本文へスキップ

 

生活習慣・社会環境と小学4年生の肥満目次へ

【目的】

小児肥満は、遺伝的な影響が強いとされるが、近年の急激な増加の背景には、脂質に富む食事が多くなったことや、テレビの視聴時間の増加や運動不足などの体を動かさない生活習慣の増加が背景にあると考えられている。また、子どもの生活習慣は周囲の社会環境の影響を受けると考えられる。そこで、両親の肥満や子どもの生活習慣と、小児肥満との関係を明らかにするとともに、社会環境として、居住地域、親の就業状況、兄弟の有無と、子どもの生活習慣との関連性を評価した。

【方法】

平成11年6月の調査実施時に、富山県内の全小学4年生10,438人を対象とした。9,378人から回収され、記載が完全であった8,218人(78.7%)を解析対象とした。質問票は、県内の各小学校を介して対象児童に配布され、両親と児童が回答し厳封の上、各小学校を介して回収された。質問内容は、児童の生活習慣(食習慣、運動習慣、睡眠習慣)、両親の体格などが含まれる。食習慣については、朝食の摂取頻度で、間食については、1日の間食回数で評価した。運動習慣は、同年代の子供と比較した活発さで評価した。睡眠習慣は、睡眠時間で評価した。

【結果】

@生活習慣と肥満(1〜12)
 朝食の欠食、低い身体活動性、長時間のテレビ視聴、長時間のテレビゲーム、短時間の睡眠に肥満との関連性を認めた。
A生活環境と肥満(13〜20)
 祖母との同居、祖父母との同居に肥満との関連性を認めたが、母親の非常勤職、無職(主婦)は肥満との関連性が低かった。
B生活環境と生活習慣(21〜35)
 町に住んでいる児童は、市に住んでいる児童と比較して、長時間のテレビ視聴、短時間の睡眠との関連性が高く、村に住んでいる児童は、低い身体活動性との関連性が低かった。祖父母と同居している児童は、朝食の欠食との関連性は低いが、高い間食頻度との関連性が高く、祖母のみと同居している児童は、高い間食頻度、長時間のテレビ視聴との関連性が高かった。兄弟と同居していない(一人っ子含む)児童は、長時間のテレビゲーム、短時間の睡眠との関連性が高かった。母親が非常勤職の児童は、高い間食頻度、短時間の睡眠との関連性が低く、母親が無職(主婦)の児童は、高い間食頻度、長時間のテレビ視聴、短時間の睡眠との関連性は低いが、低い身体活動性との関連性が高かった。母親の肥満は、朝食の欠食、低い身体活動性、長時間のテレビ視聴、長時間のテレビゲームとの関連性が高かった。

1)朝食頻度と男児の肥満

朝食を毎日食べる男児の中で肥満の男児は17.8%、ほぼ毎日食べる男児の中で肥満の男児は27.8%、ときどき食べる男児の中で肥満の男児は29.6%、ほとんど食べない男児の中で肥満の男児は45.5%と、朝食をほとんど食べない男児に肥満が多かった。(図:朝食頻度と男児の肥満

2)朝食頻度と女児の肥満

朝食を毎日食べる女児の中で肥満の女児は13.3%、ほぼ毎日食べる女児の中で肥満の女児は16.7%、ときどき食べる女児の中で肥満の女児は27.1%、ほとんど食べない女児の中で肥満の女児は40.0%と、朝食をほとんど食べない女児に肥満が多かった。(図:朝食頻度と女児の肥満

3)間食頻度と男児の肥満

間食を1日2回以上する男児の中で肥満の男児は22.1%、1日1回する男児の中で肥満の男児は17.7%、2〜3日に1回する男児の中で肥満の男児は19.9%、ほとんどしない男児の中で肥満の男児は20.1%と、間食を1日2回以上する男児に肥満が多かった。(図:間食頻度と男児の肥満

4)間食頻度と女児の肥満

間食を1日2回以上する女児の中で肥満の女児は17.2%、1日1回する女児の中で肥満の女児は13.3%、2〜3日に1回する女児の中で肥満の女児は14.7%、ほとんどしない女児の中で肥満の女児は9.2%と、間食を1日2回以上する女児に肥満が多かった。(図:間食頻度と女児の肥満

5)身体活動性と男児の肥満

とても活発であると回答した男児の中で肥満の男児は13.6%、活発であると回答した男児の中で肥満の男児は18.2%、あまり活発でないと回答した男児の中で肥満の男児は25.5%、活発でないと回答した男児の中で肥満の男児は35.6%と、活発でないと回答した男児に肥満が多かった。(図:身体活動性と男児の肥満

