羊膜(ようまく)とは、胎児と羊水を包んでいる薄い膜のことです。赤ちゃんは羊水の中に浮かんで育っていきますが、羊膜はその羊水を保持しているコラーゲンでできた強い膜です(図1A)。

我々はこの羊膜を再生医療材料として研究・開発しています。羊膜は昔から傷や火傷の治療に使用されてきました。近年では、WHOも認めたため、世界的にも目の治療に使われるようになり、本邦でも2014年4月から凍結保存羊膜を用いた治療法が保険収載となりました。この方法では、羊膜組織(細胞)が生きた状態で患部へ移植するため、感染対策に抗生物質を用いますが、ウイルスを防ぐことはできません。
我々は、この問題を解決するためにハイパードライという特殊な方法で羊膜を乾燥させ、γ線滅菌をほどこしたハイパードライヒト乾燥羊膜(HD羊膜)を開発しました。ハイパードライ法は1)真空、2)遠赤外線、3)マイクロウエーブ、の3つを制御して乾燥させる方法で、食品業界では「香りが残る」、「凍結乾燥と異なりバナナやリンゴのような大きな食品を乾燥できる」、ということで商品開発に応用されています。ハイパードライ法を利用することで、生きている羊膜が持つ優れた特徴を残した優れた乾燥羊膜を作ることができました。
羊膜を患者さんの治療へ応用するために、基礎研究として強度を強める、形状を形成する、菌やウイルスなどの微生物に対する効果、薬事開発を目指して物性(強度、物質の透過性、光の透過性、外観の変化、含水率、コラゲナーゼ耐性)の調査を文部科学省からの科学研究費をいただくことで進めてきました。
一方で、2005〜2020年9月までの再生医学講座時代には、眼科、皮膚科、脳外科、耳鼻咽喉科、歯科口腔外科、第二外科、が臨床研究で共同研究を進めていただき、良い結果を得ています(図1B)。特に眼科ではHD羊膜を用いて先進医療Bを富山大学附属病院を中心に全国の11の大学病院などで実施しています。他にも耳鼻咽喉科、救急・皮膚科のご協力で特定臨床研究を実施しています。

富山大学からは、産学連携活動である「創薬・ヘルスケア事業(工学系ヘルスケア)」 支援プロジェクトの支援を受けて、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が指示する安全性試験も進めており、医療機器として認可を取るための 『富山大学の本気』 も入っています。
サクラ精機(株)と(株)HIROKI GROBALの寄付講座である臨床生体材料応用講座、開発企業の(株) INSTINCT BROTHERS によって、特許とノウハウを使って市場化を目指しています。
このように様々な方々からのご協力により、旧再生医学講座からのテーマを引き継ぎ、羊膜細胞を用いた再生医学、HD羊膜の開発を続けることが可能となりました。
本当にありがとうございます。
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- 2023.04.01
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