2021.05.21
医局コラム

嫌われる勇気

 数年前にベストセラーになった本のタイトルなのでご存じの方も多いと思います。ユングやフロイトと並ぶ心理学の三大巨匠とよばれるアドラーが提唱したものだそうです。私はアドラーの心理学も数年前に出版された本も読んだことはないのですが、某スポーツ情報誌の特集でこの言葉と出会いました。
 人間ですから、他人から嫌われたくない、好かれたいと思うことはあって当然だと思います。別に嫌われてしまえということではなく、あくまで心理学、自己啓発に関する内容です。要するに「他人の評価にとらわれるな」「人との比較ではなく、自分にコミットするべきだ」というのが趣旨だとされています。
 この「嫌われる勇気」、対自分ということであれば気の持ちようということになるでしょうが、対他者に持ってもらうためには?と考えればどうでしょう。管理者や監督として、皆が目標に向かって邁進できるように「嫌われる勇気」を持ってもらう。共同体の構成員それぞれが、理想の自分を掲げ、現在の自分の課題に向き合い、己の道を進みながら、他者との共同体の中で貢献する。企業やスポーツなどのマネージメントや人材育成の観点から考えたときに、必要なのは動機づけと環境作りとされています。どう働きかけて動機づけをするのか、個人個人のフレームワークをどう設定するか。自由とルールをどう与えるか。これは経営学や教育学につながるものだと思います。見方をかえただけで、実際にしていることは同じことなのかもしれません。
 この5年間は自分の環境がころころ変わり、使われる側として「嫌われる勇気」を持たせてもらったと感じる時期がありました。自信が生まれ、忠誠心を持って取り組める時間は大事なものを思い出させてくれたように思います。そして自分の子どもをみたときに、親としてサポートをする必要があるのだと感じます。「のびのびと」「すくすくと」。言うのは簡単ですが、実はものすごく難しい問題なのだと感じています。