放射線科の診療紹介

 放射線科と聞くと「レントゲン写真を撮るところ?」と思われている方が多いこと思います。必ずしもハズレとは言えないのですが、正確にはレントゲン写真を撮影しているのは放射線技師で、本大学附属病院ではこの仕事は中央放射線部というところで行われています。放射線科の診療は大きく分けて診断部門治療部門から構成されています。

  診断部門は撮影された様々な画像から患者さんの病態を解明し診断する仕事をしています。取り扱う画像には皆さんが普段レントゲン写真と呼んでいる単純X線写真の他に、コンピュータを用いて体の断層像を得るX線CT、X線を用いず磁石の力で体の内部構造を観察するMRI、放射性薬剤を用いて体の働きを画像化する核医学(RI)検査などがあります。早く的確な治療を開始するには、正確な診断が不可欠です。

  また、治療部門としては、放射線治療内部照射療法インターベンショナルラジオロジー(IVR)と呼ばれる分野があります。放射線治療は体の外から病巣部に放射線をあてる治療法で、主に悪性腫瘍が治療対象となります。また、放射線治療の一種になりますが、放射性薬剤を飲むことで体の中から病巣部に放射線をあてる治療法を特に内部照射療法と呼んでいます。甲状腺機能亢進症や甲状腺の腫瘍が主な治療対象となります。これらの治療法は日本ではあまりよく知られていませんが、欧米では広く普及している治療法です。放射線科領域の治療法に関しては全般的に馴染みの薄いものが多いと思いますが、とりわけ最後に挙げたインターベンショナルラジオロジー(IVR)に関しては聞いたこともないとおっしゃる方が大部分と思います。今回はこのインターベンショナルラジオロジー(IVR)という治療法について簡単に紹介いたします。

  一般的に“IVR”と呼ばれていますが、適当な日本語訳がなく、患者さんにも分かりにくいため“血管内治療”“血管内手術”“低侵襲治療”などの用語を使っている場合もあります。画像診断用に開発された機械や技術を用いて治療を行う分野のことで、血管内から種々の治療を行う“血管系IVR”と血管とは無関係の“非血管系IVR”とに分かれます。これから“血管系IVR”について紹介いたします。

  血管内にカテーテルという細い管(現在使用しているものは直径約1〜2mm)を挿入し、目的の病巣まで進めていき、種々の治療をいたします。例えば、交通外傷などで動脈が傷ついて出血が止まらないときにはその血管に詰め物をして止血、動脈硬化症などで血管内腔が細くなってしまった場合には風船付のカテーテルを使って広げてあげるといった治療が可能です。また、限局した悪性腫瘍に対して腫瘍に流れ込む動脈のみに抗癌剤を注入することも可能で、抗癌剤の効果を高めるとともに、全身的な副作用軽減に役立っています。足の付け根のところに比較的太い大腿動脈という動脈が走行しており、通常ここからカテーテルを血管内に挿入していきます。全身の動脈はつなっがていますので、この場所からで全身どこの部位の病巣にも到達可能です。血管内にカテーテル挿入する際に局所麻酔の注射をしますが、その他には特に痛いことはありません。また、直径1mm程度の管ですから、傷跡も残りませんし、術後も5時間程度の安静のみで歩行可能ですから、入院期間も短くて済みます。比較的新しい治療法なのですが、近年目覚ましく適応拡大がなされている治療法です。

  以上、簡単に紹介いたしましたが、治療法を選択する際の参考としていただければ幸いです。

(本学附属病院かわら版掲載分)