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われわれは何気なく日常生活をおくっておりますが、その際脳が扱う情報量は、毎秒100億ビットにも達すると言われています。
ヒトの脳内には、そのような膨大な情報のリアルタイム処理を可能にする超並列的な情報処理システム(ニューラルネットワーク)が存在しています。
したがってこの作用原理を解明することは、ヒトの脳に関する理解を深めるとともに現代の情報化社会に大いに貢献すると考えられます。
当講座では、脳における外界刺激の感覚認知機構(入力系)、および感覚認知や記憶に基づいて行動を遂行する行動発現機構(出力系)など一連の脳の高次機能について神経生理学的研究を行ない、脳の神経情報処理機構や原理を明らかにすることを目的としています。


主な研究課題
1. 大脳辺縁系ニューロンネットワークによる情報処理機構
 
大脳辺縁系は一般的に”情動”の座として考えられているが、情動の発生機構は未だ解明されていない。 われわれは、大脳辺縁系各領域のニューロ間のネットワークが情動を発現しているという仮説を基に研究を進めている。



 
2. 空間認知とエピソード記憶形成の脳内メカニズム

空間認知およびエピソード記憶形成の仕組みを海馬体のニューロン応答より解明しています。



3. 非言語的コミュニケーションの神経機構

私達は、日常的に言葉に頼らないコミュニケーション手段を用いています。
それは、例えば顔表情であったり、目配せなどの視線であったり、ジェスチャーであったりします。
私達は、このような非言語的コミュニケーションがなんであるかは分かりますが、どのようにしてそれを受け取って処理しているのかと言うことは、あまりよくわかっていません。
 この研究プロジェクトでは、霊長類における非言語情報の脳内処理機構について、神経生理学的および心理学的手段を用いて研究しています。この研究プロジェクトの成果は、コミュニケーションに障害のある「心の病」の患者さん(自閉症や精神分裂病など)の治療に、きっと役に立つものと確信しています。




4. 順列の学習・認知に関する神経機構

 
ヒトは、意識的あるいは無意識的に、連続する感覚入力からその法則性を抽出し、過去に学習した記憶との違いを検出することができます。
私たちは、このようなヒトの情報処理機構を調べるため、音刺激を用いた順列記憶課題中の脳波を記録し、双極子追跡法を用いて、その活動源を調べる研究を行っています。




5. 後部帯状回における感覚、運動、感情および学習に対するニューロン応答特性

 
後部帯状回は、海馬体から入力を受け、記億や学習さらには運動機能に関与することが示唆されている。また、行動と感覚情報のモニターというような行動の評価を行っているという仮説が提唱されている。しかしながら、後部帯状回の研究はまだ少なく、特にラットにおいてはニューロンレベルの研究はこれまで行われていない。本研究では、10種類の感覚刺激 (光、音、またはそれらの組み合わせ)と報酬(脳内自己刺激、0.3 Mショ糖溶液)または無報酬を連合学習したラットを用いて、後部帯状回ニューロンの感覚、運動、感情および学習に対する応答性を調べている。




6. 空間移動連想課題における脳波シータ波の変動

 
私は学習、認知、記憶、注意、覚醒、意識と関係した高次神経機能がいかに自律神経機能と連動して発現されるのかに興味を持っています。
私の主な研究は短期記憶を含む空間移動連想課題におけるシータ波の帯域(4-8Hz)の変動と同じ時系列上に展開された心拍、血圧、呼吸変動のスペクトラム、コヒーレンス、伝達関数の解析を基に高次神経の情報処理過程における自律神経機構の役割を明らかにすることです。
また、刺激入力とシータ波のコヒーレンス値が高いので、ランダム刺激入力に対するシータ波の周波数応答性から高次神経機構のシステム同定が可能です。