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1.はじめに
 腫瘍とは「正常な細胞から変化した異常な細胞が周囲を気にせず異常に増殖したもの」と言うことができ、体のあちこちに転移をきたす「がん」のような悪性の腫瘍から、良性の腫瘍までいろいろな性格のものがあります。口腔の腫瘍も同じように多様な性格があるため、それぞれの腫瘍に対して治療法が異なります。
さて、口腔にはたくさんの機能があります。咀嚼(ものをかみ砕く)や味覚・嚥下(飲み込む)・言語・唾液による消化などです。この機能は、歯やそれを支える骨・舌・口蓋・頬などが複雑にかかわりあって成り立っています。口腔の腫瘍はこれらの部位に発生するため、良性悪性を問わず、腫瘍そのものが大きくなることにより、これらの機能に障害が生じます。悪性腫瘍の場合では、患者様の生命予後に大きくかかわることもあり、仕方なく必要十分な範囲の切除を行うこともありますが、当科では、腫瘍の根治性のみならず、機能温存や形態の回復、すなわち患者様のQOL(Quality of Life)が可能な限り保たれるように、治療計画を立てています。




2.治療について
良性腫瘍
  良性腫瘍は自覚症状を伴わないことが多く、歯科医院で撮影したレントゲンで偶然見つかることがあります。中には感染により自覚症状が出る場合もあります。多くは周囲組織を温存しつつ、腫瘍のみの切除で根治が望めるため、基本的に手術療法が選択されます。
悪性腫瘍(口腔がん)
悪性腫瘍では、病変の部位、腫瘍の進行度、臨床的悪性度(見た目や増殖の早さ)・病理組織学的悪性度(組織レベルでの性格)、全身状態および患者様と御家族の希望などにあわせ、治療法を選択します。  
以下に当科での悪性腫瘍の治療指針をまとめてありますので参考にしてください。




外科的切除
  手術による切除療法です。腫瘍に対し十分な安全域を含めて切除します。口腔内の腫瘍は9割が上皮組織から発生する固形の癌であるため、手術により取りきることが最も根治性が高い治療法です。ただ、切除範囲が大きい場合、術後の機能障害や審美障害が大きくなるため、必要に応じて軟組織や骨の再建、デンタルインプラント・義歯を用いた咬合再建を行います。
腫瘍の性格によっては抗癌剤がよく効き、大幅な縮小を示すものがあります。このような腫瘍に対しては、抗癌剤(または放射線との複合)による治療後、腫瘍の縮小に応じた縮小手術(器官温存手術)が適用できることが多く、口腔機能を温存することができます。

                    
   治療前      外科切除後、義歯の装着が可能

治療前 腫瘍切除と同時に
デンタルインプラントを埋入
安定した顎義歯の装着が可能


小線源による組織内照射法
  小線源療法は放射線源を患部に挿入して治療を行う方法です。あらかじめチューブを口腔外から、腫瘍の適当な位置に刺入し、その後線源を挿入して放射線照射を行います。早期癌に対しての治療成績は外科的切除と同程度で術後機能障害が少ないことが特徴です。転移がある症例には適用できません。

舌癌、治療前 顎の下よりチューブを挿入 治療により腫瘍は融解しています


化学放射線併用療法
  化学放射線療法とは化学療法、すなわち、抗がん剤と放射線治療を併用する方法です.化学療法を併用することによって原発巣やリンパ節転移巣への放射線治療効果は向上し,遠隔臓器への転移を抑制する効果も期待できます.従来の放射線治療単独では治癒が困難であった進行がんも化学療法の併用によって治癒の可能性が高まってきています。腫瘍のタイプによっては抗癌剤や放射線の効きづらいものもあるため術前の顕微鏡検査を参考にします。

         進行舌癌(治療前) 治療後、腫瘍は完全に消失し、
舌の形態と機能は温存されている
※本例は動注化学放射線療法を施行した症例です。(動注:腫瘍の栄養血管にカテーテルを挿入し、直接抗がん剤を投与する方法)





図2 口底癌(左上下)、舌癌(中上、右上)、歯肉癌(中下、右下)

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