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3歳時の生活習慣と中学1年時の肥満目次へ

【目的】

成人期の生活習慣病予防には、小児期からの予防対策が必要であると考えられている。そこで、3歳時の生活習慣の10年後の肥満への影響について評価することを目的とした。

【方法】

平成元年4月2日〜平成2年4月1日生まれで、3歳児健診時の平成4年4月〜平成6年3月に富山県在住の全児童10,117人を対象とした。質問票と身体測定による調査を行った。回収数9,645人のうち、社会環境や生活習慣などの質問に完全回答の得られた8,265人から、3歳時での肥満者673人を除いた7,592人を追跡対象とし、平成14年6月の対象者が中学1年生の時に追跡調査を行い、追跡可能であった5,520人(72.7%)を解析対象とした。食習慣(朝食の摂取頻度、間食の摂取頻度、間食時間の規則性)、運動習慣(同年代の児と比較した場合の活発さ、運動時間)、睡眠習慣(起床時刻、就寝時刻、睡眠時間)に関する回答を得た。

【結果】

父母の肥満は小児肥満の危険因子であったが、特に母親が肥満の場合、肥満の発生率が高かった。食習慣では、朝食を「毎日食べる」と比較して「ときどき」食べない、間食時間を「いつも決めている」と比較して「決めていない」において、肥満の発生率が高かった。間食の回数と肥満発生との関連性は認めなかった。運動習慣では、同年代の児と比較しての活発さで評価した場合は、「活発」であると比較して「活発でない」において、肥満の発生率が低かった。睡眠習慣では、起床時刻が早いほど、就寝時刻が遅いほど、睡眠時間が短いほど、肥満の発生率が高かった。

1)父の肥満と中学1年時の肥満発生率

非肥満の父親をもつ生徒の中で肥満の生徒は11.6%であったが、肥満の父親をもつ生徒の中で肥満の生徒は22.0%と、肥満の父親をもつ生徒に肥満が多かった。(図:父の肥満と中学1年時の肥満発生率

2)母の肥満と中学1年時の肥満発生率

非肥満の母親をもつ生徒の中で肥満の生徒は12.2%であったが、肥満の母親をもつ生徒の中で肥満の生徒は30.4%と、肥満の母親をもつ生徒に肥満が多かった。(図:母の肥満と中学1年時の肥満発生率

3)朝食頻度と中学1年時の肥満発生率

朝食を毎日食べる生徒の中で肥満の生徒は12.8%、ときどき食べない生徒の中で肥満の生徒は15.9%、ほとんど食べない生徒の中で肥満の生徒は13.8%と、朝食をときどき食べない生徒に肥満が多かった。(図:食頻度と中学1年時の肥満発生率

4)間食時間と中学1年時の肥満発生率

間食する時間をいつも決めている生徒の中で肥満の生徒は10.4%、だいたい決めている生徒の中で肥満の生徒は13.1%、決めていない生徒の中で肥満の生徒は15.1%と、間食する時間を決めていない生徒に肥満が多かった。(図:間食時間と中学1年時の肥満発生率

5)間食頻度と中学1年時の肥満発生率

間食を1日に1回する生徒の中で肥満の生徒は14.4%、2回する生徒の中で肥満の生徒は12.6%、3回する生徒の中で肥満の生徒は14.9%、4回以上する生徒の中で肥満の生徒は12.2%であり、間食頻度と肥満との関係ははっきりしなかった。(図:間食頻度と中学1年時の肥満発生率

6)身体活動性と中学1年時の肥満発生率

活発であると回答した生徒の中で肥満の生徒は14.9%、まあまあ活発であると回答した生徒の中で肥満の生徒は11.9%、活発でないと回答した生徒の中で肥満の生徒は7.4%と、活発であると回答している生徒に肥満が多い傾向にあった。(図:体活動性と中学1年時の肥満発生率

7)運動時間と中学1年時の肥満発生率

運動時間が30分未満の生徒の中で肥満の生徒は11.9%、30分〜1時間の生徒の中で肥満の生徒は13.1%、1〜2時間の生徒の中で肥満の生徒は14.6%、2時間以上の生徒の中で肥満の生徒は15.2%と、運動時間が2時間以上の生徒に肥満が多い傾向にあった。(図:運動時間と中学1年時の肥満発生率

8)起床時刻と中学1年時の肥満発生率

起床時刻が6時前の生徒の中で肥満の生徒は16.4%、6〜7時の生徒の中で肥満の生徒は14.3%、7〜8時の生徒の中で肥満の生徒は13.1%、8時以降の生徒の中で肥満の生徒は13.5%と、起床時刻が6時前の生徒に肥満が多い傾向にあった。(図:起床時刻と中学1年時の肥満発生率

9)就寝時刻と中学1年時の肥満発生率

就寝時刻が9時前の生徒の中で肥満の生徒は13.9%、9〜10時の生徒の中で肥満の生徒は11.7%、10〜11時の生徒の中で肥満の生徒は16.0%、11時以降の生徒の中で肥満の生徒は16.6%と、就寝時刻が11時以降の生徒に肥満が多かった。(図:就寝時刻と中学1年時の肥満発生率

10)睡眠時間と中学1年時の肥満発生率

睡眠時間が9時間未満の生徒の中で肥満の生徒は20.0%、9〜10時間の生徒の中で肥満の生徒は15.1%、10〜11時間の生徒の中で肥満の生徒は12.1%、11時間以上の生徒の中で肥満の生徒は12.2%と、睡眠時間が9時間未満の生徒に肥満が多かった。(図:眠時間と中学1年時の肥満発生率

【考察】

3歳時の生活習慣と中学一年時の肥満との関連における調査の結果、3歳時の生活習慣のうち、朝食の欠食、不規則な間食摂取、遅い就寝時刻、短い睡眠時間は、10年後の肥満と関連していた。朝食の欠食、不規則な間食摂取、遅い就寝時刻、短い睡眠時間は、過去の富山スタディの調査結果とも一致する結果である。運動習慣については、運動時間が長いほど、活発であるほど、肥満が多い傾向という予想とは逆の結果であった。運動習慣と肥満との関係は、富山スタディの中でも必ずしも一貫しておらず、運動量が少ないほど肥満が多い場合から逆の場合まであり、今後検討していく必要がある。以上の結果から、小児肥満の予防には、就学前からの望ましい生活習慣の確立が重要であると考えられる。

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