LC/MS/MSと誘導体化試薬を用いた、老化マウス脳におけるD-アミノ酸測定に関する論文がMetabolites誌にPublishされました

Yamamoto T, Yaku K, Nakagawa T. Simultaneous Measurement of Amino Acid Enantiomers in Aged Mouse Brain Samples by LC/MS/MS Combined with Derivatization Using Nα-(5-Fluoro-2,4-dinitrophenyl)-L-leucinamide (L-FDLA). Metabolites. 11(1): 57. (2021)

哺乳類の生体内ではL-アミノ酸が多数を占めますが、D-アミノ酸も一定量存在し、L-アミノ酸とは異なった生物学的機能をもつことが知られています。例えば、D-セリンはNMDA受容体のコアゴニストとして作用し、シナプス伝達やシナプス可塑性を制御していることが解っています。また、D-アスパラギン酸は下垂体や精巣などに存在し、内分泌系に作用していると考えられています。しかしながら、生物学的サンプル中のD-アミノ酸の存在量はL-アミノ酸に比べ少ないため、D-アミノ酸の定量は容易ではありませんでした。本件研究では、誘導体化試薬Nα-(5-Fluoro-2,4-dinitrophenyl)-L-leucinamide (L-FDLA)とタンデム型質量分析計(LC/MS/MS)を組み合わせて、L-アミノ酸とD-アミノ酸を同時かつ網羅的に定量できる分析法を開発しました。さらにこの方法を用いてマウスの脳におけるアミノ酸量と加齢の影響について検討しました。その結果、加齢に伴い海馬でD-セリンやD-アスパラギン酸が減少することなどを見出しました。今後はこの手法を他の臓器にも応用し、老化とD-アミノ酸の研究に繋げていきたいと思います。なお、当研究は研究医養成プログラムで参加していた医学科6年生の山本くんと夜久助教が行ってくれました。

Metabolites誌サイト上の本論文へのリンク
https://www.mdpi.com/2218-1989/11/1/57

2021年01月19日