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小学1年生の生活習慣と肥満目次へ

【目的】

小児肥満は遺伝的な影響が強いとされるが、近年の急激な増加の背景には、脂質に富む食事が多くなったことや、テレビの視聴時間の増加や運動不足などの体を動かさない生活習慣の増加が背景にあると考えられている。そこで、両親の肥満や子どもの生活習慣と、小児肥満との関係を評価した。

【方法】

平成8年6〜7月の調査実施時に、富山県内の全小学1年生10,400人を対象とした。質問票と身体測定による調査を行った。回収数10,175人のうち、記載が完全であった8,274人(79.6%)を解析対象とした。学校を介して質問票を配布し、児童の生活習慣に関する質問に両親が回答した。両親の身長と体重は、自己申告制とした。

【結果】

親の肥満、長時間のテレビ視聴、低い身体活動性に肥満との関連性を認めた。起床時刻に肥満との関連性は認めなかったが、遅い就寝時刻と短時間の睡眠に肥満との関連性を認めた。
1)父の肥満と男児の肥満
非肥満の父親をもつ男児の中で肥満の男児は10.0%であったが、肥満の父親をもつ男児の中で肥満の男児は19.2%と、肥満の父親をもつ男児に肥満が多かった。(図:父の肥満と男児の肥満
2)父の肥満と女児の肥満
非肥満の父親をもつ女児の中で肥満の女児は12.0%であったが、肥満の父親をもつ女児の中で肥満の女児は20.3%と、肥満の父親をもつ女児に肥満が多かった。(図:父の肥満と女児の肥満
3)母の肥満と男児の肥満
非肥満の母親をもつ男児の中で肥満の男児は10.4%であったが、肥満の母親をもつ男児の中で肥満の男児は26.6%と、肥満の母親をもつ男児に肥満が多かった。(図:母の肥満と男児の肥満
4)母の肥満と女児の肥満
非肥満の母親をもつ女児の中で肥満の女児は12.0%であったが、肥満の母親をもつ女児の中で肥満の女児は29.8%と、肥満の母親をもつ女児に肥満が多かった。(図:母の肥満と女児の肥満
5)身体活動性と男児の肥満
活発でないと回答した男児の中で肥満の男児は0.0%、ふつうであると回答した男児の中で肥満の男児は13.8%、活発であると回答した男児の中で肥満の男児は13.2%、とても活発であると回答した男児の中で肥満の男児は11.0%と、ふつう、活発であると回答した男児に肥満が多かった。(図:身体活動性と男児の肥満
6)身体活動性と女児の肥満
活発でないと回答した女児の中で肥満の女児は0.0%、ふつうであると回答した女児の中で肥満の女児は17.8%、活発であると回答した女児の中で肥満の女児は15.0%、とても活発であると回答した女児の中で肥満の女児は12.7%と、ふつうであると回答した女児に肥満が多かった。(図:身体活動性と女児の肥満
7)テレビ視聴時間と男児の肥満
1日のテレビ視聴時間が1時間未満の男児の中で肥満の男児は10.8%、1〜2時間の男児の中で肥満の男児は11.8%、2〜3時間の男児の中で肥満の男児は12.9%、3時間以上の男児の中で肥満の男児は13.4%と、1日のテレビ視聴時間が3時間以上の男児に肥満が多かった。(図:テレビ視聴時間と男児の肥満
8)テレビ視聴時間と女児の肥満
1日のテレビ視聴時間が1時間未満の女児の中で肥満の女児は9.8%、1〜2時間の女児の中で肥満の女児は14.0%、2〜3時間の女児の中で肥満の女児は16.4%、3時間以上の女児の中で肥満の女児は18.4%と、1日のテレビ視聴時間が3時間以上の女児に肥満が多かった。(図:テレビ視聴時間と女児の肥満
9)朝食頻度と男児の肥満
朝食をほとんど食べない男児の中で肥満の男児は13.3%、ときどき食べる男児の中で肥満の男児は8.7%、ほぼ毎日食べる男児の中で肥満の男児は12.2%、毎日食べる男児の中で肥満の男児は12.0%と、朝食をほとんど食べない男児に肥満が多かった。(図:朝食頻度と男児の肥満
