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小学4年生の登校回避感情目次へ

【目的】

近年、不登校児童の増加が問題となっている。「学校に行きたくない」という登校回避感情は、程度の差こそあれ、ある程度の割合で児童が持っているが、その中で強い登校回避感情を持ちつつ学校に通っている児童の一部は、その後に不登校となることが指摘されている。したがって、登校回避感情を持つ児童の割合を減少させることは、不登校の減少にもつながると考えられる。そこで、登校回避感情と関連する生活習慣と心理状況を明らかにすることを目的とした。

【方法】

平成11年6月の調査実施時に、富山県内の全小学4年生10,438人を対象とした。学校を介して質問票を配布し、児童・両親が回答して密封の上、学校を介して回収した。9,378人から回収され、記載が完全であった7,938人(76.0%)を解析対象とした。登校回避感情は、「学校に行きたくないと思うことはありますか」の質問に対して、「よくある」から「まったくない」までの4段階で回答を得て、「よくある」と回答した児童を回避感情ありとした。

【結果】

登校回避感情をもつ児童は567人(7.1%)であった。

1)朝食摂取と登校回避感情

朝食を食べる児童の中で回避感情を持っている児童は6.8%であったが、食べない児童の中で回避感情を持っている児童は12.1%と、朝食を食べない児童に回避感情を持っていることが多かった。(図:朝食摂取と登校回避感情

2)間食摂取と登校回避感情

1日の間食回数が1回以下の児童の中で回避感情を持っている児童は7.0%であったが、2回以上の児童の中で回避感情を持っている児童は8.4%と、1日の間食回数が2回以上の児童に回避感情を持っていることが多かった。(図:間食摂取と登校回避感情

3)運動と登校回避感情

運動をする児童の中で回避感情を持っている児童は6.4%であったが、しない児童の中で回避感情を持っている児童は9.5%と、運動をしない児童に回避感情を持っていることが多かった。(図:運動と登校回避感情

4)テレビ視聴時間と登校回避感情

1日のテレビ視聴時間が2時間未満の児童の中で回避感情を持っている児童は6.4%であったが、2時間以上の児童の中で回避感情を持っている児童は8.4%と、1日のテレビ視聴時間が2時間以上の児童に回避感情を持っていることが多かった。(図:テレビ視聴時間と登校回避感情

5)起床時刻と登校回避感情

起床時刻が7時前の児童の中で回避感情を持っている児童は6.7%であったが、7時以降の児童の中で回避感情を持っている児童は10.4%と、起床時刻が7時以降の児童に回避感情を持っていることが多かった。(図:起床時刻と登校回避感情

6)就寝時刻と登校回避感情

就寝時刻が10時前の児童の中で回避感情を持っている児童は6.7%であったが、10時以降の児童の中で回避感情を持っている児童は8.4%と、就寝時刻が10時以降の児童に回避感情を持っていることが多かった。(図:就寝時刻と登校回避感情

7)睡眠時間と登校回避感情

睡眠時間が9時間未満の児童の中で回避感情を持っている児童は7.0%であったが、9時間以上の児童の中で回避感情を持っている児童は7.4%と、睡眠時間と回避感情にはあまり関連がなかった。(図:睡眠時間と登校回避感情

8)楽しい事と登校回避感情

楽しい事があると回答した児童の中で回避感情を持っている児童は6.2%であったが、ないと回答した児童の中で回避感情を持っている児童は19.1%と、楽しい事がないと回答した児童に回避感情を持っていることが多かった。(図:楽しい事と登校回避感情

9)イライラする事と登校回避感情

イライラする事があると回答した児童の中で回避感情を持っている児童は9.1%であったが、ないと回答した児童の中で回避感情を持っている児童は2.7%と、イライラする事があると回答した児童に回避感情を持っていることが多かった。(図:イライラする事と登校回避感情

10)感情不安定と登校回避感情

感情不安定があると回答した児童の中で回避感情を持っている児童は8.8%であったが、ないと回答した児童の中で回避感情を持っている児童は4.6%と、感情不安定があると回答した児童に回避感情を持っていることが多かった。(図:感情不安定と登校回避感情

11)自分を認める人と登校回避感情

自分を認める人がいると回答した児童の中で回避感情を持っている児童は6.1%であったが、いないと回答した児童の中で回避感情を持っている児童は13.8%と、自分を認める人がいないと回答した児童に回避感情を持っていることが多かった。(図:自分を認める人と登校回避感情

12)仲の良い友達と登校回避感情

仲の良い友達がいると回答した児童の中で回避感情を持っている児童は6.6%であったが、いないと回答した児童の中で回避感情を持っている児童は23.1%と、仲の良い友達がいないと回答した児童に回避感情を持っていることが多かった。(図:仲の良い友達と登校回避感情

13)両親への相談と登校回避感情

両親に相談すると回答した児童の中で回避感情を持っている児童は6.1%であったが、しないと回答した児童の中で回避感情を持っている児童は9.4%と、両親に相談しないと回答した児童に回避感情を持っていることが多かった。(図:両親への相談と登校回避感情

14)得意な事と登校回避感情

得意な事があると回答した児童の中で回避感情を持っている児童は6.6%であったが、ないと回答した児童の中で回避感情を持っている児童は13.1%と、得意な事がないと回答した児童に回避感情を持っていることが多かった。(図:得意な事と登校回避感情

15)自分が好きかどうかと登校回避感情

自分が好きと回答した児童の中で回避感情を持っている児童は5.7%であったが、嫌いと回答した児童の中で回避感情を持っている児童は18.1%と、自分が嫌いと回答した児童に回避感情を持っていることが多かった。(図:自分が好きかどうかと登校回避感情

【考察】

今回の調査から、登校回避感情を持つ児童は、朝食を欠食する、間食摂取頻度が多い、運動不足、テレビの視聴時間が長い、起床時刻が遅い、就寝時刻が遅い、などの傾向があることが分かった。また、登校回避感情を持つ児童は、学校で楽しいことがない、イライラする、感情が不安定である、自分を認めてくれる人がいない、仲のよい友達がいない、両親にあまり相談しない、得意なことがない、自分が好きではない、などの心理状況を持つことが分かった。以上から、登校回避感情を持つ児童は、あまり望ましい生活習慣を送っていないといえる。したがって、逆に、望ましくない生活習慣を送っている児童は、単に生活習慣にのみ焦点を当てるのではなく、背景にメンタルヘルスの問題がないかについても配慮が必要ではないかと考えられる。また、登校回避感情を持つ児童は、その他の心理状況についても、よい心理状況とはいえなかった。逆に、友達をつくる、相談相手をつくる、得意なものをつくる、といったことが、登校回避感情の軽減につながる可能性もあるといえる。この調査の限界として、横断的な分析であるので、因果関係については断定できないことや、登校回避感情を持つ児童に対しては個別性を重視して対応を考える必要があることに留意すべきである。

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