2021.03.01
医局コラム

富山と整形外科と私

「なん、つかえんちゃ」
この言葉を富山で耳にしたときは、お役に立てなかった、と肩を落とす必要はありません。
「いいえ、かまいませんよ」との労いの意味となる富山の方言だからです。
とあるインターネットサイトには、「2012年かわいい方言ランキング」において第2位は富山弁、とあります。ちなみに1位は京都弁と。「2位じゃダメなんでしょうか?」と聞こえてきそうですが、心中は「なーん、出来たら1位がよかったやちゃ」ですね。

話は変わるようですが、医学用語は疾患名のみならず、薬剤や器具でも、先達のご芳名を冠するものが多く見受けられます。クッシング病、リンゲル液、メイヨー剪刀、などなど。整形外科の領域においては、骨折の型にもです。
では仮に「コレス/スミス骨折」ではなく、
「橈骨遠位端関節外 背側/掌側 転位骨折」と
解剖学的に画一化した名称にすると、どうでしょう。
どちらか分からないなんてことが、もしかしたら減るかもしれません。
でも、どこか味気なくなります。
そして歴史を知る機会を失うのでは、とは杞憂でしょうか。

 医学用語と方言はもちろん別物です。
しかし、「胸が苦しいです」ではなく、「胸が憂(う)いです」であれば「この方は富山出身かな」と私はピンときます。そんなことは余計でしょうか。無論、胸が苦しいのはすぐ診て差し上げますけれども、そんな違いが、面白さや楽しみを生むことはないでしょうか。

「コロナ禍というものがあった」と思える日が一刻も早く来ることを願いながら、お力添えいただいた富山のみなさまへの謝意を込めてこちらに記します。
きのどくな。 

医局員M