2001年10,11月 第50号

 喘息の患者さんにとっては、今年の秋は例年よりもすこし辛いものであったようで、発作をおこして救急受診される頻度が多かったようです。そんな中、テオフィリン製剤の安全性を疑問視する意見が報道されました。いろいろお問い合わせが多かったので、今回はそれに関する内容です。

今月の話題「テオフィリンは危険な薬?」

 先日、ある新聞にテオフィリン製剤による副作用に関する記事が掲載されました。ご覧になった方もおられると思いますが、内容は以下のようなものでした。「喘息と診断された子供がテオフィリン製剤を処方され、その後痙攣が止まらなくなり、最終的には脳に重度の障害を残した。これは、テオフィリン製剤という危険なお薬を処方したために起こったもので、喘息の治療には用いるべきではない。現にアメリカなどでは、喘息の治療では一般的には用いられていない。」という内容のものでした。テオフィリン製剤とは、「テオドール」や「テオロング」といった商品名のお薬のことですが、この記事を読まれた保護者の方から、「自分の子供は以前よりこのお薬を内服しているが大丈夫だろうか」などのご質問を受けました。
 確かに、テオフィリン製剤はその血中濃度が上がりすぎて、図に示すように20μg/ml以上になると不機嫌や痙攣などの神経症状がでてくる可能性があります。しかし、医師が一般的に用いている投与量では、このような副作用がでることは非常に稀です。ただ、図を見てお気づきのことと思いますが、有効治療域と副作用が出てくる濃度は比較的近いために、ある程度の血液濃度の変化で副作用が出てくる可能性があります。そのため、このお薬を用いる時には、いくつかの点に気をつけなければなりません。まず、乳幼児(特に生後6カ月未満)では、発熱や脱水などで先程の血中濃度が上昇することがあることから、これらの症状がある時には注意が必要です。また、いくつかの抗生物質(エリスロマイシンやクラリスロマイシン、第21号)の併用はテオフィリンの血中濃度を上げる可能性がありますから、その点も要注意です。さらに、熱性痙攣やてんかんなどの神経疾患を有するお子さんでは、低めの血中濃度でも痙攣などの神経症状を誘発する可能性が高くなることも覚えておく必要があります。これらの事実から、現在アレルギー疾患をよく診ている医師は、テオフィリン製剤の投与量は低めに設定し、効果が不十分な場合には安易に投与量を増やすのではなく、他の薬剤との併用を考慮したり、血中濃度を測定した上ではじめて投与量を増やしたりしています。
 アメリカでは、確かにテオフィリン製剤をごく軽症の喘息に使うことはせず、まずβ刺激薬の繰り返す吸入やステロイド内服を行い、、軽〜中等症以上の喘息児で吸入ステロイドの効果が十分でない例にテオフィリン製剤を用いています。個人的な考え方では、欧米人は吸入を、また日本人は内服薬を好む傾向があり、そのために我が国では内服のテオフィリン製剤がよく使われるのではないかと思います。いずれにしましても、上記ような注意を心がけておれば不幸な副作用につながることはないと思います。どのような薬もそうですが、細心の注意をはらって治療計画を立てることで、不幸な副作用を未然に防ぐことは可能と思われますが、ご心配のときには遠慮なく主治医にご相談下さい。


富山医科薬科大学小児科アレルギー外来

last modified 11.1.01
maintained by Yuichi Adachi