教授の挨拶

ご挨拶

富山大学大学院医学薬学研究部法医学講座は,2007年7月に私が講座主任として赴任し,まもなく10年が経過します。この間,教職員,学外関係組織の皆様の献身的な協力をいただき活動を続けて参ることが出来ました。ご協力いただいている関係各位にこの場をお借りして深く感謝申し上げます。

剖検に関しましては,富山県,近隣県から年間200体弱の剖検を受託し,異状死の死因究明に努めております。当教室の人員は非常に限られておりますが,講座の剖検数,富山県の異状死剖検率は全国トップクラスであります。表立ったアピールに適さない活動ではありますが,我々は富山県警察本部と協力しながら,昼夜休日を問わずにその使命を果たし,地域の治安維持に貢献しております。剖検にあたっては,全例に詳細な病理組織学的検索を行い,単に死因究明で終わることなく,その背景因子の検索まで詳細に行って,剖検精度の向上に努めております。ご遺族をはじめとする国民の皆様や医学関係者に剖検の有用性をよりご理解いただけるよう,さらなる設備,能力の充実に努めていきたいと考えております。

当教室は剖検結果の解析を主体とした研究活動にも積極的に取り組んでおり,特に心臓突然死を来し得る遺伝性疾患の病理学的,遺伝子学的診断法を学術的に明らかにしてその成果を疾患の早期発見,ご遺族の突然死の予防につながる活動に加え,認知症,運動機能障害を来す神経変性疾患と高齢者の転倒,自殺の関連や,神経難病の早期病理病態の解明に取り組んでおります。また研究にあたっては,臨床医学(心臓,神経疾患関連診療科)や心臓の電気生理学的検索に高い能力を有する本学工学部研究室の皆様にもご指導を賜わり,共同研究させていただいています。結果公表は法医学分野にとどまることなく,特に近年は循環器系,神経系のトップジャーナルに論文を公表することを目指して研鑽を積んできました。

剖検,研究に対する我々の取り組みは世界の中でも非常に独自性が高いと考えております。私は剖検の目的を死因究明にとどめることなく,その結果を社会,遺族,医学界に還元していく活動が,法医学分野の社会的認知度を高め,医学界からより高い評価を得ることにつながり,意欲的かつ能力の高い医師の活動の場にふさわしい分野に発展していく礎になると信じています。

私たちが行っている剖検のレベルはまだまだ向上の必要があり,取り組むべき医学研究も多数ありますが,人員不足で世に出すべき多くの剖検データがまとめられないで居る状況です。相当忙しい日々になりますが,我々の研究室は教員,職員ともに全員が意欲的に働き,研究する人ばかりであり,意欲的な医師や研究者の方であれば,剖検技術,病理学的診断能力,研究手法の獲得を行いながら満足感をもって活動してもらえる場であると信じています。剖検だけではなく,研究にも意欲的に取り組める若手医師や研究者の入局を待っています。

教授 西田 尚樹