1.はじめに
腫瘍とは「正常な細胞から変化した異常な細胞が周囲を気にせず異常に増殖したもの」と言うことができ、体のあちこちに転移をきたす「がん」のような悪性の腫瘍から、良性の腫瘍までいろいろな性格のものがあります。口腔の腫瘍も同じように多様な性格があるため、それぞれの腫瘍に対して治療法が異なります。
さて、口腔にはたくさんの機能があります。咀嚼(ものをかみ砕く)や味覚・嚥下(飲み込む)・言語・唾液による消化などです。この機能は、歯やそれを支える骨・舌・口蓋・頬などが複雑にかかわりあって成り立っています。口腔の腫瘍はこれらの部位に発生するため、良性悪性を問わず、腫瘍そのものが大きくなることにより、これらの機能に障害が生じます。悪性腫瘍の場合では、患者様の生命予後に大きくかかわることもあり、仕方なく必要十分な範囲の切除を行うこともありますが、当科では、腫瘍の根治性のみならず、機能温存や形態の回復、すなわち患者様のQOL(Quality of Life)が可能な限り保たれるように、治療計画を立てています。