エコチル調査でわかったこと

帝王切開での出生と
乳児期の便秘は関係が無い

 帝王切開は、通常のお産ができない緊急の事態が起こった場合や、双児の出産などでも行われる外科的な分娩方法で、今や約2割弱のお子さんが帝王切開で産まれてきます。

 これまで帝王切開にて産まれたお子さんの腸内細菌叢(そう)(腸内フローラ)は、通常の分娩で産まれたお子さんに比べて、菌の多様性に欠けるという報告がありました。子どもの腸内フローラは、お母さんの膣を通ってくる際に受け継がれるとされ、帝王切開で産まれた場合、この過程を経ないため十分な細菌を獲得できない可能性が示唆されています。

 また、お子さんの慢性便秘の発生には、腸内フローラが関与していることも知られていました。これらのことから、帝王切開で産まれたお子さんは腸内細菌の多様性が少ないことが原因となり便秘になりやすいという仮説を立て、エコチル調査に参加している約83,000人のお子さんを対象に1歳時の便通を評価しました。

 便秘は、多くの研究で使用されている「1週間に2回以下の排便」という基準で定義しました。その定義から、エコチル調査全体のお子さんで便秘と判定されたのは約1.4%ということがわかりました。イタリアでは17.6%、米国では5%という報告があり、これらと比較すると日本のお子さんは便秘の割合が少ないことがわかりました。

 次に、帝王切開で産まれたか、通常の分娩で産まれたかに分け、便秘のなりやすさに差があるかを調べました。その結果、それぞれの群での便秘になったお子さんの割合に差はないことが明らかになりました。この結果は、在胎週数、出生時体重、母乳育児の状況、保育園通園の状況など、子どもの便通や生活習慣に関連しすると考えられた16項目の影響を考慮し、かつ、約83,000人という大規模の人数で調べた信頼性の高い情報です。

 本研究では、当初の仮説とは反対の「帝王切開で産まれたお子さんが便秘になりやすいわけではない」ということがわかりました。帝王切開でのお産は、お母さんやお子さんの体調が悪いといった理由で予期せず起こることも多いですし、通常のお産をした場合に比べ育児が困難に感じることが多いといった報告もあります。便秘自体は大きな病気ではありませんが、母親にとっては毎日の育児でとても気をもむポイントです。今回の結果から、帝王切開でお産したお母さんの心配事の1つが減る…ということが示せたのではないかと思います。

※本研究は、『BMC Research Notes』に2018年12月12日付でオンライン掲載されました。
Yoshida T, Matsumura K, Tsuchida A, Hamazaki K, Inadera H. Association between cesarean section and constipation in infants: the Japan Environment and Children's Study (JECS). BMC Res Notes. 2018;11(1):882.

エコチル調査富山ユニットセンター
 2018年12月