6)身体活動性と女児の肥満

とても活発であると回答した女児の中で肥満の女児は10.5%、活発であると回答した女児の中で肥満の女児は12.5%、あまり活発でないと回答した女児の中で肥満の女児は19.8%、活発でないと回答した女児の中で肥満の女児は20.3%と、活発でないと回答した女児に肥満が多かった。(図:身体活動性と女児の肥満

7)テレビ視聴時間と男児の肥満

1日のテレビ視聴時間が1時間未満の男児の中で肥満の男児は14.0%、1〜2時間の男児の中で肥満の男児は17.9%、2〜3時間の男児の中で肥満の男児は21.1%、3〜4時間の男児の中で肥満の男児は25.5%、4時間以上の男児の中で肥満の男児は26.0%と、1日のテレビ視聴時間が4時間以上の男児に肥満が多かった。(図:テレビ視聴時間と男児の肥満

8)テレビ視聴時間と女児の肥満

1日のテレビ視聴時間が1時間未満の女児の中で肥満の女児は10.1%、1〜2時間の女児の中で肥満の女児は12.2%、2〜3時間の女児の中で肥満の女児は16.3%、3〜4時間の女児の中で肥満の女児は18.1%、4時間以上の女児の中で肥満の女児は18.8%と、1日のテレビ視聴時間が4時間以上の女児に肥満が多かった。(図:テレビ視聴時間と女児の肥満

9)テレビゲーム時間と男児の肥満

1日テレビゲームをしない男児の中で肥満の男児は16.5%、1時間未満の男児の中で肥満の男児は18.2%、1〜2時間の男児の中で肥満の男児は19.9%、2時間以上の男児の中で肥満の男児は23.1%と、1日のテレビゲーム時間が2時間以上の男児に肥満が多かった。(図:テレビゲーム時間と男児の肥満

10)テレビゲーム時間と女児の肥満

1日テレビゲームをしない女児の中で肥満の女児は11.6%、1時間未満の女児の中で肥満の女児は16.3%、1〜2時間の女児の中で肥満の女児は16.2%、2時間以上の女児の中で肥満の女児は13.7%と、1日のテレビゲーム時間が1時間未満、1〜2時間の女児に肥満が多かった。(図:テレビゲーム時間と女児の肥満

11)睡眠時間と男児の肥満

睡眠時間が7.5時間未満の男児の中で肥満の男児は34.9%、7.5〜8.0時間の男児の中で肥満の男児は24.5%、8.0〜8.5時間の男児の中で肥満の男児は21.5%、8.5〜9.0時間の男児の中で肥満の男児は17.4%、9.0〜9.5時間の男児の中で肥満の男児は14.6%、9.5時間以上の男児の中で肥満の男児は14.8%と、睡眠時間が7.5時間未満の男児に肥満が多かった。(図:眠時間と男児の肥満

12)睡眠時間と女児の肥満

睡眠時間が7.5時間未満の女児の中で肥満の女児は23.1%、7.5〜8.0時間の女児の中で肥満の女児は19.1%、8.0〜8.5時間の女児の中で肥満の女児は15.6%、8.5〜9.0時間の女児の中で肥満の女児は12.5%、9.0〜9.5時間の女児の中で肥満の女児は11.9%、9.5時間以上の女児の中で肥満の女児は5.5%と、睡眠時間が7.5時間未満の女児に肥満が多かった。(図:睡眠時間と女児の肥満

13)居住地域と男児の肥満

市に住んでいる男児の中で肥満の男児は17.7%、町に住んでいる男児の中で肥満の男児は20.7%、村に住んでいる男児の中で肥満の男児は18.9%と、町に住んでいる男児に肥満が多かった。(図:居住地域と男児の肥満

14)居住地域と女児の肥満

市に住んでいる女児の中で肥満の女児は14.0%、町に住んでいる女児の中で肥満の女児は12.8%、村に住んでいる女児の中で肥満の女児は20.6%と、村に住んでいる女児に肥満が多かった。(図:居住地域と男児の肥満

15)祖父母の同居と男児の肥満

祖父母と同居している男児の中で肥満の男児は19.3%、祖母のみと同居している男児の中で肥満の男児は22.9%、祖父のみと同居している男児の中で肥満の男児は17.5%、核家族の男児の中で肥満の男児は16.3%と、祖母のみと同居している男児に肥満が多かった。(図:祖父母の同居と男児の肥満

