富山大学医学部 放射線診断・治療学講座

診療と研究

画像診断

CT(コンピューター断層撮影)は、X線を使って断層画像を撮影します。現在は多列検出器型CT装置を使用して、短時間に撮像することができます。当院には、64列、16列のCT撮像装置が各1台あります。通常の断層画像のほか、3次元CTアンジオグラフィ、冠動脈CT アンジオグラフィ、デンタル撮影、体内脂肪量測定等の特殊検査も行っています。1日に約80から100件の検査を行っています。来年には、被爆線量の低減した最新のCT装置が導入される予定です。
MRIは核磁気共鳴現象を画像化したものです。CTと異なり、X線による被爆を受けることなく、断層画像を撮像することができます。当院には3T MRI装置が1台、1.5TMRI装置が2台あります。1日に約30から40件の検査を行っています。脳神経路の走行がわかる拡散テンソルtractographyや 脳代謝情報のわかるMR spectroscopy、造影剤を使わずに脳血流情報のわかるASL(arterial spin labeling)などの特殊検査も可能で、診断、治療に役立っています。

インターベンショナル・ラジオロジー(IVR)

IVRとは、Interventional Radiology(インターベンショナルラジオロジー)の略で、画像診断の技術を応用して行う治療全般を指す言葉で、カテーテルなどを用いて治療を行います。IVRでは手術のように大きな切開を加えることが少ないことから患者さんへの侵襲性が低くて、外科的治療に匹敵する治療効果が期待できると言われています。 様々な病気に対する多くの手技が開発されており、現在も新たな手技が開発されつつあります。特に近年では、本邦でも球状塞栓物質(ビーズ)などの新たなデバイスが承認され、次々と治療に用いられるようになってきました。このため、IVRは非侵襲的な治療法として、重要な一分野になっています。
 放射線科が担当するIVR関連の手技は、年間約350件です。血管内治療として原発性・転移性肝癌、頭頚部癌、骨軟部腫瘍、子宮癌、卵巣癌、胃静脈瘤などを対象とした血管内塞栓術・抗癌剤動注療法を行っています。また腫瘍・外傷などを原因としたの出血に対しての緊急止血、シャント血管狭窄・閉塞に対する血管形成術などにも対応しています。非血管系治療としては画像ガイド下でのドレナージも行っています。
 IVRを担当する放射線科の担当医師は4名(IVR専門医1名)で、昼間の通常業務の他に夜間や休日の緊急時にも対応できる体制をとっています。また、IVR専門医修練認定施設にも認定されています。
当院では、血管撮影装置でCT様画像(コーンビームCT)が撮像できるIVRシステムが3台導入されています。これにより、抗癌剤動注療法や血管内塞栓術において、より精度が高く、安全な治療が可能となりました。また、この内の1台は、手術室内に設置され、血管造影やIVRを行いながら、外科的手術をすることも可能となっています。

核医学診療

 核医学検査では、放射性薬剤を利用した診断を行います。放射性薬剤が臓器や病巣に集積することを利用して、CT検査やMRI検査などの形態画像とは異なる生理学的・生化学的情報を画像化します。
当科には測定装置としてSPECT-CT装置や最新のPET-CT装置があります。核医学装置とX線CT装置を組み合わせることにより、核医学検査で検出された異常が全身のどの部位と一致するかを正確に捉えることができます。
核医学検査で用いる放射性薬剤は人体に対して安全な量であり、被曝線量は他の放射線検査と同等のレベルであるため、被曝による人体への影響は心配ありません。また、放射性薬剤に含まれる物質濃度は非常に微量なので薬剤副作用が極めて少ないという特徴があります。 一方、核医学治療は放射性薬剤が病巣に特異的に集積する性質を利用して病変部に放射線を照射する治療法です。当科では、バセドウ病、甲状腺癌術後の転移巣、骨転移の除痛を対象とした治療を行っています。

放射線治療

当院の放射線治療部門は、画像誘導型放射線治療が可能な高精度リニアック1台(米国Varian社Clinac iX)、治療計画用の16列のCT1台、三次元放射線治療計画システム2式密封小線源治療装置(Microselectron-HDR)1台を用いて、年間新患330例程度の治療を行っています。1台のリニアックの症例数としては上限に近く、2台目、3台目の照射装置の導入を計画しております。 スタッフは放射線治療専門医1名、専従の放射線科医1名、医学物理士1名、診療放射線技師4名、看護師2名、受付1名です。

本院の放射線治療の特徴と特殊な高精度治療


(Varian Clinac iX)

  1. 新しいリニアックは高精度治療が可能であり、脳腫瘍、頭頸部腫瘍、悪性リンパ腫、膵癌、肝癌、婦人科腫瘍、泌尿器科腫瘍などに対して三次元原体照射を多用しております。
  2. 前立腺癌に対する強度変調放射線治療(IMRT)、は毎日6例を施行しております。厚生労働省より同治療の保険診療が可能となるIMRT認定病院を認可されております。
  3. 早期肺癌や転移性肺癌、転移性脳腫瘍対して、6MV X線を用いて定位照射(radio surgery)を施行しております。呼吸性移動対策としてはAbches法を用いております。
  4. 特にStageⅠの非小細胞肺癌では、手術成績に匹敵する成績を挙げています。
  5. 他院からの症例を放射線治療部門で直接、紹介を受けるため、地域連携枠を毎日設定しております。各病院の地域連携室を通して紹介を受けております。
  6. 富山県の小児腫瘍患者は、全て当院に集まるため、小児の放射線治療症例が多いのも特徴の一つです。
  7. 当科IVRチームの動注化学療法との同時併用も多く積極的に施行しております。
  8. イリジウム線源アフターロ-ディグ装置Ir-RALS(microselectron-HDR)を用いて子宮頸癌に対する腔内照射、年間10例前後、前立腺癌に対する組織内照射、年間10例前後を施行しております。
  9. 骨髄移殖前の全身照射も小児・成人ともに施行しております。

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