エコチル調査でわかったこと

妊娠中の味噌汁の摂取量と
子どもの睡眠時間は関連する

 ヒトは通常、毎日決まった時間に起床・就寝し、おおむね一定のリズムで生活します。この一定のリズムを「概日(がいじつ)リズム」と呼びます。概日リズムは、ひとりひとりのからだに備わっている機能であり、体内時計とも呼ばれていますが、光を浴びる時間帯や食事などの影響を受けて乱れることが知られています。幼少期の睡眠不足は、からだの発達、とくに肥満と関係することが知られており、子どもの概日リズムがどのようなことの影響を受けるか、様々な角度から研究する必要があります。

 近年、発酵食品が腸内細菌そうに影響を与え健康維持に役立つという情報が増え、かなりの関心を集めています。また、母親の腸内細菌は子に受け継がれることもあり、妊娠中の発酵食品摂取が子の発達や生活習慣に影響を与えるという報告があります。 さらに、近年、概日リズムが腸内細菌そうの影響を受けるという報告がありました。

 そこで、本研究では、お母さんの妊娠中の発酵食品摂取がお子さんの睡眠時間に影響を及ぼす可能性があるのではとの仮説をたて、エコチル調査に参加した72,624組の母子を対象に調べました。

 お母さんの妊娠中の発酵食品の摂取状況は、食事摂取頻度調査票の味噌汁、ヨーグルト、チーズ、納豆の摂取頻度の回答を用いました。また、お子さんの睡眠時間については、米国National Sleep Foundationが示した1歳児における1日の推奨睡眠時間=11~14時間、に満たない11時間未満を「睡眠不足」と設定して検討しました。

  1. 妊娠中の味噌汁摂取量と出生児の睡眠不足の関連
    1日あたりの摂取量が最も少ない群と比較し、より多い群は睡眠不足の子が少なかった。
  2. 妊娠中のヨーグルト摂取量と出生児の睡眠不足の関連
    どの群も睡眠不足の子の発生に差がなかった。
  3. 妊娠中のチーズ摂取量と出生児の睡眠不足の関連
    どの群も睡眠不足の子の発生に差がなかった。
  4. 妊娠中の納豆摂取量と出生児の睡眠不足の関連
    どの群も睡眠不足の子の発生に差がなかった。

 以上より、妊娠中の味噌汁摂取量が少ない群より多い群では、1歳時点の睡眠不足のお子さんの頻度が少なくなるという関連が見られました。一方、ヨーグルト、チーズ、納豆では、摂取量と睡眠不足の関連は見られませんでした。

 本研究が示した結果は、これまで報告のない新規性が高い情報です。しかしながら、妊娠中の味噌汁摂取が子どもの睡眠不足を予防するとまで言及できる情報ではありません。本研究での妊娠中の食事とお子さんの睡眠時間については第3者が測定したものではなく、お母さんの記憶に頼った回答に基づいたものです。また、妊娠中に摂取した味噌汁の成分や腸内細菌が子どもの睡眠時間に影響していたかを直接調べたわけではないので、味噌汁摂取ではない何か別の要因が影響している可能性も否定できません。今後はさらにこの結果を検証しうる介入研究等を行って確かめていく必要があります。

この研究成果は米国科学専門誌「PLOS ONE」に、2019年10月4日付でオンライン掲載されました。

Sugimori et al., Association between maternal fermented food consumption and infant sleep duration: The Japan Environment and Children's Study

エコチル調査富山ユニットセンター
 2019年10月

ちょっと詳しく

概日リズムとは?

 約24時間の周期で変動する生理現象で、ヒトだけでなく動物や植物にも見られ、一般的に体内時計ともいわれます。ヒトをはじめとする哺乳類の場合、視床下部にコントロールする器官があり、光の情報などを受け取ってホルモン分泌しています。近年は視床下部のみならず、肝臓の細胞なども概日リズムを刻む細胞があることがわかってきました。
 高血圧、狭心症、気管支喘息、糖尿病などは、概日リズムの影響を受けると言われています。

睡眠不足の基準

 米国のNational Sleep Foundation は1歳から2歳時点の推奨睡眠時間を11~14時間としています。年代ごとに細かく推奨する睡眠時間が設定されています。

https://www.sleepfoundation.org/press-release/national-sleep-foundation-recommends-new-sleep-times