16)祖父母の同居と女児の肥満

祖父母と同居している女児の中で肥満の女児は15.2%、祖母のみと同居している女児の中で肥満の女児は15.9%、祖父のみと同居している女児の中で肥満の女児は10.7%、核家族の女児の中で肥満の女児は11.9%と、祖父母または祖母のみと同居している女児に肥満が多かった。(図:祖父母の同居と女児の肥満

17)兄弟の同居と男児の肥満

兄弟と同居している男児の中で肥満の男児は18.3%であったが、兄弟と同居していない男児の中で肥満の男児は21.4%と、兄弟と同居していない男児に肥満が多かった。(図:兄弟の同居と男児の肥満

18)兄弟の同居と女児の肥満

兄弟と同居している女児の中で肥満の女児は13.6%であったが、兄弟と同居していない女児の中で肥満の女児は16.0%と、兄弟と同居していない女児に肥満が多かった。(図:兄弟の同居と女児の肥満

19)母の就業形態と男児の肥満

常勤職の母親をもつ男児の中で肥満の男児は20.7%、非常勤職の母親をもつ男児の中で肥満の男児は16.4%、無職の母親をもつ男児の中で肥満の男児は16.6%と、常勤職の母親をもつ男児に肥満が多かった。(図:母の就業形態と男児の肥満

20)母の就業形態と女児の肥満

常勤職の母親をもつ女児の中で肥満の女児は15.7%、非常勤職の母親をもつ女児の中で肥満の女児は11.6%、無職の母親をもつ女児の中で肥満の女児は12.0%と、常勤職の母親をもつ女児に肥満が多かった。(図:母の就業形態と女児の肥満

21)居住地域と身体活動性

身体活動性について、「とても活発」「活発」を『活発である』、「あまり活発でない」「活発でない」を『活発でない』にしたとき、市に住んでいる児童の中で活発でないと回答した児童は22.5%、町に住んでいる児童の中で活発でないと回答した児童は23.8%、村に住んでいる児童の中で活発でないと回答した児童は13.0%と、町に住んでいる児童に活発でないと回答した児童が多かった。(図:居住地域と身体活動性

22)居住地域とテレビ視聴時間

1日のテレビ視聴時間について、2時間未満を『短い』、2時間以上を『長い』にしたとき、市に住んでいる児童の中で長い児童は36.0%、町に住んでいる児童の中で長い児童は39.6%、村に住んでいる児童の中で長い児童は45.0%と、村に住んでいる児童に1日のテレビ視聴時間の長い児童が多かった。(図:居住地域とテレビ視聴時間

23)居住地域とテレビゲーム時間

1日のテレビゲーム時間について、1時間未満を『短い』、1時間以上を『長い』にしたとき、市に住んでいる児童の中で長い児童は23.8%、町に住んでいる児童の中で長い児童は25.5%、村に住んでいる児童の中で長い児童は17.0%と、町に住んでいる児童に1日のテレビゲーム時間の長い児童が多かった。(図:居住地域とテレビゲーム時間

24)居住地域と睡眠時間

睡眠時間について、8.5時間以上を『長い』、8.5時間未満を『短い』にしたとき、市に住んでいる児童の中で短い児童は33.7%、町に住んでいる児童の中で短い児童は36.8%、村に住んでいる児童の中で短い児童は33.0%と、町に住んでいる児童に睡眠時間の短い児童が多かった。(図:居住地域と睡眠時間

25)祖父母の同居と朝食摂取

朝食の摂取について、「毎日食べる」「ほぼ毎日」を『食べる』、「ときどき」「ほとんど食べない」を『食べない』にしたとき、祖父母と同居している児童の中で食べない児童は5.7%、祖母のみと同居している児童の中で食べない児童は7.5%、祖父のみと同居している児童の中で食べない児童は7.9%、核家族の児童の中で食べない児童は7.3%と、祖父のみと同居している児童に朝食を食べない児童が多かった。(図:祖父母の同居と朝食摂取

26)祖父母の同居と間食頻度

間食の頻度について、1日1回未満を『少ない』、1日2回以上を『多い』にしたとき、祖父母と同居している児童の中で多い児童は13.1%、祖母のみと同居している児童の中で多い児童は12.8%、祖父のみと同居している児童の中で多い児童は7.9%、核家族の児童の中で多い児童は8.9%と、祖父母と同居している児童に間食の回数の多い児童が多かった。(図:祖父母の同居と間食頻度

