教授挨拶
富山大学学術研究部医学系 人間科学1講座
教授 金森昌彦
平成21年4月1日に富山大学大学院医学系人間科学講座を継承し11年が経ちました。本学の整形外科学医として25年勤務(内3年間は関連病院勤務)していた時は、特に骨軟部腫瘍外科学と脊椎外科学とを中心に担当して参りましたが、このいずれの領域もが、人間の痛みと心に強くかかわる分野でありました。確かに、痛みは「苦痛」という文字が表すように、人間の大きな「苦」の一つであり、あのシュバイツァー先生にして、「痛みは耐え難い暴君だ」と言わせたもので、時には生きる望みさえなくしてしまうほどであることを臨床の場からも強く感じさせます。少しでも苦痛が和らぐことを期待して、これまでの臨床的治療を行ってきました。このような経緯の中で、私は人間科学(1)講座を担当するにあたり、「痛み」と「ロコモ」をテーマにした「運動器人間科学」というフィールドを構築しようと考えるに至り、現在もその途上にあります。
私が本学に学生として入学をしたのはすでに40年以上も前になり、当時を思い起こすと現在の杉谷キャンパスの人材と建物、教育内容には隔世の感があります。入学当時にはまだ完成されていなかった附属病院も今では平成の大改修を経ており、新設大学ではないことが明らかです。これまでのさまざまな経験が蓄積し、伝統となりつつあることが実感されます。看護教育におきましても諸先生方のご努力により、格段の進歩がみられ、今こそ学生を含めた杉谷キャンパスの結束力が可能と感じます。
私の部屋は看護棟の4階ですが、医学部研究棟でいうと7階に相当します。その窓からは卒業生が贈った桜の木を中心に、講義棟、研究棟、附属病院という私が過ごした建物が取り巻いているのを一望でき、走馬燈のような魅力を持つ景色です。学生時代に没頭した弓道は現在その4代目部長(顧問)として引き継いでいます。キャンパスの学生の声が自然に聞こえるまさに現在と過去が交錯する環境にあります。お暇な時間はないかもしれませんが、皆様ぜひ一度お寄りください。現代医療、そして看護における狭間を照らし、今後は何が必要かを再考できる医療人として飛躍できるように、学生教育を行っていきたいと思います。
これまでの私の半生の医師人生に様々なサポートをしていただいた皆様へこの場を借りてお礼をさせていただくとともに、学部学生ならびに大学院生の教育に少しでもお役にたてることを願いながら、新たな展開に向けて、努力する所存であります。
どうぞ皆様、今後もご指導のほどよろしくお願い申し上げます。
略歴
専門分野: |
運動器人間科学 心身相関 癌と疼痛の科学 |
経 歴: |
富山大学医学部医学科卒業 富山大学大学院医学薬学研究部准教授(整形外科・運動器病学講座) 富山大学附属病院診療教授(整形外科)を経て現職 |
資 格: |
日本整形外科学会専門医(脊椎脊髄病認定医)、義肢装具判定医 |
役 職: |
日本脊椎脊髄病学会評議員、中部日本整形外科災害外科学会評議員、 日本オンコサーミア研究会会長、日本なつめ研究会(前)会長 |
学 会: |
国際整形外科災害外科学会、日本癌学会、日本心身健康科学会、 日本整形外科学会、日本脊椎脊髄病学会、中部日本整形外科災害外科学会 など |
担当講義
当講座では看護教育の中の医学領域を分担しています。
学部教育においては、身近な医学、形態機能学、疾病学、栄養生化学、成人・高齢者臨床医学、形態機能学演習、公衆衛生学、疫学・保健統計学、看護研究などを中心としたカリキュラムを分担しており、また大学院教育については病態生理学、心身健康科学、臨床生体機能看護科学特論および演習を担当しています。
いずれも自身の臨床医学経験を生かし、患者様の「からだ」と「こころ」のありかたを伝え、手を差しのべられる医療人としての素養を身につけていただくべく努力をしていきます。人間科学の視点から、優れた看護師育成に貢献したいと考えております。
(2020年春 人間科学(1)教授室にて)