アレルギー外来ニュース 平成14年8,9月号

2002年8,9月 第57号

 長い夏もようやく終わり、そろそろ稲刈り、そして稲藁燃やしの頃となりました。秋は運動会や遠足の季節でもあり、気温や気圧の変化と一緒になって、いよいよ喘息シーズン到来といったところでしょうか。
今回は、古くて新しい薬である気管支拡張剤についてです。

今月の話題「気管支拡張剤は両刃の剣」

 気管支拡張剤(別名、β(べーた)刺激薬)は、その名のとおり発作で収縮した気管支を拡張させる効果があります。以前(第40号)お示ししたように、気管支拡張剤の投与方法には吸入・内服・貼付の3通りがあり、喘息発作の治療には欠かせないものです。そのせいか、種類も豊富でメプチン、ベネトリン、ホクナリン(テープ)など名前をお聞きになったことも多いと思います。しかし、このお薬を長期間使用する場合には、表に示したように気をつけなければいけないことがあります。  まず、耐性と呼ばれている問題ですが、ある種のお薬は毎日繰り返し使用していると、その効き目が徐々に落ちてくることがあります。お薬が体で効果を発揮するためにはお薬が受容体というものに結合する必要があるのですが、毎日お薬が大量に体の中に入ってその受容体に結合しようとすると、だんだんその受容体が疲れてきて効き目が落ちてきてしまうためにおこります。この現象は全ての薬に起こるわけではないのですが、喘息で用いられるお薬では今月の話題である気管支拡張薬がそれに当たります。この現象が起こるのを防ぐには、使用する必要がない時には気管支拡張薬を早めに中止し、必要なときだけ使用するようにすることです(一旦休憩すると受容体の疲れは元に戻ります)。また、ステロイドには受容体の疲れを防ぐ力がありますから、気管支拡張薬を長期間連用する場合には吸入ステロイドとの併用も有効です。次に、気管支が弱くなるという問題です。以前から何度もお示ししていますが (第12, 13, 14号参照)、喘息がなかなか良くならないのは気管支がただれている(炎症を起こしている)からです。気管支拡張薬は気管支を拡張させてくれて発作の苦しみをとってくれますが、気管支の炎症を抑えることはできません。ですから、気管支拡張薬はいくら使用しても喘息そのものを治すことはできません。さらに、気管支拡張薬だけを使用して発作に対応していると喘息がだんだん悪化して、そのために気管支が一段と弱くなるという期待したのとは逆の結果になってしまいます。これを防ぐには、気管支の炎症を抑えるお薬である吸入ステロイドや抗アレルギー薬(インタール、オノン、シングレアなど)を併用することが大切です。一部のお子さん(特に思春期)では、気管支拡張薬の方が効果が早く現れるためにこればかり使用して、喘息を治すのに大切な気管支の炎症を抑えるお薬を併用しない(サボる)人がいますが、こういう人は要注意です(第39号 参照)。  このようなことを聞くと、気管支拡張薬は危険な薬だから使ってはいけないと早合点される人もおられますが、喘息の治療には発作に対する治療と喘息そのものに対する治療の二本柱が必要で(第49号 参照)、発作に対する治療に最も有効な気管支拡張薬は是非とも使う必要があります。問題は、上に書いたような対策をきちんと守れるかどうかにかかっています。現在、気管支拡張薬をずっと使い続けている方は一度薬の使用方法を見直してみてください。
【編集後記】いい薬にも必ず難点があるものです。まさしく「両刃の剣」ですよね。(有)
富山医科薬科大学小児科アレルギー外来

last modified 26.9.02
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