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研究テーマ

敗血症病態の解明、炎症性疾患の病因解明とそれらの新規治療方法の探索

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全身性炎症反応症候群(以下SIRS)の概念はAmerican College of Chest PhysiciansとSociety of Critical Care Medicineの合同カンファレンスにおいて1992年に提唱されたものです。SIRSのうち、感染に起因したものを敗血症(sepsis)と定義しました。さらに、sepsisに臓器障害、臓器還流異常を伴った場合が重症敗血症(severe sepsis)であり、さらに輸液に反応しない、あるいは昇圧剤などの投与を必要とするような低血圧を合併した場合を敗血症性ショック(septic shock)と呼びます。この敗血症性ショックになってしまうと、抗菌薬による感染症治療が進歩した今日においてなお、死亡率が40%から60%になってしまいます。それは、敗血症が単なる病原微生物の感染症ではなく、感染を契機として起こる全身性炎症であることを示し、また、抗微生物治療以外の治療方法が存在する可能性を示唆しています。そのため、よりよい治療成果のために副腎皮質ステロイドや、エラスターゼ阻害薬など、抗菌薬以外の様々な薬剤の併用が検討されています。我々の教室では、敗血症の病態、予後に関わる因子のさらなる究明と、新しい治療法について動物を使った in vivoと、培養細胞系のin vitroの二つの視点から研究しています。

腸上皮細胞の新生機構

腸の表面を覆っている腸上皮細胞は、体内において最も活発に新生活動を行っている細胞の一つであり、この新生活動の異常は種々の疾患と結びついています。我々は、腸上皮細胞の新生活動がどのような戦略で制御され、どの異常がどのような病態と結びついていくのかを明らかとしていくことを目指して研究を進めています。

1.亜鉛トランスポーターによる腸上皮新生制御機構 亜鉛の生体内での移動は亜鉛トランスポーターによって厳密に制御され、亜鉛トランスポーターは亜鉛の輸送を介して、種々の生体応答を調節していることが分かってきました。我々は、腸上皮細胞の新生活動に必須の役割を果たす亜鉛トランスポーターの同定に成功し、腸上皮の新生活動には亜鉛トランスポーターを介した機構が存在することを明らかとしました。現在、亜鉛トランスポーターによる腸上皮細胞の新生活動の制御機構の詳細な解析を進めています。

2.糖鎖による腸上皮新生制御 腸上皮細胞はお互い接着して存在しています。細胞表面にはたくさんの糖鎖が露出していることが分かっています。我々は、腸上皮細胞が糖鎖を通じてどのようなコミュニケーションをとり、それが新生活動とどのように関わっているのか、解析を進めています。

3.敗血症病態におけるパネート細胞の役割 パネート細胞はたくさんの顆粒を持ち、細菌などの刺激に反応して顆粒の中身を放出し、生体の防御に関わっています。敗血症において、パネート細胞の応答はどのように制御され、どのような役割を果たしているのか?敗血症病態におけるパネート細胞の役割を明らかとすることを目指して研究を進めています。

受容体シグナル伝達分子の発現調節機構および神経インスリン受容体シグナルの解析

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敗血症をはじめとした多臓器不全患者において、インスリン抵抗性高血糖は糖尿病既往がなくとも高い死亡率を示すため、警戒すべきリスクファクターのひとつである。インスリンは、血糖調節のみならず脳細胞機能維持に極めて重要であり、学習記憶に関わることが示唆されている。また、インスリン作用不足や応答性低下により、ニューロンの機能が阻害されてニューロン死を引き起こすことが提唱されている。
我々の研究結果から、敗血症マウス大脳皮質においてインスリン受容体発現が増加していることが明らかになった。そのためインスリン受容体を介した細胞内シグナルも増強されていることが示された。大脳皮質等の神経系細胞においては糖代謝に関連する筋組織などとは異なり、全身性炎症時には神経細胞障害を防止するためインスリンシグナルを保持しようとする機構が存在することが考えられる。今後は敗血症病態における、特に神経系のインスリンシグナルの詳細を明らかにし、神経保護機構などの解明に尽力したい。

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