NAD合成酵素Nmnat3と肥満、インスリン抵抗性に関する論文がAging CellにオンラインでPublishされました

Nmnat3はミトコンドリアに局在するNAD合成酵素と考えられてきましたが、Nmnat3のノックアウトマウスでは、特にミトコンドリアNADレベルには異常がなく、むしろミトコンドリアのない赤血球でのNAD代謝に重要な役割を果たしていることを我々は今まで明らかにしてきました (Hikosak et al. JBC 2014, Yamamoto et al. Plos One 2016)。しかしながら、Nmant3を培養細胞で過剰発現すると一部はミトコンドリアに局在することから (Hikosak et al. JBC 2014)、何らかの形でミトコンドリアNAD代謝に関与していることが示唆されていました。そこで、Nmnat3を全身に過剰発現するマウス(Nmnat3 Tgマウス)を用いて解析を行ったところ、Nmnat3 TgマウスではミトコンドリアNADレベルの著明な上昇が見られることが解りました。また、それに伴い老化や肥満により低下していたミトコンドリア代謝機能の回復が見られ、加齢や肥満に伴うインスリン抵抗性が改善されることを見出しました。興味深いことにこのマウスではNADだけでなくNADのアナログであるNGD (Nicotinamide guanine dinucleotide)も著明に上昇していることが解りました。NGDの生体内での機能についてはまだ良く解っていませんが、NAD同様、代謝や老化に関与しているのではないと考えており、今後さらに解析して行く予定にしています。

PubMedリンク
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29901258

2018年06月15日