エコチル調査でわかったこと

味噌汁、ヨーグルト、納豆の摂取頻度と早期早産のなりにくさ(エコチル調査より)

 妊娠37週未満の出産を早産といい、日本の早産率は約5%と、他の先進国と比較しても低いです。その中でも、34週未満の出産を「早期早産」と呼び、生まれた赤ちゃんが小さいと後遺症が残る可能性もあります。早期早産の主要な原因の一つとされているのが細菌感染です。早期早産となった赤ちゃんの卵膜や胎盤には感染の影響がみられることが多く、細菌性腟炎がある方は早産のリスクが高いことがわかっています。また、糖尿病の方、免疫抑制の治療を受けている方は感染がおこりやすいため、早産のリスクが高いと言われています。このように、早産には感染とそれに対する免疫が関係しています。

 ヨーグルトや納豆はプロバイオティクスとも呼ばれ、乳酸菌や納豆菌が腸内細菌を変化させ健康増進にプラスに働くことが次々と報告されています。多数の商品が特定保健用食品の表示を認可されていて、中には免疫力を高め、細菌やウイルスに対する予防効果を示しているものもあります。

 今回、エコチル調査に参加された方の中から、これまでの出産が早産であった方(早産の強力なリスク因子です)や、妊娠高血圧症候群や前置胎盤などの医療として人工的に早産となる可能性がある方を除いた77,667名について検討しました。妊娠前に味噌汁を食べる頻度が週1日以下と答えた人と比べて早期早産のなりやすさ(オッズ比)を調べたところ、週1-2日食べる人では0.58(95%信頼区間(CI) 0.40-0.85)、週3-4日食べる人では0.69(95%CI 0.49-0.98)、週5日以上食べる人では0.62(95%CI 0.44-0.87)であり、いずれも統計学的に早期早産になりにくいということがわかりました。ヨーグルトでは、週1回以下の人と比べて週5回以上食べる人では0.62(95%CI 0.44-0.87)、納豆では、週1回以下の人と比べて週3回以上食べる人では0.60(95%CI 0.43-0.84)であり、統計学的に早期早産になりにくいということがわかりました。(図:該当群を色付きの棒グラフで示しています)。また、早産歴のある女性は納豆を食べた回数の多い方が、早期早産のリスクが下がりました(オッズ比0.52(95%信頼区間 0.28-0.97))。

妊娠前に味噌汁を週1日以上飲んでいた人は、早期早産になりにくい
妊娠前にヨーグルトを週5日以上食べていた人は、早期早産になりにくい
妊娠前に納豆を週3日以上食べていた人は、早期早産になりにくい

 一方、妊娠34~36週に分娩となる後期早産のなりやすさについては、いずれの検討においても摂取頻度との間には関連がみられませんでした。

 我々は過去に、早産された方とされなかった方で、腸内細菌叢が異なることを報告しました。細菌性膣炎のある方、早産の経験がある方にプロバイオティクスをとってもらう研究は世界中でいくつか行われてきましたが、いずれも早産率を下げる効果までは認めていません。エコチル調査と同じ観察型の研究では、ノルウェーの国民調査から、「妊娠初期」に発酵乳飲料をたくさん摂取した女性が、後期早産が少なかったとの報告がありますが、今回の調査と摂取時期に関する尋ね方が、「妊娠前」や「妊娠後」ではなく、「妊娠初期」という尋ね方であったこと、検討した発酵食品が異なったことからか同じ結果ではありませんでした。

 今回の結果からわかったことは、妊娠前に味噌汁、ヨーグルト、納豆をとるように心がけている女性は早期早産のリスクが低いということです。とくに味噌汁は、週に1日以上のペースで食べる方でリスクが低くなる傾向が見られました(ただし、たくさん食べるほど効果が上がるわけではありませんでした)。妊娠後については、たくさん食べても効果はなく、切迫早産の治療にはなりませんので、その点はご注意ください。

※本研究は、「Environmental Health and Preventive Medicine」に2019年5月1日付でオンライン掲載されました。

Ito M, Takamori A, Yoneda S, Shiozaki A, Tsuchida A, Matsumura K, et al. Fermented foods and preterm birth risk from a prospective large cohort study: the Japan Environment and Children's study. Environ Health Prev Med. 2019;24(1):25.

エコチル調査富山ユニットセンター
 2019年5月