99年11・12月号 第31号

 朝晩の風の涼しさに秋の深まりを感じるようになってきました。「読書の秋」や「食欲の秋」などと、秋には色々な形容詞がつきますが、医者の世界では「学会の秋」というぐらいに毎年秋には数多くの学会が開催されます。そのためと言えば言い訳になりますが、今回は9・10月号となってしまいました。ところで、今回のテーマは「喘息の寛解」についてです。

最近の話題「気管支の瘢痕、リモデリング」

  「リモデリング」とは聞き慣れない言葉だと思います。簡単に説明しますと「傷ついた状態から元の状態に戻る過程あるいはその結果」ということです。喘息では、アレルギー反応によって気管支の平滑筋が収縮し(=喘息発作)、それと同時に気管支粘膜が傷ついてしまいます(=炎症やただれ)。喘息が発症したばかりの頃は、発作で傷ついた気管支は一旦完全に治癒して元の状態に戻ると思われますが、喘息発作を繰り返していると治りかけた傷がまた障害を受けて、傷は完全には治らなくなり、最終的には瘢痕化してきます。皮膚に軽い傷がつくと普通はきれいに治ります。ところが、治りかけに繰返し引っ掻いたり、カサブタを無理やり剥したりしていると、傷はきれいに治らず瘢が残ってしまいます。これと同じ様なことが喘息では気管支粘膜でおこっていると考えられています。実際には、気管支粘膜の表面を被っている気道上皮細胞が傷つき、その直下にある基底膜層というところが繊維化をおこして厚くなり、そのために気管支自体が伸び縮みしづらく(=固く)なります。さらに、その肥厚は内側に向かっているので、気管支の内径が小さくなり(図、下段)、慢性的な末梢気道の軽度閉塞状態があるとされます。このような状態にならないためにも、喘息は早めに治したほうが良いと思われますが、最近では吸入性ステロイドがその治療に有効であるという報告もでてきています。

?? 一部訂正

 前号(第30号)の本文中で「2年以上喘息発作がなければ寛解」 と書きましたが、最近新たに設定された小児喘息予後(転帰)判定基準と一部異なっていましたので訂正します。この基準では、1)機能的治癒:呼吸機能検査と気道過敏性テストが健常人と同等に回復している場合、2)臨床的治癒:無治療・無症状の状態が5年以上続いている場合、3)寛解:無治療・無症状になった時点から寛解とし、寛解1年、2年、3年、4年と表現する、となっています。前号での表現は、新しい基準では「寛解2年以上」となりますが、将来の予後についての内容には誤りはありませんので、ご安心を。それにしても、5年以上無症状でようやく臨床的治癒とは、やはり長いものですが、これが喘息の再発のしやすさを物語っているものとも思われます。機能的治癒を確認するためにも、きちんと検査を受けましょう!


富山医科薬科大学小児科アレルギー外来

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