10)朝食頻度と女児の肥満
朝食をほとんど食べない女児の中で肥満の女児は18.2%、ときどき食べる女児の中で肥満の女児は24.2%、ほぼ毎日食べる女児の中で肥満の女児は16.7%、毎日食べる女児の中で肥満の女児は13.5%と、朝食をときどき食べる女児に肥満が多かった。(図:朝食頻度と女児の肥満
11)間食頻度と男児の肥満
間食をほとんどしない男児の中で肥満の男児は7.8%、2〜3日に1回する男児の中で肥満の男児は18.5%、1日1回する男児の中で肥満の男児は11.7%、1日2回以上する男児の中で肥満の男児は11.9%と、間食を2〜3日に1回する男児に肥満が多かった。(図:間食頻度と男児の肥満
12)間食頻度と女児の肥満
間食をほとんどしない女児の中で肥満の女児は13.4%、2〜3日に1回する女児の中で肥満の女児は12.6%、1日1回する女児の中で肥満の女児は13.7%、1日2回以上する女児の中で肥満の女児は15.4%と、間食を1日2回以上する女児に肥満が多かった。(図:間食頻度と女児の肥満
13)起床時刻と男児の肥満
起床時刻が6時前の男児の中で肥満の男児は13.2%、6〜7時の男児の中で肥満の男児は12.4%、7〜8時の男児の中で肥満の男児は10.2%、8時以降の男児の中で肥満の男児は0.0%と、起床時刻が6時前の男児に肥満が多かった。(図:起床時刻と男児の肥満
14)起床時刻と女児の肥満
起床時刻が6時前の女児の中で肥満の女児は17.1%、6〜7時の女児の中で肥満の女児は14.2%、7〜8時の女児の中で肥満の女児は12.1%、8時以降の女児の中で肥満の女児は0.0%と、起床時刻が6時前の女児に肥満が多かった。(図:起床時刻と女児の肥満
15)就寝時刻と男児の肥満
就寝時刻が9時前の男児の中で肥満の男児は10.4%、9〜10時の男児の中で肥満の男児は11.7%、10〜11時の男児の中で肥満の男児は16.0%、11時以降の男児の中で肥満の男児は14.3%と、就寝時刻が10〜11時の男児に肥満が多かった。(図:就寝時刻と男児の肥満
16)就寝時刻と女児の肥満
就寝時刻が9時前の女児の中で肥満の女児は12.2%、9〜10時の女児の中で肥満の女児は13.6%、10〜11時の女児の中で肥満の女児は18.3%、11時以降の女児の中で肥満の女児は41.7%と、就寝時刻が11時以降の女児に肥満が多かった。(図:就寝時刻と女児の肥満
17)睡眠時間と男児の肥満
睡眠時間が8時間未満の男児の中で肥満の男児は21.6%、8〜9時間の男児の中で肥満の男児は15.9%、9〜10時間の男児の中で肥満の男児は11.0%、10時間以上の男児の中で肥満の男児は5.2%と、睡眠時間が8時間未満の男児に肥満が多かった。(図:睡眠時間と男児の肥満
18)睡眠時間と女児の肥満
睡眠時間が8時間未満の女児の中で肥満の女児は23.7%、8〜9時間の女児の中で肥満の女児は15.6%、9〜10時間の女児の中で肥満の女児は13.3%、10時間以上の女児の中で肥満の女児は11.1%と、睡眠時間が8時間未満の女児に肥満が多かった。(図:睡眠時間と女児の肥満

【考察】

調査の結果、両親の肥満(特に母親の肥満)、低い身体活動性、長時間のテレビ視聴と、肥満との関連性を認めた。また、起床時刻と肥満との関連性は認めなかったが、就寝時刻が遅いほど、睡眠時間が短いほど、肥満と関連していた。横断的な分析のため、生活習慣と肥満との関連における因果関係については断定できないが、先行研究とも一致している。望ましい生活習慣の継続が必要であると考えられる。

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