魚を食べると
「抑うつ状態」になりにくい
~妊娠中のお母さんと
お父さんから見えた結果~
妊娠中や出産後は、「気分が落ち込んで何もしたくない」いわゆる「抑うつ状態」になった経験を持つ方も多くおられると思います。
これまで、魚に多く含まれるDHAやEPAを摂取すると、うつになりにくいということが言われてきました。また、富山大学では、エコチル調査の追加調査から血中のEPA濃度が高い人ほど抑うつ状態になりにくい可能性があることを報告しました(妊娠前期における抑うつ症状と血中ω3系多価不飽和脂肪酸の研究)。
そこでこの度、エコチル調査に参加している妊娠中のお母さん約7万5千人と、そのお父さん約4万人について、魚食の状況と「抑うつ状態」との関連を調べました。
解析は、魚食の量で「少ない」、「やや少ない」、「中程度」、「やや多い」、「多い」の5つにグループ分けをし、「少ない」群と比較してほかのグループでは「抑うつ状態」になりやすかったかどうかを検討しました。
- 妊娠前期
「やや少ない」と「中程度」群で「抑うつ状態」になりにくかった! - 妊娠中後期
「やや少ない」、「中程度」、「やや多い」、「多い」群で「抑うつ状態」になりにくかった! - 出産後1か月
「やや少ない」、「中程度」、「やや多い」群で「抑うつ状態」になりにくかった! - お父さん
「やや多い」群で「抑うつ状態」になりにくかった!
今回の結果を理解するうえで気を付けていただきたいのは、「魚を食べていないから抑うつ状態になりやすいのか」、あるいは、「抑うつ状態だから魚を食べていないのか」はわからないという点です。また、魚を食べている方は一般的に健康意識が高く、魚食習慣は単にそのバロメーターになっていて、ほかの健康習慣の影響による可能性もあります。したがって、魚を食べると「抑うつ状態」になりにくいとタイトルに謳っていますが、あくまでもひとつの可能性としてご理解いただけたらと思います。
エコチル調査富山ユニットセンター
2017年12月
ちょっと詳しく
DHA・EPAって?
DHA(ドコサへキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)は、魚由来の代表的なω3系多価不飽和脂肪酸です。DHAやEPAは血液をサラサラにする成分として知られています。耳にしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
またDHAは、脳や神経にとって大事なものであり、子どもの発育に必要といわれています。そのため、妊娠中や授乳中のお母さんは、より多くのDHAを摂ることが推奨されています。その他、DHAやEPAは、ぜん息やアトピーなどの炎症性疾患、認知機能、気分の落ち込みなどとの関連が示唆されており、現在、研究が進められています。
ココでいう「抑うつ症状」とは?
「抑うつ症状」という言葉にドキッとされた方もいらっしゃるかもしれませんが、「抑うつ症状がある=うつ病」ではありません。
ここでいう抑うつ症状とは“気分が沈んで気持ちがスッキリしない”、“気持ちがソワソワして落ち着かない”といった「心の疲れのサイン」を指しています。
魚を摂るにあたっての注意点
一般的に大きな魚は小さな魚よりも、食物連鎖による濃縮により多くの水銀を含んでいます。水銀は胎児の発育に影響する可能性があり、これからママになる方は、大きい魚を食べる際には量を控える方が良いようです。
その一方で、水銀に関して“特に注意が必要でないもの”もあります。魚は、ω3系多価不飽和脂肪酸以外にも、良質なタンパク質やミネラルなどを含み、妊婦さんにとっては栄養バランスの良い食材ですので、積極的に摂って頂きたいです。
特には注意が必要でないもの
- キハダ
- サケ
- イワシ
- ブリ
- ビンナガ
- アジ
- サンマ
- カツオ
- メジマグロ
- サバ
- タイ