富山大学附属病院 顎口腔外科・特殊歯科
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見出しインプラント
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1.はじめに
 我々は、口腔インプラント(以下:インプラント)治療は、個々の患者さんの口腔内の状態や社会的背景により、その患者さんにあった、治療を行う必要があると考えています。
 当科では、担当医と患者さんとの相談・各種検査後、複数の歯科医師によるカンファレンスにより、治療方針を決定していますが、その際に、患者さんよりよく質問される事項を以下にまとめてみました。インプラント治療の前に、この治療についてよく理解をしたうえで、治療を行っていくことをおすすめしています。

2.インプラント治療とは?
 虫歯や歯槽膿漏、外傷などで歯を失った部分の骨に人工歯根を埋め込み、見た目や咬む機能を回復させる治療法です。材質は現在、チタン製の物が主流になっており、埋め込む側の骨との結合を促進するためにアパタイトをコーティーングするなど表面処理がなされています。1960年代にスウェーデンで応用が始まって以来、現在では著しい進歩を遂げ、歯科治療を行なう上で非常に有用な治療法のひとつとして挙げられています。
 後で説明するように、この治療法は健康保険がきかない自由診療であるため、高額な料金がかかるのに加え、長期間機能させるためには、十分なお手入れが必要になりますが、従来の治療とうまく組み合わせることにより、より満足の得られる治療を受けることが可能になると考えられます。

Q&A

Q1. ブリッジや入れ歯との違いは?
 歯が欠損した場合、通常その部位や本数により入れ歯やブリッジによる補綴が行なわれます。ブリッジは比較的小範囲の欠損に使用され、欠損前と同様な咬み合せを回復することが可能ですが、時に虫歯のない歯牙を削る必要があることもあり、欠損部以外の歯に負担をかけることもあります。またインプラント同様十分なお手入れが必要になります。入れ歯は、比較的大きな欠損に応用される部分入れ歯と歯がすべてなくなった方に使われる総入れ歯があり、取り外して洗うことができますが、部分入れ歯はバネにより残りの歯に引っかかりをつくり入れ歯を安定させるため、負担をかけてしまうことは否定できません。さらに総入れ歯の場合、入れ歯の安定が困難となり咬む力も減少します。インプラントを行なうと、他の歯を削ったり負担をかけることは必要無くなります。場合によってはインプラントと入れ歯を併用することにより、入れ歯の安定が増し、よく噛めるようになると考えられます。






Q2. インプラントと歯の違いは?
 歯は歯根膜という柔らかいクッションを挟んで骨の中に埋まっていますが、インプラントは骨と直接強固に結合しています。数々の改良により、インプラントの性能は上がっていますが、本来の歯と同じと考えることは困難です。また体にとってはあくまでも後から埋められたものであるため、インプラントの周囲に口の中の汚れがたまってしまうと、いわゆる歯槽膿漏と同じ事が生じ、場合によっては自分の歯よりもひどい炎症が起こってしまい、インプラントが脱落する原因になります。
 歯を失うには、それなりの理由があったと考えられ、その問題点を十分改善した上で、インプラント治療を行わないと治療がうまくいかない原因になります。当科では十分な口腔清掃指導をした上でインプラント治療を進めていきます。


Q3. インプラントは誰でもできますか?
 妊娠中のかた、チタンのアレルギーのある方は適応が不可能と考えられます。また全身的な疾患があり、その治療がうまく言ってない場合は治療を見合わせることがあります。また、歯軋りが強い方、ヘビースモーカーの方はインプラントに悪影響があるため、注意を要します。
 インプラントは骨の中に埋め込むため、十分な骨の量がないと困難になります。部位によっては骨の移植が必要な事があり、当科では、CT検査などにより術前に十分に診査をした上で、患者さんとご相談し、治療方針を決定します。
 先述のとおり、お口の中の清掃が不十分な方、残りの歯の歯槽膿漏が進行している場合は、インプラントがうまくいかない可能性がありますので、歯周治療・清掃指導により改善が認められた方のみ治療の適応となります。


Q4. インプラントはどのくらいもちますか?
 現在、インプラント治療の成功率は90%を超えています。しかしながら未だ100%の成功とはいえず、インプラントが長期間もつにはどのような条件が必要であるかを考え、対応を行う必要があると考えられます。今までも説明した部分と重なりますが、これまでのわれわれの経験からすると以下のような条件が挙げられます。

