NAD代謝による脂肪細胞分化制御に関する論文がFrontiers in Cell and Developmental BiologyにPublishされました

Okabe K, Nawaz A, Nishida Y, Yaku K, Usui I, Tobe K, Nakagawa T. NAD+ metabolism regulates preadipocyte differentiation by enhancing α-ketoglutarate-mediated histone H3K9 demethylation at the PPARγ promoter. Front Cell Dev Biol. 8(1): 586179. (2020)

前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化に際しては、CEBPβ、CEBPδやCEBPα、PPARγなどの転写因子によるカスケードが重要な役割を果たしていることが、多くの研究で明らかになっています。近年、これらの転写因子の発現は、ヒストンやDNAのメチル化、アセチル化といった翻訳後修飾により制御されていることが報告されています。本研究では、脂肪細胞の分化に伴いNADレベルが上昇し、結果NADを介した解糖系、TCAサイクルなどの代謝経路が活性化することが解りました。特にTCAサイクルの中間代謝物であるα-ケトグルタル酸の上昇は、ヒストンメチル化酵素によるPPARγプロモーター領域のヒストンH3K9me3の脱メチル化を介して、PPARγの遺伝子発現を上昇させ、脂肪細胞分化を促進していることを明らかにしました。また、α-ケトグルタル酸を高脂肪食誘導性肥満マウスに投与すると、脂肪細胞の正常な分化を促し、肥満の抑制、耐糖能の悪化を防止できることが解りました。今後は、α-ケトグルタル酸の他の臓器への影響や,ヒトでの臨床試験も視野に入れながら、研究進めていきたいと思います。


Front Cell Dev Biol誌サイト上の本論文へのリンク
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fcell.2020.586179/full

2020年11月27日