2002年3月・4月 第54号

 例年にない早咲きの桜にちょっとびっくりしながら迎えた4月。入学や進級と、新しい季節の始まりです。今回のテーマは、「本当の薬の効果」についてです。

今月の話題「この薬は効かない?」

 現在、医学や薬学の進歩のお蔭で実に多くの喘息治療薬が市販されています。そして、その使い方に関してはガイドラインが作成され、マニュアル通りに治療すれば、理論的には多くの患者さんの症状をコントロールすることができるはずです。ところが、現実には実に多くの患者さんが未だに喘息の発作で苦労しています。このような患者さんは大きく2つのグループに分けられます。ひとつはいずれの治療にも完全には反応してくれないタイプ(いわゆる重症型)で、もうひとつは治療が計画通りに運ばないためになかなか良くならないタイプです。薬剤そのものの効果は、市販されるまでの臨床試験である程度わかっています(薬自体の効果)。しかし、この場合には試験の対象になった患者さんは医師の方から見れば理想的な患者さんで、試験期間中は全員がきちんと服薬してくれます(服薬率はほぼ100%)。このような理想的な環境で行なわれた試験の結果、薬剤Aは喘息の患者さんの80%に、薬剤Bは60%に有効であるという結果が得られたとします。この結果では明らかに薬剤Aのほうが良い薬なのですが、この2剤を一般の人に投与してみたところ、なんらかの理由で(例えば飲みにくいとか)薬剤Aの服薬率が50%(半分の人しかきちんと服用してくれない)で薬剤Bの服薬率が80%であったとすると、なんと実際の薬剤の効果は逆転してしまいます。このように、真の薬剤の効果はいかにきちんと服薬するかによって決まってくるのです。そのために、服薬の回数は2回より1回の方が、また吸入方法は難しくないほうが良いようです。アレルギー外来に通院してこられる患者さんのなかには、調子の悪い時だけきちんと服用して後は不規則にしか服用していないという人が結構多くおられます。治療する側からみれば、こちらが使いたい薬剤が効かないために良くならないのか、それともきちんと服用しないためによくならないのか、さっぱりわからず次の方法へと変更もできません。内服薬も吸入薬もきちんと服用しましょう。また、服用が不規則な時には正直にお教え下さい。一緒に良い方法を考えましょう。
今年のアメリカ・アレルギー学会の話題
毎年春に開催されるアメリカ・アレルギー学会に今年も参加してきました。今年はニューヨークで開かれたのですが、半年前にあの大惨事があったとは思えないぐらいに平穏で活気にあふれる街でした。今年の話題は、昨年と同様に分子生物学の手法を用いた抗体療法(体内で増加しているアレルギーを引き起こす物質をやっつけてしまう抗体を投与する治療法)などが話題になっていました。また、最近提唱された「清潔過ぎる環境がアレルギーを作る」という考え方に関する議論も活発に行なわれておりました。学問の進歩は実に目覚しいものがあります。

編集後記:とても短い時間で復興しつつあるニューヨーク。その生命力とでも呼ぶべき街の回復力に驚嘆するばかりでした。(You)

富山医科薬科大学小児科アレルギー外来

last modified 23.4.02
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