膵臓がんについて

対象疾患
 膵臓がん、その他の膵腫瘍(膵嚢胞性腫瘍、膵神経内分泌腫瘍など)、急性・慢性膵炎など手術治療が必要となるすべての膵疾患を対象としています。
 膵臓がんは、がんの中でも非常に治療が難しいものであり、手術が唯一の根本的な治療でありますが発見時に進行していて手術が不能と判断されることも珍しくありません。また手術に関しても膵臓周囲には大事な大血管が複雑に存在するため、非常に高度な技術を要するものとなっています。

 膵臓がんは、周囲へのがんの拡がりの程度や転移の有無により、「切除可能」「切除可能境界」「切除不能」に分類されます。切除可能なものに対しては手術を行い、術後に補助化学療法(再発予防の抗がん剤治療)を行います。切除可能境界のものに対しては、そのままで手術を行ってもがんが残る可能性が高いために、手術前に抗がん剤治療(+放射線治療)を行い、がんを小さくしてから手術に挑む方法が行われるようになってきました(写真1)。これらの膵臓がん手術は周囲の血管合併切除再建を伴う高難度手術となることが多くなります。切除不能に対しては抗がん剤治療が行われますが、治療効果によっては切除が可能となることも最近は経験されるようになってきました。難治性の膵臓がんに対してもこのような抗がん剤治療と手術を組み合わせた集学的治療により、以前より治療成績の向上が見られるようになっています。
当科では、膵臓がん治療のエキスパートである藤井努教授(写真2、3)を中心に専門家により積極的な治療を行っております。
対象疾患 写真1 対象疾患 写真2 対象疾患 写真3
診療実績
当科では1997年以降に膵臓がん117例に対して切除を行っています。膵臓がん手術は合併症も多く、リスクの高い手術となりますがこれまでの117例での術後在院死亡率は0%となっており安全な手術が行われております(2013年本邦のNCDデータでは膵臓がんに対して主に行われる膵頭十二指腸切除術の在院死亡率は2.8%となっております)。また当科における膵臓がん手術の術後累積生存率は3年で44.3%、5年で33.4%となっており、全国平均と比較して良好なものとなっています。またこれまで切除不能とされていた多発肝転移に対して抗がん剤治療を続けて肝転移が消失し完全な切除が可能となった事例や、腹膜播種(お腹の中で種がまかれるようにがん細胞が転移する状態)を起こした膵臓がんは全く有効な治療法がありませんでしたが腹腔ポート(お腹の中に抗がん剤を注入する装置)を作成して抗がん剤治療を行うことで腹膜播種が消失し膵臓がんが切除できる事例もでてきました(写真4)。これまででは治療不能として扱われてきた進行膵臓がんに対して、最新の強力な抗がん剤治療を行うことで根治的な切除につなげる治療も可能な時代となっています。
 膵臓切除では術後合併症として重要なものに、強力な消化液である膵液が漏れてしまう膵液瘻が一定の割合で起こってしまいます。術後の大出血や重篤な感染症など致死的なものとなることもあるもっとも重要な合併症でありますが、当科では藤井教授が考案した方法で膵臓と小腸を吻合(つなげる方法)しており、膵液瘻発生率は非常に低率で安全に行っています。この方法は非常に成績が良好のために近年全国的に他の施設でも取り入れられています。
 また低悪性病変である膵嚢胞性腫瘍や膵神経内分泌腫瘍に対しては積極的に腹腔鏡手術を行い、侵襲が小さく術後在院日数の少ない身体にやさしい治療を行っています。
診療実績 写真1
膵臓がんやその他の疾患の方々へ
 膵臓手術は非常に専門性の高い領域であり、当科では最新の治療を提供し安全で良好な成績をおさめています。門脈などの主要な血管合併切除、再建(写真5)を要することも稀ではありませんが、これに対しても高度な技量と優れた手術前後の管理を行い安全に行うことが可能です。当科では毎週、藤井努教授の“膵がん・膵腫瘍専門外来”を設けています。他院で診断された後でもセカンド・オピニオンとして当科を受診していただき、新しい治療方法についての相談も丁寧に対応致します
膵臓がんやその他の疾患の方々へ 写真5