【目的】

小学生の子どもの生活習慣は、両親の生活習慣の影響を受けるとされる。たとえば、睡眠習慣で見てみると、小学生が睡眠不足になる理由として「両親が寝るのが遅いから自分も遅い」という理由が上位になるのに対して、中学生以降は勉強、テレビなどが睡眠不足の理由の上位となる。子どもの肥満は、両親が肥満であるといった遺伝的な要因の強いことが知られているが、両親が肥満であると子どもが肥満になりやすい理由は、親子で肥満になりやすい生活を送っているという要因もあると考えられている。そこで、両親の肥満と子どもの生活習慣との関連性を評価した。

【方法】

平成８年６〜７月の調査実施時に、富山県内の全小学１年生１０，４００人を対象とした。回収数１０，１７５人のうち、記載が完全であった８，０３０人（７７．２％）を解析対象とした。

【結果】

不規則な朝食摂取、速い食事の速度、長時間のテレビ視聴、短時間の睡眠に肥満の親をもつ児童との関連性を認めた。

１）朝食頻度と親が肥満の男児

朝食を毎日食べる男児の中で肥満の親をもつ男児は１７．４％、ほぼ毎日食べる男児の中で肥満の親をもつ男児は２１．１％、ときどき食べる男児の中で肥満の親をもつ男児は２８．９％、ほとんど食べない男児の中で肥満の親をもつ男児は２５．０％と、朝食をときどき食べる男児に肥満の親が多かった。（図：朝食頻度と親が肥満の男児）

２）朝食頻度と親が肥満の女児

朝食を毎日食べる女児の中で肥満の親をもつ女児は１７．９％、ほぼ毎日食べる女児の中で肥満の親をもつ女児は２４．３％、ときどき食べる女児の中で肥満の親をもつ女児は３０．０％、ほとんど食べない女児の中で肥満の親をもつ女児は３６．４％と、朝食をほとんど食べない女児に肥満の親が多かった。（図：朝食頻度と親が肥満の女児）

３）食べる速さと親が肥満の男児

「食べる速さ」がとても速いと回答した男児の中で肥満の親をもつ男児は２５．０％、速いと回答した男児の中で肥満の親をもつ男児は１９．３％、ふつうと回答した男児の中で肥満の親をもつ男児は１８．４％、遅いと回答した男児の中で肥満の親をもつ男児は１５．５％と、「食べる速さ」がとても速いと回答した男児に肥満の親が多かった。（図：食べる速さと親が肥満の男児）

４）食べる速さと親が肥満の女児

「食べる速さ」がとても速いと回答した女児の中で肥満の親をもつ女児は３０．８％、速いと回答した女児の中で肥満の親をもつ女児は２６．３％、ふつうと回答した女児の中で肥満の親をもつ女児は１７．３％、遅いと回答した女児の中で肥満の親をもつ女児は１８．５％と、「食べる速さ」がとても速いと回答した女児に肥満の親が多かった。（図：食べる速さと親が肥満の女児）

５）テレビ視聴時間と親が肥満の男児

１日のテレビ視聴時間が１時間未満の男児の中で肥満の親をもつ男児は１３．５％、１〜２時間の男児の中で肥満の親をもつ男児は１７．７％、２〜３時間の男児の中で肥満の親をもつ男児は２０．７％、３時間以上の男児の中で肥満の親をもつ男児は２０．４％と、１日のテレビ視聴時間が２〜３時間、３時間以上の男児に肥満の親が多かった。（図：テレビ視聴時間と親が肥満の男児）

６）テレビ視聴時間と親が肥満の女児

１日のテレビ視聴時間が１時間未満の女児の中で肥満の親をもつ女児は１５．３％、１〜２時間の女児の中で肥満の親をもつ女児は１７．４％、２〜３時間の女児の中で肥満の親をもつ女児は２２．２％、３時間以上の女児の中で肥満の親をもつ女児は２５．０％と、１日のテレビ視聴時間が３時間以上の女児に肥満の親が多かった。（図：テレビ視聴時間と親が肥満の女児）

７）睡眠時間と親が肥満の男児

睡眠時間が８時間未満の男児の中で肥満の親をもつ男児は２２．０％、８〜９時間の男児の中で肥満の親をもつ男児は２１．０％、９〜１０時間の男児の中で肥満の親をもつ男児は１７．０％、１０時間以上の男児の中で肥満の親をもつ男児は１４．１％と、睡眠時間が８時間未満の男児に肥満の親が多かった。（図：睡眠時間と親が肥満の男児）

８）睡眠時間と親が肥満の女児

睡眠時間が８時間未満の女児の中で肥満の親をもつ女児は２５．９％、８〜９時間の女児の中で肥満の親をもつ女児は２１．０％、９〜１０時間の女児の中で肥満の親をもつ女児は１７．７％、１０時間以上の女児の中で肥満の親をもつ女児は１７．１％と、睡眠時間が８時間未満の女児に肥満の親が多かった。（図：睡眠時間と親が肥満の女児）

【考察】

今回の調査から、両親が肥満の子どもは、朝食の欠食、食べる速度が速い、テレビの視聴時間が長い、睡眠時間が短い傾向にあった。以上から、両親に肥満があると、子どもが肥満になりやすい生活を送っている可能性のあることが示唆された。子どもの生活習慣の改善は、親子で取り組むことが重要であることを意味していると考えられる。