27)兄弟の同居とテレビゲーム時間

1日のテレビゲーム時間について、1時間未満を『短い』、1時間以上を『長い』にしたとき、兄弟と同居している児童の中で長い児童は23.9%であったが、兄弟と同居していない児童の中で長い児童は27.7%と、兄弟と同居していない児童に1日のテレビゲーム時間の長い児童が多かった。(図:兄弟の同居とテレビゲーム時間

28)兄弟の同居と睡眠時間

睡眠時間について、8.5時間以上を『長い』、8.5時間未満を『短い』にしたとき、兄弟と同居している児童の中で短い児童は34.2%であったが、兄弟と同居していない児童の中で短い児童は39.6%と、兄弟と同居していない児童に睡眠時間の短い児童が多かった。(図:兄弟の同居と睡眠時間

29)母の就業形態と間食頻度

間食の頻度について、1日1回未満を『少ない』、1日2回以上を『多い』にしたとき、常勤職の母親をもつ児童の中で多い児童は12.6%、非常勤職の母親をもつ児童の中で多い児童は9.9%、無職の母親をもつ児童の中で多い児童は9.0%と、常勤職の母親をもつ児童に間食の回数の多い児童が多かった。(図:母の就業形態と間食頻度

30)母の就業形態とテレビ視聴時間

1日のテレビ視聴時間について、2時間未満を『短い』、2時間以上を『長い』にしたとき、常勤職の母親をもつ児童の中で長い児童は38.9%、非常勤職の母親をもつ児童の中で長い児童は37.7%、無職の母親をもつ児童の中で長い児童は32.1%と、常勤職の母親をもつ児童に1日のテレビ視聴時間の長い児童が多かった。(図:母の就業形態とテレビ視聴時間

31)母の就業形態と睡眠時間

睡眠時間について、8.5時間以上を『長い』、8.5時間未満を『短い』にしたとき、常勤職の母親をもつ児童の中で短い児童は38.3%、非常勤職の母親をもつ児童の中で短い児童は31.6%、無職の母親をもつ児童の中で短い児童は30.3%と、常勤職の母親をもつ児童に睡眠時間の短い児童が多かった。(図:母の就業形態と睡眠時間

32)母の肥満と朝食摂取

朝食の摂取について、「毎日食べる」「ほぼ毎日」を『食べる』、「ときどき」「ほとんど食べない」を『食べない』にしたとき、非肥満の母親をもつ児童の中で食べない児童は6.4%であったが、肥満の母親をもつ児童の中で食べない児童は10.4%と、肥満の母親をもつ児童に食べない児童が多かった。(図:母の肥満と朝食摂取

33)母の肥満と身体活動性

身体活動性について、「とても活発」「活発」を『活発である』、「あまり活発でない」「活発でない」を『活発でない』にしたとき、非肥満の母親をもつ児童の中で活発でないと回答した児童は22.3%であったが、肥満の母親をもつ児童の中で活発でないと回答した児童は28.7%と、肥満の母親をもつ児童に活発でないと回答した児童が多かった。(図:母の肥満と身体活動性

34)母の肥満とテレビ視聴時間

1日のテレビ視聴時間について、2時間未満を『短い』、2時間以上を『長い』にしたとき、非肥満の母親をもつ児童の中で長い児童は36.2%であったが、肥満の母親をもつ児童の中で長い児童は47.7%と、肥満の母親をもつ児童に1日のテレビ視聴時間の長い児童が多かった。(図:母の肥満とテレビ視聴時間

35)母の肥満とテレビゲーム時間

1日のテレビゲーム時間について、1時間未満を『短い』、1時間以上を『長い』にしたとき、非肥満の母親をもつ児童の中で長い児童は23.6%であったが、肥満の母親をもつ児童の中で長い児童は30.8%と、肥満の母親をもつ児童に1日のテレビゲーム時間の長い児童が多かった。(図:母の肥満とテレビゲーム時間

【考察】

調査の結果、小学1年時の肥満と関連していた生活習慣は、小学4年時においても肥満と関連していた。また、居住地域、親の就業状況、兄弟の有無といった社会環境と生活習慣との関連性を認めた。以上から、小児期からの望ましい生活習慣の確立には、家族や地域社会の協力が必要であると考えられる。

バナースペース

連絡先

〒930-0194
富山市杉谷2630

TEL 076-434-7270
FAX 076-434-5022