦が何気なく使っている、いわゆる専門用語について簡単に説明します。肥満細胞は気管支粘膜の直下や皮膚の中に潜んでいて、その表面にIgE(第3号)というアレルゲン(第2号)に対する窓を持っています。外から侵入してきたアレルゲンはIgEを介して肥満細胞と結合します。すると細胞が活性化され、細胞内に蓄えられてたヒスタミンなど(化学伝達物質と呼ばれています)を細胞外に放出します。これらの物質が喘息発作や皮膚の痒みなどのアレルギー反応を引き起こします。多くの抗アレルギー薬はこの肥満細胞の活性化を抑制します。


富山医科薬科大学小児科アレルギー外来

last modified 6.18.97
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