アレルギー外来ニュース 平成18年9−10月号

第81号 2006年9−10月

 暑い夏も終わり、心地よい季節となりましたが、急に寒くなったり台風がやってきたりすると、そろそろ発作を起こすかなとドキドキしているお母さんも多いのではないでしょうか。今回は、新しいタイプの吸入ステロイドについて解説します。

今月の話題「ネブライザーでも吸入できるステロイド登場!」

 喘息の基本治療のひとつに吸入ステロイドがあります(第78号)。今までは、ボンベ式の定量噴霧器(MDI)や粉末の薬剤を吸入する器具(DPI)しかありませんでした。4歳以下のお子さんの多くは、噴霧器から瞬間的に出てくる薬剤をタイミングよく吸入する(=同調すると言います)ことができませんし、「息を吸ってごらん」と言ってもうまく吸気動作ができません。そのため、今までは吸入薬を使う場合には、ネブライザーを使うか、ボンベ式の噴霧器に風船のようなスペーサーと口を覆うマスクをセットして吸入するかのどちらかでしたが、吸入ステロイドにはネブライザーで使えるような液剤がありませんでしたので、必然的にボンベ+風船+マスクの組み合わせで苦労して吸入してもらっていました(下表)。
 このたび、我が国でもネブライザーで吸入できるステロイドの液剤(パルミコートという商品名)が使えるようになりました(諸外国では以前から使用可能でした)。これで今まで以上にうまく吸入できるようになって喘息のコントロールがよくなることが期待されますが、ネブライザーにも問題点はあります。まず、決まった量の薬剤を吸入するのに時間がかかるということです。ネブライザーの種類によって異なりますが、通常5分から10分ぐらいかかります。また、泣いたり暴れたりしながらでの吸入では殆ど肺の中には入らないことになってしまいますので、吸入している間は絵本を読んであげるとかテレビを見せる、また眠っている間に吸入するなどの工夫が必要になる場合が多いと思います。吸入ステロイドの副作用を減らすために、顔に付着した薬は吸入後に拭き取るようにしましょう。また、口の中に残った薬を飲み込めるように水を飲ませたり、食前に吸入して食事と一緒に飲み込んでしまうようにしましょう(胃に入ったお薬は肝臓で分解されて副作用の原因にはなりません。(第19号

小児の吸入手技能力と吸入デバイス
   同調
可能な児
吸気動作
可能な児
同調・吸気動作
共に不可な児
  問題点
MDI ○       吸入ステロイドの
口腔内沈着
MDI
+スペーサー
    ○    吸入動作の確認が
難しい
MDI
+スペーサー
+マスク
         ○ 吸入動作の確認が
難しい、マスクの
密着が必要
DPI    ○    一定の吸気流速
が必要
ネブライザー         ○ 長時間を要する。
吸入量の評価困難


液剤の吸入ステロイドの方が、一回に吸入する量が多くなる?


 今回解説したパルミコート(商品名)には、1回250と500μgの2種類があります。今まで使っていたフルタイドエアやキュバールでは、1回に50とか100μgだったと思います。これは、ネブライザーに比較的多くの薬剤が沈着するなど、無駄になる部分が大きいからです。肺に入る薬剤の量は以前のものと大きくは違いませんので、ご安心下さい。
【編集後記】 国内外で、子供たちが犠牲になる事件が後を絶ちません。もっとゆとりのある世の中にならなくては!(裕)
富山大学小児科アレルギー外来

last modified 06.10.06
maintained by Yuichi Adachi