人間科学(1)講座  金森 昌彦

平成21年4月1日より富山大学大学院医学薬学研究部(医学部看護学科)人間科学(1)講座を担当しております。私はこれまで本学附属病院にて整形外科医として勤務し、特に骨軟部腫瘍外科学と脊椎外科学とを中心に担当して参りましたが、このいずれの領域もが、人間の「痛み」と「こころ」が強くかかわる分野でありました。確かに、痛みとは「苦痛」という文字が表すように、人間の大きな「苦」の一つであり、あのシュバイツアー先生にして、「痛みは耐え難い暴君だ」と言わせたものであり、時には生きる望みさえなくしてしまうほどであることを臨床の場からも強く感じさせます。少しでも苦痛が和らぐことを期待して、私は患者さんの「こころ」を支える気持ちでこれまでの臨床的治療を行ってきました。このような経緯の中で、私は人間科学(1)講座を担当するにあたり、「痛み」をテーマにした「運動器人間科学」というフィールドを構築しようと考えるに至りました。そして整形外科が扱う運動器における諸問題を広く考えつつ、「運動器人間科学入門」と称して、これまでの自分の医師人生の半生を書籍にまとめ、就任と同時に上梓いたしました。今後、私の講座では「痛みの看護学」「運動器骨格の病態と疼痛学」をメインテーマとして、これまでの自分のライフワークであった「骨肉腫の分化誘導研究」という実験研究も含めて展開し、人間科学の視点から、本学看護教育に貢献させていただく所存でございます。


私が本学に学生として入学をしたのはすでに30年以上も前になり、当時を思い起こすと現在の杉谷キャンパスの人材と建物、教育内容には隔世の感があります。入学当時にはまだ建築もされていなかった附属病院も、今では県内の公的病院の中で最も古くなり、もう私たちの大学は新設大学ではないことが明らかです。これまでのさまざまな経験が蓄積し、伝統となりつつあることが実感されるのです。看護教育におきましてもこれまでの諸先生方のご努力により、格段の進歩がみられますが、今後の医療教育における私たちの貴重なフィールド形成とその発展のためには、今こそ全学職員および学生を含めた杉谷キャンパスの結束力が必要と感じます。私は本学卒業生として、この富山大学の杉谷キャンパスに感謝するとともに、学生教育にもその帰属心を反映させていきたいと考えています。



私の部屋は看護棟の4階ですが、医学部研究棟でいうと7階に相当します。
その窓からは卒業生が贈った桜の木を中心に、講義棟、研究棟、附属病院という私が過ごした建物が取り巻いているのを一望でき、走馬灯のような魅力を持つ景色です。学生時代に没頭した弓道部の顧問を引き継ぎさせていだこともあり、キャンパスの学生の声が自然に聞こえるまさに現在と過去が交錯する世界です。お暇な時間はないかもしれませんが、皆様ぜひ一度お寄りください。現代医療、そして看護における狭間を照らし、今後は何が必要かを再考できる医療人として「こころ」を養っていきたいと思います。
これまでの私の半生の医師人生に様々なサポートをしていただいた皆様へこの場を借りてお礼させていただくとともに、学生教育ならびに大学院教育に少しでもお役にたてることを願いながら、人間科学(1)講座の今後の新たな展開に向けて、努力する所存であります。
どうぞ皆様、今後もご指導のほどよろしくお願い申し上げます。

(2009年春 人間科学(1)教授室にて)


 教授就任祝賀会より


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