エコチル調査でわかったこと

第1子と第2子で発達に違いはあるのか? エコチル調査より観察された乳児期の出生順位による差

研究の背景

 出生順位によって性格や能力に差があると聞くと、皆さんはどう感じるでしょうか。長男・長女はしっかり者で面倒見がよく、下の子はおおらかで社交的、といったステレオタイプはよく語られます。身近な人を思い浮かべると、「当てはまっているかもしれない」と感じる場面もあるかもしれません。本研究は、筆頭著者が「サッカー日本代表には第1子が少なく、第2子以降が多い」とする記事を読み、こうした出生順位による能力差が学術的にどの程度示されているのかを検証したいと考えたのが始まりです。きょうだいに関する学術研究では、第2子以降が運動・スポーツ面で有利になる可能性を示す報告もありますが、アウトカムや対象集団によって結果は一様ではありません。一方で、第1子は学力が高く、一部の身体的・認知的指標において有利であるといった傾向は、これまでに複数の大規模研究で示されています。
 きょうだいは両親から半分ずつ遺伝子を受け継いでおり、血縁関係のない他者と比べれば遺伝的に非常に似ています。にもかかわらず、出生順位によって差が生じるとすれば、その背景にはなんらかの環境要因があると考えられますが、きょうだいの順序を入れ替える実験的な研究はできません。また、きょうだい関係のない対象者を集めて、「第1子」、「第2子」という属性そのものを比較することは可能ですが、その場合、対象者の家族的な背景を厳密にそろえることが難しくなります。そこで、本研究では、きょうだい関係がある「第1子」、「第2子」に限定して、出生順位によって発達に差がみられるのかを検証しました。

対象・方法

 対象は、「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」に参加した子どもです。エコチル調査は、約3年間の参加勧奨期間がありましたので、この期間中に複数回の調査に参加することが可能でした。本研究ではそのような複数回参加した母親から生まれた第1子と第2子のきょうだい2,117組を対象としました。エコチル調査では、妊娠期から出生後にわたりさまざまな情報が収集されていますが、本研究では生後6か月および12か月時点の精神神経発達の状況に着目しました。また、第1子と第2子の間で保護者の関わりの度合いに差があるかも検証することとしました。
 子どもの発達評価には、保護者が回答する発達のスクリーニング質問票「Ages & Stages Questionnaires, Third Edition(ASQ-3)」を用いました。ASQ-3は、コミュニケーション、粗大運動、微細運動、問題解決、個人・社会性の5つの領域について評価するものです。保護者の関わりについては、遊びや読み聞かせ、屋外活動などの頻度をまとめた指標を用いて評価しました。解析にあたっては、同じ母親から生まれたきょうだい同士を比較する「母固定効果モデル」を用いました。この手法により、家庭の社会経済的背景や養育方針など、きょうだい間で共通する安定した要因の影響をできる限り取り除いたうえで、出生順位による差を検討しました。

主な結果

 解析の結果、生後6か月の時点では、第2子は第1子と比べてASQ-3の全ての領域で得点が低い傾向がみられました。差の大きさは領域によって異なり、特に個人・社会性の領域で比較的大きな差が観察されました。生後12か月では、微細運動および個人・社会性の領域では差が残りましたが、コミュニケーションや問題解決の領域では差は小さくなり、統計学的に明確ではなくなりました(表1)。

また、保護者の関わりを示す得点も、第2子では第1子と比べて低い傾向がみられました(表2)。これらの結果から、出生順位に関連する小さいながらも一貫した発達差が、生後1年以内という早い時期から観察される可能性が示されました。

考察

 出生順位による発達差については、これまで主に学童期以降を対象とした研究が多く報告されてきました。本研究は、乳児期という早い段階においても、きょうだい間で差が観察される可能性を示した点に特徴があります。第2子で保護者の関わり得点が低い傾向がみられたことは、親の時間や注意がきょうだい間で分散するという「資源希釈(resource dilution)」仮説と整合的と言えます。また、生後12か月で一部の差が縮小したことについては、家庭内の知的環境やきょうだい間の相互作用が関係している可能性があり、「コンフルエンス・モデル」と呼ばれる理論と部分的に整合しているのかもしれません。きょうだいは遺伝的背景を多く共有していますが、それでもなお一定の差がみられることから、出生順位に関連する何らかの要因が発達に影響している可能性が考えられます。
 ただし、本研究は観察研究であり、発達評価は保護者による回答に基づいているため、認識の違いなどが反映されている可能性もあります。さらに、乳児期に観察された差が長期的な発達にどの程度影響するかは、今後の追跡研究を待つ必要があります。
 特に注意いただきたいのは、本研究は多くの人を比較して得られた統計学的な傾向を示したものであり、複数の・・・子どもが・・・・いる・・家庭に・・・おいて・・・第1子が・・・・常に・・発達が・・・良く・・第2子では・・・・・悪い、・・・あるいは・・・・第2子に・・・・対する・・・親の・・関わりは・・・・常に・・少ないと・・・・いったことを・・・・・・示した・・・結果では・・・・ない点・・・です。

 今後は、こうした差が成長とともにどのように変化するのか、また出生順におけるどのような要因が関係しているのかを、より詳細に検討していく必要があります。

 この研究成果は、米国医学会AMA(The American Medical Association)が発行する国際的な査読制医学誌「JAMA Network Open」に現地時間2026年3月6日に掲載されました。

Birth Order Differences in First-Year Neurodevelopment

エコチル調査富山ユニットセンター
 2026年3月

ちょっと詳しく

ASQ-3 質問票

 発達指標のASQ-3(Ages and Stages Questionnaire, Third Edition)とは、保護者の方がお子さんを観察して回答する質問票から得られる指標です。ASQ-3は、コミュニケーション(話す、聞くなど)、粗大運動(立つ、歩くなど)、微細運動(指先で物をつかむなど)、問題解決(手順を考えて行動するなど)、個人・社会性(他人とのやり取りに関する行動など)の5つの領域について各年齢時での発達の度合いを評価します。

母固定効果モデル

 本研究では、同じ母親から生まれた第1子と第2子を比較する「母固定効果モデル(mother fixed-effects model)」を用いました。この解析手法では、きょうだい間で共通する母親や家庭に由来する要因の影響を統計学的に調整することができます。
 たとえば、経済状況や養育方針が異なる母親AさんとBさんの家庭では、それぞれのお子さんの発達環境にも違いがあると考えられます。母固定効果モデルでは、こうした母親や家庭に由来する違いを「母親効果」として、統計的に取り除いたうえできょうだい同士の比較をします。この解析結果は、家庭ごとの違いを取り除いたうえでの「出生順位の違」に着目した数値として解釈できます。