2000年3月号 第34号

雪の多かった2月も終わり、ようやく春の兆しが感じられるようになってきました。今回は、前回同様スパイロメーターを用いた肺機能検査についてさらに解説します。また、先日アメリカのアレルギー学会に参加してきましたので、その時の話題をトピックスとしてお届けします。

今月の話題「呼吸機能検査 気管支拡張剤への反応性」

 図に示したように、気管支拡張剤を吸入すると呼吸機能(第33号)が改善することは喘息発作時では一般的なことです。しかし、外来に来られる患者さんで最近調子が良いといっている人でも、このように気管支拡張剤によく反応する人がいます。喘息でない人は普段から100%の状態ですから、いくら気管支拡張剤を吸入してもさらに肺機能が改善することはないですが、喘息患者さんの中には自分では100%のつもりでもこうして調べてみると実は80%以下の状態である人が結構おられます。日々のピークフロー値(第3号)を測定したり、気道過敏性検査(第25号)をしたりと、いろいろな方法を用いて現在の自分の状態を把握することは、現在の治療が自分にとって十分であるのか、あるいは足りないのかを判断する大切な材料になります。ただ、この検査結果を見て自分には気管支拡張剤の吸入がまだまだ足りないと思ってしまわないでください。気管支拡張剤は、喘息発作時には大事なお薬ですが、根本的な治療には適さないものです。抗アレルギー剤や吸入性ステロイドなど、気道の炎症を改善させる薬剤(第32号)が必要です。

トピックス 抗IgE抗体療法

 最近の遺伝子工学技術を駆使した薬物が、ついにアレルギーの分野でも登場するかもしれません。アレルギー性疾患では、血液中のIgE(第3号)が健常人に比して高値であり、このIgEを介してダニなど種々のアレルゲンによるアレルギー反応が体内で惹起されることが知られています。そのIgEに対する抗体を遺伝子工学で人工的に作成し、それを生体内に静脈注射するというものです。欧米では臨床治験が既に始められており、この抗体を注射すると血液中のIgE値は健常人と変わらないレベルになるそうです。しかし、実際の治療では月に1〜2回静脈注射しなければならず、さらに生涯打ち続けなければならないかどうかも未解決です。このように解決しなければならない問題点も多いようですが、これはすごい技術革新です。


富山医科薬科大学小児科アレルギー外来

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