1. 治療前に確実な診断と治療方針の決定を行う。
2. 可能な限り無菌状態でインプラント手術が行える設備(手術室)および器材が整備されおり、 熟練した術者がインプラント手術を行う。
3. インプラント埋入予定部位の骨量あるいは骨質に問題がある場合に、骨移植や上顎洞底挙上術などの歯槽堤造成術を確実に行う。
4. 適合性の良い補綴物を装着する。
5. 口腔衛生状態が良好である。
6. 定期的に的確なメインテナンスを行う。

 これらの条件が満たされれば、インプラントは半永久的に骨との結合が維持され、40年以上もつことが、これまでのインプラントでは実証されています。しかしながら、上記の条件の内どれかが満たされなければ、インプラントと骨との結合が失われたり、インプラントの周囲に炎症は起こり、骨が痩せてしまったりして、失敗に終わることがあります。よって条件があわない方に関しては、インプラント治療をおすすめできないことがあります。
 特に、毎日の口腔内のケアや定期観察はインプラントを成功させるための最重要項目です。通常は、歯を装着してから1ヵ月後、3ヵ月後、その後は3ヶ月毎あるいは半年毎となりますが、患者さんの口腔清掃状態、かみ合わせの状態により、1・2ヶ月に1度来院して頂き、歯科医師・歯科衛生士によるクリーニングなどを行う場合もあります。


Q5. 費用と治療期間はどのくらいですか?
 インプラントは次のような過程により治療がすすみます。欠損の部位や歯の数、補綴物の違いにもよりますが、最終的に冠や入れ歯が入るまでは、短い治療で3~4ヶ月、長い治療だと1年強にわたり治療が必要になってきます。

1. 初診から治療方針決定まで。
口腔内の状態、CTを含めたレントゲンなど各種検査により治療方針決定
2. 歯周治療(歯槽膿漏の治療)、歯ブラシ指導
この間必要な場合には、骨移植を先行します。(骨移植後、インプラント埋入まで3~6ヶ月待ちます。)
3. 1次手術(インプラント埋入:少量の骨の不足であればこのときに骨移植を併用します。)
その後上顎では3~6ヶ月、下顎では1~3ヶ月、インプラントと骨が結合するのを待ちます。(骨移植を同時に行なった場合はもう少し長めになることもあります。)
4. 2次手術(歯肉の中に埋まったインプラントを歯肉から出す:1回法の場合は必要ありません)
歯肉が引き締まるまで、2週間前後待ちます。
5. 型どり
6. 仮歯の装着。(この過程がない場合があります。)
7. 最終補綴
8. 定期観察





 当科では、患者さんの希望・埋入部位の状態により、それぞれのタイプのインプラントを使い分けています。
 また前述のとおり、インプラント治療は健康保険が適応されず、自由診療の料金がかかります。具体的には、歯の欠損数・部位、補綴の方法などにより、患者さんごとに異なりますので、診察をさせていただいた上で、担当医より概算をお知らせします。
 詳細な検査後、治療計画を立案し、料金的なことを含め最終的な説明をした上で、同意がいただければ、治療をすすめていきます。


Q6. 手術はどのようなものでしょうか?
 インプラントの埋入手術は骨を削って行ないますが、手術中は麻酔により痛みを感じないように行います。体の反応により術後ある程度の腫れは避けられませんが、数日後にはひいていきます(個人差はあります)。術後の痛みには痛み止めを処方します。数本までのインプラントの埋入は外来手術室にて局所麻酔下で行います。多数の埋入もしくは多量の骨移植が必要な場合は、入院して全身麻酔下での手術を行います。局所麻酔での手術でも入院して管理を行うことにより、痛みや食事の心配も少なくなります。最終的には担当医の判断により決定しますが、入院もしくは全身麻酔の希望がある場合はご相談ください。
 下顎の骨の中やそばには、神経や血管が走行しており、手術によりこの神経を損傷すると、舌や下唇にしびれが生じることがあります。また、上顎の奥歯のインプラントをする場合には上顎洞(蓄膿の空洞)が近いため、術後蓄膿を併発することがあります。当科では、CT検査など、術前に十分な検査を行い、このような後遺症が発生しないように努めています。

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